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2頭いたうちの1頭が連れていかれる。
2頭が一緒に過ごしたのは、たった1週間。
それでも、離れ離れになる時に、
きっとお互いの運命に気付いているのだろう。
壁を隔てて「ベェー ベェー」と鳴きあう。いや泣きあう。
台所では、
首を一瞬にして切れるようにと、
モスクから帰ってきたばかりの一家の主であるお父さんが包丁を研ぐ。
お父さんの優しさ。
お父さんと21歳になる4男坊のナビルが羊を抑える。
最初は抵抗していた羊も、
自分の運命を受け入れたのか、
それとも、抵抗しても無駄なことに気付き諦めたのか、
はたまた、この神聖な日に神に奉げられるという名誉を悟ったのか。
おとなしくその時を待つ。
「神の名において・・・」
イスラムの言葉を唱え、包丁を首に入れる。
ザック ザック という 首の皮・肉が切れる音がした10秒後、
包丁が頚動脈に達し、
シャーーーと勢いよく 赤い液体が噴出す。
それだけでは死にきれない羊。
直に力は弱くなりながらも、まだ足をバタバタさせている。
完全に首を切り落としてからは、縦につるし、
皮を剥いだり、内臓を取り出したり。
お父さんがナビルに、
「ここはこうやって・・・」と教え、ナビルが実践。
横にいた長男ムスタファも、
「ちがうよ。ここはこうやるといいんだよ!」とすかさず口出し。
親から子へ受け継がれる大事な伝統。
いつか、子どもが一家の主になったときに、同じようにできるように。
昔は、長男と。
その次は、次男と。
そして今年は 4男と。
4男ナビルもお父さんの言うことをよく聞きながら、目の前の羊と格闘している。
その表情は、何とも誇らしげ。
まるで、一人前の男として認められたかのように。
何年か後、
一家の主になった時に、自分で買った羊を捌く日のナビルが見てみたい。
お祈りに行っていない男性と、女性が
羊を捌くのはイスラムにおいて禁忌とされている。
女性達、つまり、お母さんや娘、嫁は、
内臓が開かれたころ良いタイミングで、内臓をいれるためのボールを持ってくる。
彼女達にとって、羊を捌くことは何にも珍しいことでもなく、
今さらその過程をじっとみるということもしない。
ただ、業務的に、内臓を取りに来て、
台所に運ぶ。
そこから台所では女性の仕事。
肝臓をオーブンで焼き、心臓を茹でる。
それらを一口サイズに切り分け、
脂肪の皮みたいなものを巻き、串にさす。
後に炭火焼。

その他肺や小腸諸々の内臓を細かく切り、
塩・クミン・ターメリック等の香辛料や香草と一緒にココットで煮込む。
こちらも、母から娘へ。
いつか、娘が母となった時に、同じようにできるように。
そうしていつの間にか、羊の身包みが剥がされ、
綺麗に洗浄。
初日 は内臓
二日目 は頭
三日目 以降に肉を切って食べる
羊に感謝して、余すことなくいただく。
それが、生きる物の命をいただいた私達の義務。
頚動脈から血が噴き出している瞬間。
そして、お腹を切り内臓を取り出している時に、
外の気温よりも内臓の方が温かいので湯気が出ていた。
何よりも、今、たった今まで、
それが生きていた、
息をして、全身に血が流れていた 何よりの証。
当たり前のことながら、
本当に月並みな言葉しかでてこない自分の語彙力を情けなく思うが、
生きるために、他の生き物の命をいただいている。
決して粗末にしてはいけない、生き物の命 と、それをいただいている自分の命。
生きる物の命をもらって、生かされている事実。
こんな分かりきったことなのに、
やっぱり日常こんなことを考える機会・時間はあまりなくて、忘れてしまう。
だからこうやって、
年に1度でも、こんなふうに考えられる貴重な時間があることは、
すごいことだと思う。
この国には、
人殺し なんて 滅多に滅多におこらない。
ましてや、子どもが親を殺すなんて そんな奇怪なこと ありえないに近い。
それはもちろん イスラムの教えにあるから。
そして、こうやって、
命のありがたみ、
生きることの大切さ を、
生活の中で、小さい頃から実際に見て、
知らず知らずのうちに学んでいて、
生かされている尊さを知っているからってのも大きいんじゃないかと思う。
何不自由ない恵まれた世界にいる子ども達。
けれども、プラスチックの中の肉しか見たことのない子ども達。
いや、大人だってたくさんの人がそうなんじゃないかな。
この大切な生きる授業。
体験できる時があればいいなと思う。
目の前で生き物が殺されるって、
残酷 で、
ついつい目を伏せたくなる。
けれども、殺される生き物を命を尊ぶために、
目を閉じず、
その目でみて、しっかりいろんなことを感じてほしい。
というわけで、
2007年12月20日。
初めて生き物がしめられるところを目にした。
ところが、本来のライードは12月21日。
これはいわゆる前祭(?)みたいなもの。
なんかよく分からんが、「フデラ」と呼ばれるもので、ラマダン中も27日目にお祝いしたようなものだ!って言ってた。とりあえず、家によっては、羊を2頭買って、一日一頭ずつしめるんだって。
この日は、いつもお世話になってる ノラの家にお邪魔。
翌日のライード本番は所長の家にお邪魔。


2日続けて、羊の解体を見せてもらい、
内臓の串炭火焼・煮込み料理をいただいて。
そして、午後からはいつもの挨拶まわり。
みんな、家に来なさい!って誘ってくれる。
ありがたい。
家を回るのは大変だし、すっごい疲れるけど、
こういう機会でもないと、普段疎遠になってる家には行くことないから。
いい機会ではあるんだよね。
訪問して、お茶とお菓子をいただいて。
必ず「肉食べてきなさい!」と。
「いや、他の家に行かなきゃなりませんから。ありがとうございます。また今度!」
と後にする。
ちょうど、時期的にも、
日本にいた時の、年末の挨拶周りを思い出す。
あぁ。会社員からは足を洗ったはずなのになぁ。。。
何はともあれ、
大事なことを学び、
頭も心もお腹もいっぱいな日が終了。
