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2004年09月05日
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テーマ: 中国&台湾(3345)
カテゴリ: カテゴリ未分類
 暗闇の中突然明かりが灯った。時計を見ると6時だった。広大な中国はすべて北京時間で動いている。すぐ南に下ったところにあるネパールは日本と3時間15分の時差があるのにも関わらず、ここチベットは日本と1時間の差しかない。だからようやく空が白みはじめるのは7時半を周ってからだ。暗闇の中で熟睡していた僕は、「ライダー夫」の6時ですよという一声で我にかえった。

 最悪の天候だった。強い雨が地面を叩き付けるように降っている。空には低く厚い雲が見渡す限りの世界を覆っていた。こんなんで本当に夢のエベレストが見れるのか心配になる。実をいうと僕は自称「晴れ男]だ。楽しみにしていた行事が雨で中止になった経験がほとんど無い。それは「ライダー妻」も同じで、だからダブルパワーで今日は絶対晴れだねと二人でふざけていた。どこかに最悪の雨男がいるに違いない。

 もっと最悪だったのは眠い目を擦りながらも、準備万端で約束の6時半を待ってもガイドはやっぱり来なかったことだ。昨日あれほど釘をさしておいたのに、ほとんど暖簾に腕押し状態だったらしい。1時間程待って、ほとんど切れ掛かっていた「ライダー妻」と僕は、雨の中ガイドと運転手を探しにあたりを右往左往した。叫びまくってようやく運転手を発見。彼にガイドの居る場所を教えてもらい、車はようやく7時半に宿を出発した。雨は幸い小降りになっており、これはやっぱり「晴れ男」「晴れ女」の本領発揮とちょっと盛り上がっていた。

 ぬかるみだった。メインの道を折れていよいよエベレストに向かう道に向かったとたんに道はぬかるんでいた。そして予想通り車はそこにはまって出れなくなってしまった。最初はすぐにそこから抜けれると考えていて、だからみんなでのんきに車の中で談笑していた。けれどもだんだんと運転手の顔つきも変わり、僕らもそれどころでは無くなってきていた。小雨の中みんなで車から降りて、石を運んだり、草を引っこ抜いたりしてなんとか車が脱出できるように頑張った。車は何メートルかは進んだが、すぐに次のぬかるみにはまってしまい、状況はどんどんと悪くなった。

 後ろから同じツアー会社のランクルが迫ってきた。実は僕らのランクルは故障していて4WDではなく2WDだった。けれどもその後ろからやってきたものは4WDで、だから、こんなぬかるみの中でも抜けて行ける可能性が大きかった。けれども様子を見に来たガイドは僕らのその説明にも耳を貸さず、自分たちもはまったら大変とさっさと逃げていった。そんな姿勢に少し腹がたった。

 それからしばらくして、今度はチベット人が数人通りかかった。そして当然のように手伝ってくれた。ところがどっこい、人数が増えてもやっぱり車はびくともしない。そうこうしている内に、もう11時を回っている。はまってから既に3時間以上立っている。いくら高地になれたとは言え、それでも激しい運動をするとすぐに息が切れてしまう僕らの疲労はもう極限に達している。更にあたりの気温は低く、体温はどんどんと奪われていった。

 最終的に車をジャッキアップして、タイヤの下に石や草を敷き詰めて車はようやく脱出できた。チベット人も、僕らももう泥だらけになっていた。それは車がはまってから4時間後のことだった。それから僕らはそのまま今朝いたニュー・ティンリに戻って事後策を練る事にした。

 運転手は今日はもう無理だと言う。ガイドも難しいのではないかと言う。絶望的だ。なにしろわざわざ高いお金を払ってこのツアーを組んだのはエベレストを見るためだと言っても過言ではない。それをガイドに切々と訴えた。そしてツアーを更にもう一日延長する事を申し出た。最初の契約で追加料金無しでツアーを延長できることになっている。ところが、僕らがいるのは外国人未開放都市で、旅行会社がとった許可証では9月6日までに国境を抜けなければならない事になっており、延長は不可能だという。そんな話は聞いていない。とは言っても、ガイドとしてもなんともしようがないらしい。

 そんながっかりしている僕らに追い討ちをかけるような出来事があった。僕らは昨日食べたチベット料理のレストランの向かいにある漢民族経営の中華料理のレストランで作戦会議を練っていた。冷えた体を温めるためにお茶を飲みながら話をしていた。飯を食うかと言われて、厨房でチェックをするととても高い上にろくな材料がそろっていない。だから飯はいらないといった。そうすると、お茶の料金をよこせという。まあそれはしょうがないだろう。けれどもその料金に腹がたった。とんでもない料金を請求してくる。一緒に飲んでいた運転手に助けを求めても、自分はもう払ったなどと嘘を付く始末だ。この地域の漢民族は油断ならない。チベット人のガイドに交渉をお願いしても、暖簾に腕おしだった。だから僕らは大きなポットを持ってきて、その店のお湯を大量に使ってやった。



 今度は先ほど埋まったところも難なく切りぬける事が出来る。そして問題の峠に差し掛かる。順調にいくつかの難所をクリアしていった。時には僕らが車から降りて押さざるを得なかったがそれでもなんとか登っていった。けれども僕らにはまた難所が待っていた。つづらおりのカーブの所を車はどうしても登っていけない。トラックに乗っていた多くの人の力によって、トラックは何とか通り抜けれたのだが、僕らの車はどうしてもそこをクリアできない。トラックを仕切っているチベット人は僕らの運転手にやる気が無いとサジを投げてしまった。そして先に行ってしまった。高地でどうしても動きが鈍くなってしまう僕らだけの力だけではどうしようもなかった。ここらへんが潮時だ。時間はすでに5時が近かった。

引き換えそうとした矢先に、峠の下の方ではとても奇麗な虹が僕らの前に弧を描いていた。それは女神が僕らを嘲笑っているようにも見えた。





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最終更新日  2012年04月15日 00時50分22秒
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