山南が引くと見せかけて踏み込んで沖田の面に刀を下ろす。
が、沖田の刀にはじき返され手首に刀が当たる。
山南の手首から血が流れる。
2人の殺気に周囲の人影はしのを残して散っていく。
山南がじりじりと後退していく。
沖田が距離を縮めていく。
沖田が踏み込んで全身で山南をつく。
山南は横に体をかわしながら剣先は沖田の胴をねらうが、かわされる。
山南がじりじりと後退していく。
沖田の次の鋭い打ち込みで山南が跳ね飛ばされてしりもちをつく。
沖田が刀を上段に構える。
その時、山南の体にしのがおいかぶさる。
沖田の顔から殺気が消えていく。
沖田「山南さん、この女と逃げてください。もともとあなたを切るために追いかけてきたのではないのです」
山南がしのを体からどける。
山南「しの、お前は1人でふるさとの海を見に行け」
しのに路銀を渡して山南は座り込んで腕を後ろにまわす。
山南「総司、縄を打て」
沖田はそんな山南に縄を打たないまま馬上にもどる。
沖田「貴方に縄などうちたくありません。逃げてもいいですよ」
立ち上がった山南が馬の横に立つ。
山南「総司とうとう最後までお前には敵わなかったな。近藤さんのところに連れて行け」
総司が山南を哀しい目でみる。
京へと向かう総司の後ろから山南もゆっくりとついていく。
しのが呆然と2人を見送っている。
〇街道の峠(夜明け)
夜明けの街道を馬に乗った沖田に並んで山南が歩いている。
眼下に朝焼けの京の町がみえてくる。
沖田が馬を降りる。
沖田「屯所で近藤さんが待っています」
山南「他流試合で近藤に不覚の1本をとられて、名誉挽回に試衛館を訪ねた時に、師範代だという青二才のお前に敗れてから、もう4年になるな」
沖田「先ほども勝ちたくはありませんでした。でも、勝ってしまった。私は労咳で長くは生きられません。あの女と行きたかったら、ここで私を切ってから行ってください。山南さんが見つけてくれた私の刀で切られる覚悟で追いかけました」
沖田が袖口の内側の白装束を見せる。
山南「北辰一刀流、小野派一刀流免許皆伝、腕に覚えがある俺が労咳病みの総司に敗れたんだ。隊に帰れば切腹だ。その時はお前がその菊一文字で介添えしてくれ」
(つづく)
幕末・女医と剣士(3) 2017.07.17
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