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2004年09月18日
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テーマ: ネパール!(44)
 カトマンドゥのタメル地区を歩いていると、もう沢山の人から、それも日本語で声をかけられる。たいてい「トモダチ」から始まって「ミルダケネ」と自分の店の商品を売ろうとする。買う気が無いと分かると今度は「リョウガエ」と闇両替を勧めてくる。パターンだ。そして薄暗くなった頃から今度は街をフラフラと歩いている男達から「ガンジャ」と小声で声がかかりはじめるのだ。そう「ガンジャ」とは「大麻」のことらしい。

 けれども、何故か僕には声がかからなかった。「ライダー夫」は茶パツに長髪といういかにもな感じだったので、100メーター歩けば5人くらいから声をかけられる程だったのに、僕にはやる気のない親父が一人「惰性で声をかけてみました」という程度の声のかけ方で「ガンジャ」と話し掛けてきただけだった。実は僕は今までの旅の過程で、「ガンジャ」が溢れている場所を何度も通り抜けてきたらしい。中国の大理などはその典型で、溜まり場的な宿には「ダイリーズ」なる長期滞留組みがいて、そこでは毎日のように「ガンジャ・パーティー」が開かれているらしい。そんな大理の街でも、僕はついに声をかけられることはなかった。いったいどうしてなのだろう?

 僕も「大麻」は「たばこ」なんかよりよっぽど健康には良い事くらい知っている。それに「大麻」は「麻薬」ではなくてあくまでも「大麻」なのだ。「麻薬」とは「LSD」や「ハシッシ」などを指すものである。だからという訳ではないが、なんとなく一度くらいは経験しておくのも悪くはないななんて漠然と考えていた。けれども、全く声もかからず、周りに「ガンジャ」狂いの友人もいず、だからそんな機会も逸していた。

 今日はまた自転車でいろいろと街を回ってみる。今日はホテルから見える街の西外れにある寺を訪れることにした。本来の名前は忘れてしまったが、別名「モンキーテンプル」と言われていて、猿が沢山居ることからこんな仇名がついたらしい。高台にあるので、途中で自転車を押して、ようやく入り口に到着する。自転車を手近なところに止めようとすると、いきなり「50ルピー」と言われる。そんな金は払う気はない。その場を離れて他のちょっと離れた場所に止めることにする。金額は20ルピーまで下がったが、僕には関係の無いことだった。

 ネパールでなくても観光地ではどこでもそうなのだが、こういう所には僕らを札束としか思っていない輩が、いつも徘徊している。今の自転車男もそうだが、本当に親切そうに付いてきて、いろいろと寺のことを説明をして最後にガイド料を請求するという姑息な手段にでる奴等も沢山居る。こっちとしては、「親切なネパール人」に会えてラッキーだとかなんとか思っている時に、いきなりそんなことをされるものだから、思わず人間不信に陥ってしまう。僕はそんな話を良く聞いていたので、人が付きまとってきても「もし君がガイドだとしたら、一緒に来ないでくれ。そうじゃなければ構わないけど」と最初に言ってしまう。そうすると後味の悪い思いをしなくても済む。

 今日もそんな男達を振り切って、寺へと続く膨大な階段を上る。すると一人の怪しい男が僕に付きまとってきた。なんだろうといぶかしげに思っていると、彼はどうやら「売人」なのだ。「へー僕もついに真剣に声をかけられたか」と妙なところで喜んで、彼と他愛もない話をした。話をしているとどうも彼の様子が普通でないことが分かる。おんなじことを何度も聞いてみたり、声の調子もおかしい。これは信用できない。だから彼の申し出はさっさと断る。彼も途中まではしつこく付いてきたが、やがて僕といても商売にならないことを察したらしく、彼はあきらめて帰っていった。

 寺の頂上からの眺めはすばらしかった。カトマンドゥの茶色い街全体が見渡せる。あまり高い建物の無い街なので、なんだかのっぺりとしている。猿は1匹しかいなかったが、代わりに犬が沢山いた。これなら「ドック・テンプル」と改名した方がよさそうだ。小坊主がいたので、デジタルカメラを見せてあげると喜んで早速自分も取ってくれとせがまれた。盗み撮りのように人物を取りたくない僕としては、このデジタルカメラパワーに助けられることが多い。チベットの山奥でも、他の観光客が写真を撮ろうとするとお金を取っていた子供たちも、僕のカメラを見た瞬間、向こうから写真を撮ってくれと僕を付け回す始末だった。ここでもすぐに絵を見れるのを気に入ってくれて、彼らの写真を数枚とった。

 帰り道に、一度ちょっとだけ話したことのある日本人に会った。寺の入り口の近くだったので、「これから寺ですか?」と聞くと彼からは意外な答えが帰ってきた。「いやあ今ガンジャを探しているんですよ。」彼のその言葉と表情を見て、僕はちょっとだけ背筋が凍った。彼の様子を見ていて、ひょっとしてこの世界というは「興味本位」だけで入っていってはいけない世界なのではないかと思った。1回だけというところから始まって、止められなくなり、そして旅の目的は「ガンジャ」探しに終始してしまう。それは、大袈裟なことではなく、実際そうなってしまう旅人が多いのではないだろうか。僕にはまだ1回だけで絶対に止められるという自信は無い。だったら、今、興味本位だけでそれを始めてしまって、取り返しの着かないことになりかねない。そう思った。

 そんなことをいいつつ、隣で誰かが「ガンジャ」を吸っていたら、「じゃあ一口だけ」と試してみることがあるかもしれない。けれども自分から売人に近づき、進んで試すのだけは止めようと思った。






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最終更新日  2012年04月15日 18時52分14秒
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