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2004年09月02日
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テーマ: 中国&台湾(3345)
カテゴリ: カテゴリ未分類
 旅は順調にスタートしたかに見えた。珍しく旅行会社の連中もきちんと約束通り7時半にはホテルに着ていたし、昨日あんなに激しかった雷雨もすっかり止んでいる。当初の予定通り、8時ぴったりにホテルを出発して、みんなでポタラに別れを告げた。僕らがチャーターしたトヨタのランドクルーザーは、ここまで来る時に利用した北京ジープとは雲泥の差で、奇麗に舗装された道を時速80キロで快調に走る。音も静かだし、揺れも少ない。景色は飛ぶように後ろに流れ去った。

 ヤムドク湖に向かうために快適な舗装道路を離れ、4700メートルの峠に向かう。久々の峠に少しワクワクする。今回は頂上に置いてくるためにタルチョという赤や黄色の旗の様なものを買ってきている。チベット人にとって峠の上というのは神聖なところで、このタルチョと言うものを頂上に縛って来るのだ。そしてそこにはお経が書いてあって、風がそのお経を読んでくれるということだ。今回は僕は峠を一つ越えるたびにそのタルチョをその頂上に置いてこようと計画しているのだ。

 ところが、その峠道に入ったところで僕らには不運が待っていた。なんとラジエーターを冷やすためのファンベルトが切れてしまったのだ。このファンベルトが切れてしまうとエンジンがオーバーヒートしてしまい、全く先に進めなくなる。でも車に詳しい「ライダー夫」によるとこれは中国では日常茶飯事の事で、当然のように予備のベルトを準備しているから大丈夫だとのことだった。確かに、彼らはきちんと予備を準備していて、早速何事もなかったようにファンベルトを交換しはじめた。ところが、ところがである。信じられない事が起こった。なんとそのファンベルトは大きすぎてその車にはフィットしない。強引にエンジンをかけてみたが、当然全く役に立たなかった。

 次に運転手が考え付いた事は、シートベルトだった。シートベルトを切って、適当な長さに切り針金で留める。ところが、これもうまく行かない。そこで、大きすぎるファンベルトを途中から切ってそれをボルトで留めるという強硬策にでた。ここに行き着くまでに既にもう3時間はかかっている。その間に何台ものランクルに抜かれていて、その度にもし予備があったら分けてくれないかと頼んでいるのだが、みんなも自分が可愛いのか知らないが、どうしても分けてもらう事はできなかった。さて、ボルトで留めたファンベルトだが、これはたった200メートル程の命だった。そこでボルトはあきらめて同じファンベルトを今度は針金で留めてみる。これはなかなかヒットだったが、それでも2キロの命で、峠の頂上を目の前にして短い人生を終えてしまった。僕らが彼らに助言する。うまく行かなかったシートベルトだが、少し改良を加えるとうまく行くのではないかと思ったのだ。果たしてそれは当たりだった。なんとかそのシートベルトは今日行き着いたギャンツェの街まではもってくれた。

さて、峠を越えると真っ青なヤムドク湖が目に飛び込んできた。空の青さを反射して絵のような水色が広がる。茶色の山とのコントラストが見事だ。遠くには頂上に雪を頂いた高い山々がそびえているのが見える。あれはもうヒマラヤ山脈の一部に間違いない。峠を下りてからもそのヤムドク湖畔に沿うように車は進んだ。

 今回の運転手はとても陽気だ。こんなに大きなトラブルにもめげず、鼻歌を歌ったり口笛を吹いたり僕らに冗談を飛ばしたりしている。今回のツアーのメンツも明るい人ばかりだったので、こんなトラブルでもみんな暗くならずに何とか一日持たす事が出来た。なかでも「おとぼけくん」のかます一言一言がなかなかみんなを笑わせてくれた。こんなメンツに恵まれて、良かったと思った。

 ヤムドク湖を過ぎて更に1時間ほどしてから小さな街に到着し、僕らはようやくそこでとても遅い昼食にありつく事が出来た。時間は既に4時半を回っていた。あまりうまいとは言えないカレーの出来損ないを食べたあと、ツアーガイドのティレイと今後のスケジュールについて話をする事にした。今日は予定していたシガツェまで辿り着けそうに無い。今回のトラブルは明らかに向うのミスで、契約したツアー内容をきちんと実行してもらうにはどうしても一日ツアーを延長してもらうしかないのだ。その事をガイドに伝えると、最初困っていたが、かれも僕らが言う事になっとくして、とりあえずシガツェに着きしだい旅行会社に電話して相談してみるということに合意してくれた。それから今日はギャンツェに宿泊して、明日の午前中をギャンツェの観光に使う事にも合意してくれた。

 昼飯を食ったその小さな街でも適当なサイズのファンベルトを探す事は出来なかった。どれも「帯に短し襷に長し」という状態でしっくり来ないのだ。しょうがないからシートベルトで頑張ることにする。車窓では相変わらずチベットっぽい景色が広がっている。鳴きウサギの巣穴も見るし、黄色や紫の高山植物も咲き乱れている。チンコウ麦の畑も広がっていて、景色の中の色が多い。けれども今日の景色の中で圧巻だったのは氷河だ。道の少し上の手の届きそうなところまで氷河が広がっていて、圧倒的な迫力で僕に迫ってくる。初めて氷河と言うものを見たが、また自然の大きさを実感してしまった。

 もう一つの峠を抜けて、並木道を進み、8時半にようやくギャンツェの街に到着した。ガイド推薦の宿をチェックしたがそれは値段の割にあまりにも汚かったのでパスして、運転手推薦の宿に泊る事にした。何か腹に入れねばとそうめんのようなおいしい麺を何とか腹に入れて、明日に備える事にした。今はただただこの街で正しいサイズのファンベルトが手に入るのを祈るばかりである。





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最終更新日  2004年09月05日 19時20分50秒
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