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2004年10月18日
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テーマ: タイ(3480)
カテゴリ: タイ・入院編
 夏の日差しになった。太陽の強い光線が肌に突き刺さる。タイもそろそろ雨季が終わりを告げ乾季へと移行する季節だ。そんななか僕はまたバスに乗る。市内を走るローカルバスではなくて西を目指す長距離バスだ。昨日医者から「バンコクを出てもいいけど、タイを出ないように」という言われて、早速小旅行に出てきた。目的は西の国境。ミャンマーとの境目だ。噂では外国人はミャンマーに陸路で入るのがなかなか難しいのそうだけれど、とりあえず国境を目指す。国境線に手を触れるだけで良い。

 何度も言うが僕は今回陸路での旅行にこだわっている。世界一周の旅を陸路(または海路)で一本の線で結びたいと思っている。けれども国という大きな力がそれを認めないことが多い。特に政策の違う国がと隣り合っている場合は、そういうケースがとても多い。そして、ミャンマーと言う国はやはり陸路での国境を開放していない国の一つなのだ。そこで考えた僕の作戦はこうだ。まずタイ側から行けるところまで行く。そして飛行機でミャンマーに入り、今度はそこからタイを目指す。そしてタイ側で行ったところまで引き返し同じ国境線をミャンマー側からながめる。そうすると時差はあるが僕の旅行地図は一本の線で結ばれる。すこしずるいが、これは僕にはどうしようもない国と国との決め事なので、こうするしか方法がないのだ。だからまずはタイ側から国境を目指すことにした。

 タイには行き先別に沢山のバスターミナルがあり複雑だ。国境に向かうにはまずカンチャナブリーというところにいってそこから更に先に行くバスに乗り換える。そしてカンチャナブリー行きは南バスターミナルからでるのだそうだ。南バスターミナルまでローカルバスでとも思ったのだが、バス路線が複雑な上、さっさとカンチャナブリーを目指したいというはやる気持ちを押えられなくて、結局タクシーに乗ることにした。結構距離があり、100バーツもかかってしまった。

 南バスターミナルは活気に溢れている。シーロムあたりだと外国人がとても目立つのだが、ここでは沢山見かけない。東京で言えば僕が昔、大学時代に住んでいた国分寺を思い出させられる。雑然とした中にもなんとなく秩序があって、ごみごみしているようでも人の流れが出来上がっているのだ。英語の看板が見当たらなくなった。これではどこで切符を買ってよいかも、どのバスに乗ってよいかもさっぱり解らない。どう頑張っても短期間であのくねくねした時を覚えることは難しい。

 しょうがないので、中国で学んだ「聞き込み作戦」を実行する。手当たり次第いろいろな人に「カンチャナブリー」とわめく。そうすると切符売場はあっちだと指差してくれる。そして3度目に聞いた人に目の前のブースを指差される。10分後の出発で、料金は52バーツだった。もちろん冷房車。さて、次はどのバスに乗るかなのだが、これは人に聞かなくても大丈夫だった。そのブースで切符を買う人はみなこの同じ時間のカンチャナブリー行きに乗るのが分かったので、とにかくその人たちに注目していればどのバスに乗れば良いか分かるのだ。うまい具合にお坊さんの集団がいて、彼らはとても目立つので簡単にバスが確認できた。

 これからの長旅に備えて、とりあえず水だけは調達しておく。6バーツだった。バスの中はガンガンに冷房が効いていてとても快適だ。韓国以来こんな立派なバスに乗ったのは初めてじゃないだろうか。バスは音も無く定刻きっかりにターミナルを離れた。すぐにバスガイドさんが冷えたミネラルウォーターを配りはじめた。なんだ、わざわざ買う必要もなかったんだ。サービスいいね。

 郊外に出ると突然沢山の緑が目に飛び込んでくる。畑が視界一面に広がる。あの背の高い作物は何だろう。深い緑色の硬質の葉をまとっている。空も青い。そして夏の日差しだ。僕は明らかに興奮している。久々の未知の世界への旅に興奮している。例によって手がかりは何も無い。国境を目指すと言う以外これといった情報はない。そんな旅が好きだ。

 今回僕は荷物のほとんどをホテルに置いてきた。どれくらいでバンコクに帰るかは決めていなかったが、長くても病院の関係で5日以内だろう。国境までどれくらい時間がかかるのか分からないが、5日あれば十分だろうと思った。それで、小さなデイバックにバスタオル、パンツ一枚、Tシャツ一枚、洗面用具、薬一式、それにデジタルカメラだけを詰め込んで旅に出てきた。よけいなものは一切持たない。究極の軽量化に挑戦してみたのだ。身軽さがフットワークを軽くするのだと、とても実感した。

 いくつかの雑然とした街を走り抜けてバスは意外に早く2時過ぎにカンチャナブリーに到着した。バスがターミナルに入る直前に「観光案内所」が在るのを見つけておいたので、そこに直行することにした。同じバスに乗っていた唯一の外国人の西洋人カップルは、バスを降りた瞬間に執拗に客引きに話し掛けられていたが、僕は何故か無視されていた。色が黒いからだろうか。荷物が少ないからだろうか。話し掛けられるとうるさいと感じるくせに、無視されるとそれはそれで、とても寂しい。



