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2004年09月01日
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テーマ: 中国&台湾(3345)
カテゴリ: カテゴリ未分類
 それは圧倒的な迫力で、僕に迫った。早起きをしてここまで苦労した甲斐があった。そして、ラサ最後の日を飾るイベントとしてはこれ以上のものはないだろうなと思った。今日は年に一度の「大タンカ祭」である。

 5時半に目覚しが鳴った。最近に無く早起きである。昨日も2時に寝ていて寝不足なのにも関わらず、すっきりと目が覚める。6時半に国境に向けて出発する「譲二」たちとネパールでの再会を誓い、ぼくは「ライダー夫妻」と「お祭り兄ちゃん」と一緒にタクシーをシェアし、まだ真っ暗闇のラサの街をデプン寺目指して疾走した。

 山の麓でタクシーを降ろされて、その後はきつい坂道を1時間ほどかけて登るはめになる。山の麓には公安が何人かいて、それでタクシーの運ちゃんは、今日は山の上の道までは通行止めだと早合点したらしいが、実は特に通行止めだった訳ではなかったようで、何台ものタクシーや団体バスに抜かれてしまって、ちょっと悔しい思いをした。けれども、苦労して山を登ってやっとデプン寺に着いた時には、結構な達成感があった。

 入り口のところで「胡椒マニア」と会った。彼らの団体も、麓で降ろされてしまって、ここまで歩いてきたのだそうだ。軽く挨拶を交わして、僕らはタンカを見るのに良い場所を探すために、更に寺の中に入っていく。タンカというのは真ん中にお釈迦様が書かれている絵のことをいうらしい。そしてそのタンカの巨大なものが、年に一回だけ一般に公開されるのだそうだ。タンカの場所に着くとなるほどでかい。まだ絵は出てはいないが、あそこにタンカが飾られるのだろうという感じで巨大なやぐらが山の斜面を利用して作られている。幅15メートル、高さ30メートルはあるんじゃあないだろうか。それほどのスケールのタンカをこれから見る事が出来るのだ。そう考えるだけで心臓が震える。

 ようやく街が白んできた。雲に隠れて朝日は見えなかったが、けれどもだんだんと一日が始まる風景を、高いところから見下ろすのはなかなか雰囲気の良いものだ。人の数もかなり増えてきた。みんなで適当な場所をキープして本番を待った。

 7時を少し周った頃であろうか、あたりが少し騒がしくなった。袈裟をきた大勢のお坊さんたちが遠くから行進してくる。そしてやぐらの下と上の二手に別れて、丸まっているタンカを上に居る組が引っ張り上げた。同時に中腹に備えていた別の一団が巨大な金属でできたラッパを吹き出す。大きいものだから当然音は恐ろしく低く、遠くにいても腹に響く。そしてタンカが徐々に全貌を現す。黄色が主体の絵で周りの茶色い地膚にくっきりと浮かび上がる。そしてその巨大さに圧倒される。

 しばらく無言で見詰めていた。「ライダー夫妻」も「お祭り兄ちゃん」もそれは同じらしく、しばらくの沈黙が流れる。それから、今度はタンカの近くに行ってみたり、周りを一周してみたりと、いろいろと活動する。「胡椒マニア」の一団とも何度も合って、お互いに感動を語り合った。僕はチベット人みんながそうするように、白い布を一枚買って、タンカの上段から下に向かって投げ込んだ。

 その後も、今日はお経を読んでいるお坊さんを見つけては御布施をしていた。それには訳がある。今日は4年前に17歳でこの世を去った愛犬パピーの命日なのだ。たかが犬といっても17年も一緒にいれば下手な親戚よりも愛着があるのはどうしようもない事実だ。しかもヨークシャー・テリアという室内犬でいつも苦楽を供にしてきた中なのでなおさらだ。僕が東京に行く時に一番悩んだのが犬と別れねばならないということだった。本当に真剣に悩んだ。

 そして、僕が就職して一年目に彼女は天寿をまっとうした。僕は仕事が忙しい中を強引に有給をとって北海道へと駆けつけた。家族には仕事が忙しくてどうしても帰れないと言っておいたので、その日の最終便で駆けつけた僕の姿を見て一同みんな驚いた。けれども予感していたのか「なんとなく来ると思っていたよ」と僕を迎えてくれた。そして次の日に彼女を火葬場に連れていって、それから僕はあわただしく帰京した。今でも、忙しい中快く休みをくれた当時の上司には感謝している。そしてこの旅に僕は唯一のお守りとして、彼女を焼いた時に一緒に入れておいた5円玉を持参している。



 だから、直接関係無いが、今日はなんとなく御布施をしたい気分だったのだ。お祭りだったのでそういう手合いが大量にいて、結構なお金を使ってしまったが、そんなわけなので、少しも苦にはならなかった。

 夜は、部屋ががらんとしてしまっていた。「リカちゃん」と「譲二」のにぎやかな二人が抜けるだけで、こんなにも雰囲気が変わるものだ。けれどもお陰で「胡椒マニア」と落ち着いていろいろな話が出来た。彼と僕の歳が近いということと、お互いがお互いの考え方に共感できることが多くて、だから話をしていてとても心地よかった。お陰でまた1時半過ぎまで話し込んでしまった。

 バナクショー・ホテルでの日々は僕にとって新しい体験だった。別に避けていた訳でもないが、いわゆる「日本人の溜まり場」に足を踏み入れたのは初めてだった。それはそれでなかなか心地の良いもので、沢山の友人を作ることも出来た。用は、使い分けなのだと思う。これからこのような宿ばかりを泊まり歩く気は無いが、たまにはこういう宿で、「合宿所」状態を過ごすことも悪くないなと考えた。  





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最終更新日  2012年04月14日 23時37分23秒
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