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2004年09月06日
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テーマ: 中国&台湾(3345)
カテゴリ: カテゴリ未分類
 一面の銀世界だった。真っ白な平原の中を一筋の黒い道がどこまでも続いている。僕らはネパールへ向かう最後の峠の頂上にいた。標高5100メートル。空気がとても薄い。予定通り10時に出発した僕らは、霧雨の中にいた。もし晴れていたとしたら、昨日宿泊したティンリの街からもエベレストの姿が見えたらしい。女神は最後まで僕らに意地悪をした。そして山を登ってきた頃、天候は回復した。きっとこの銀世界はこの二日間の風雨が作り上げたものだろう。雪の数センチ下には茶色い大地が姿を覗かせていた。

 ここから下りが始まった。とにかくいつまでたっても下り道だ。雪はいつしか消えてなくなり、緑が濃くなりはじめる。そして僕らはニャラムの街についた。そこで少し遅めの昼食をとり、僕らはラサの旅行会社と電話で交渉を始める。というのはガイドはいろいろと良くやってくれはしたが、エベレストにいけなかった事は動かしようの無い事実だ。それも旅行会社の不手際でいけなかった要素が強い。と言うのは、そもそも車が2WDだったことで峠を登れなかった可能性が高い。これは出発前に車に詳しい「ライダー夫」が車をチェックした時に旅行会社に本当に大丈夫かどうかを確認している。それに僕らにしてみればツアーを一日延長出来た筈なのに、旅行会社のとった許可証の期間の都合でそれがかなわなかった。そこで、実は昨日みんなで話し合って、ツアー代金の25%を返却してもらう交渉をしようということで合意していたのだ。

 最初向うはいろいろとごねていた。けれどもこちらがきちんと事情を整理して、論理的に話を進めて行ったので、向うに反論の余地は無い。こちらは決して感情的にならず、冷静に話を運んでいき、最終的には向こうにOKと言わせる事に成功した。電話で、外国語でハードな交渉をするのはなかなか大変だったが、成功した事で達成感があった。

 けれどもそんな喜びもつかの間で、ツアーは最後に最大の困難に直面することになった。ニャラムの街からそれ程の距離を走っていないうちに、僕らは数時間前に起きた出来立ての崖崩れに遭遇してしまったのだ。あたりは断崖絶壁のとても危険な道で、崖崩れの現場ではいまも大き目の石が上から間断無く落ちてきているところだった。これでは車は絶対に向こうに渡れない。しばらくそんな様子を眺めていると、その崖崩れが続いているなか何人かのチベット人が強行突破を始めた。見ているこっちはとてもはらはらする。決して自分ではやりたくない。

 ところが、30分後にはそのハラハラを自分でやるはめになってしまった。ポーターを雇って荷物を持ってもらい、自分は身軽になって二つある崖崩れを歩いて越える。左からは大き目の石が落ち続けており、右側はもう谷底だ。けれども不思議と恐いという思いは無く、とても冷静にその場をすり抜ける事が出来た。というのは「ライダー妻」が腰が抜けそうな程怖がっており、僕らも怖がろうものなら彼女は一歩も先に進めないような状況だったので、僕らが怖がっている暇など全くなかったのだ。

 その先にはトラックが待っていて、ガイド君の交渉のお陰でなんとか国境まで載せていってもらえる事になった。相変わらずの綱渡りのような危険な峠道をトラックはゆっくりと坂を下っていく。トラックの荷台には僕らの他に欧米人の団体客も乗っており、彼らもあの崖崩れを越えてきた仲間だ。1時間以上横揺れの激しい荷台に揺られて、僕らは6時過ぎにようやく国境に到着した。国境は6時半にしなってしまうので、まさにぎりぎりだ。けれども国境の係員はとても親切で、慌てている僕らに対して、そんなに急がなくてよいからゆっくり来なさいと言ってくれた。

 2ヶ月ぶりに国境を越えた。けれども中国側の出国窓口から、ネパール側の入国窓口まではなんと10キロもの距離がある。相変わらず急な坂道で、ネパールはまだまだ下の方にあるのだ。乗合トラックを拾って更に40分ほどでネパール側の国境についた。日本円で120円くらいだった。入国窓口で同時にビザの申請もして、僕らはようやくネパールに入国した。人々はとても親切で、入国審査もとてもスムーズにいった。中国側の国境の街、ダムは遥か頭上だった。

 ここからはタクシーを使う事にした。中国とネパールの間には2時間15分の時差がある。だから時間はまだ6時前に逆転していた。ネパールの首都、カトマンドゥまではここから4時間の距離らしい。バスで行けばとても安く上がるのは分かっていたが、僕らは日本円で一人1200円ほど奮発して、タクシーで行く事を選択した。道は相変わらず下っている。どこまで下れば気が済むのかと言いたくなるほど、下っている。今日一日で一体何メートル下ったのだろう。空気はどんどんと濃くなっていき、また、湿っていった。

 人はチベットのことを「天空の大地」と言う。まさにその通りだと実感できた一日であった。チベットはここから見える山の頂上よりも、更に上に広がる大地なのだ。香港を出てから中国の南部に1ヶ月、チベットに1ヶ月。辛い事もあったが楽しい事の方が多かった。今僕は、久々の新しい世界、ネパールに対してとても興奮している。





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最終更新日  2012年04月06日 10時47分41秒
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