 ところがバスの時刻をみていると、2時半にサンクラブリー行きがあると言うのを発見してしまった。所用時間は3時間だそうだ。これなら充分今日中にサンクラブリーまでいけそうだ。今日はここに泊るという予定を変更して、今日はこのサンクラブリーまでいってみよう。そう思いセブンイレブンで遅い昼食を調達してからバスターミナルに戻った。途中観光客相手のトゥクトゥクに話し掛けられて、ちょっとうれしかったがバスターミナルに行くんだというとすぐに別のカモを探しにどこかに行ってしまった。

 バスの時間は2時半ではなくて3時半だった。少し迷うが、一時間くらいならそんなに大きな差ではないと思い、切符を購入し冷房の聞いた待合室でボーっとしながら待つ。料金は120バーツだった。時間潰しに本くらい持ってくればよかったと思ったが、それも後の祭り。けれどもいろいろと物思いに更けていると一時間はあっという間に過ぎ、また快適なバスの旅は続く。窓の外の景色の緑の部分がどんどん増えていく。タイのもう一つの一面を見た気分だ。6時を過ぎると世界はオレンジ色にそまり、そして急速に暗闇が世界を支配した。街灯もなく対向車もまばらな山道をバスは疾走し、僕の席は後ろの方だったものだからヘッドライトの明かりもここまでは届かず、窓の外は墨を塗ったような暗闇だ。エンジンの音だけがやけに大きく耳に響いた。

 7時を少し周った頃バスは小さな街に着く。そこがサンクラブリーだった。もともと空いていたバスだが、途中何人も降りてしまっており、ここまで乗っていたのは僕を含めて4~5人くらいしかいなかった。街灯も点いていない暗闇の道端にバスが停車する。そこがバスターミナルなのだ。前方には市場のようなものが見えたが、時間が遅いからなのか人影は見えなかった。バスターミナルは、客待ちのバイクが2台とまっていたのだが、他の乗客達が先に捕まえてしまい、僕は一人残され途方に暮れる。人もいないこんな暗闇の道端で放り出されて、いったいどうしろというのだ。

 仕方が無いのでとぼとぼと当ても無く市場の方に歩いていってみる。その先がT字路になっており、その道まで行くとなにか手がかりがあるのではないかと思ったのだ。実はホテルは目星を付けておいた。というのはカンチャナブリーの観光案内所でもらったホテルの小冊子はこのサンクラブリーの分もカバーしており、そのなかからなんとなくビルマ・インというところがいいのではないかと思っていたのだ。だからそこを目指してみて、気に入らなければまた他を探そうと思っていた。とはいっても、地図を持っていない身としては住所だけ分かったってしょうがない。T字路のところで一人突っ立ってみるが、特に進展はなかった。

 と、その時向こうからバイクが来た。といってもそのバイクはいわゆる「営業用」のバイクではなくて、地元の人のバイクだ。「営業用」の場合は必ずゼッケンを身にまとっているはずだ。少なくともバンコクではそうだったし、さっき客待ちをしていた2台のバイクの運転手もゼッケンをしていた。ところが、彼はゼッケンをしていない。けれども僕がビルマ・インに行きたいんだよねというと後ろに乗れという。料金は10バーツなのだそうだ。つまり彼の小遣い稼ぎ。ヘルメットをせずに荷台をまたぐ。夜の冷えた風は、肌に心地よい。

 意外に長い距離をバイクは走った。そして連れて行かれたのはビルマ・インではなくて、Pゲストハウスというところだった。フロントの前にすぐレストランがあり、その先には川がある。濃い茶色の木でできた建物で、なんだか良い感じ。その他に川沿いにコテージというか小屋がたくさんあり、そこにも部屋がある。一人だというと60バーツの小屋に案内された。ドアを開けるとここはロッカーじゃないかと思うほど狭く、そこにマットが一つおかれているだけだった。窓も無ければ扇風機も無い。フロントのエリアの立派さとのギャップがとんでもなく激しい。普段の僕ならそこでも泊ってしまうのかもしれないが、体の調子にそれほどまだ自信が持てない僕は、ここは遠慮しておくことにする。ホテルの人に残念だけど他を探すよといって、さっきのバイクのあんちゃんを探すが、彼は既に姿を消していた。さっき「ちょっと部屋を見てくるけど、ちょっとまってて」と言ったのに通じなかったようだ。これは困った。

 そんな困った様子をみて、フロントの人がこの建物の2階に3人部屋が在るんだけど、そこも見てみる?と助け船を出してくれた。一応チェックしてみようと思い、二階に登る。そして見せてもらった部屋は、申し分の無い清潔さと、広さだった。大き目のベットが3台縦に並んでいて、バス、トイレは共同なのだが、そのトイレもとても奇麗だ。150バーツという値段もこの部屋の質からすると悪くない。だから、僕は即断即決でその部屋を確保することにした。

 さっそくそのゲストハウスで飯を食い、少し早いが9時前には眠りについた。





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最終更新日  2012年04月14日 15時41分58秒
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