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2011.09.17
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カテゴリ: ニュース

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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/19803?page=2
2011年09月16日(金) フライデー :現代ビジネス


県内592ヵ所で使用を禁止。多くが緑色に濁った ホットスポットとなって、見捨てられたままだ。 新学期はもう始まっている。この現実をどうするつもりか

 9月1日、原発事故で休校中の16校を除く福島県内のすべての学校で2学期が始まった。久しぶりの友達との再会に子供たちの笑顔がはじける。放射線量の高い校庭の表土除去も各地で進み、普通の生活を取り戻すべく福島の子供たちは動き出そうとしている。

 しかし、彼らが生活の大半を過ごす学校には、行政がいまだ手をつけていない危険が潜んでいる。

「今年、福島県の幼稚園・小中学校・高等学校・養護学校で屋外プールを所有している735ヵ所の施設のうち、592ヵ所が自前のプールでの水泳の授業を見合わせました。地震でプールが壊れたところもありますが、ほぼすべてが生徒たちの被曝を恐れてのことです。プールには災害時の緊急用水として冬場も水を溜めておくのですが、原発事故により放射性物質が飛散して溜まり、簡単に排水できなくなってしまったのです。プール使用を決めた143ヵ所の大部分は、福島第一原発から100km前後離れている会津地方の学校です。5月末に排水可能という通達を出したのですが、残る592ヵ所のうちの大部分が、排水できていないとみています」

 福島県教育委員会(教育庁)学校生活健康課の吉田尚課長はこう説明する。本誌が取材したのは9月5日。つまり2学期が始まった福島の学校には、放射性物質の溜め池と化した、緑色に濁ったプールが600ヵ所近くもあるのだ。

 25mプールの公認規格に適合する最小サイズ(25.01m×10.4m×1.0m)と仮定して、600ヵ所で約15万tもの放射能汚染水が溜まっている計算になる。

 本誌は実際に郡山市内の、とある小学校を訪ねた(なお、校名については、児童や付近住民に配慮し、匿名とする)。

 プール周辺は、厳しい残暑にもかかわらず、人気がなく静まりかえっている。繁茂しすぎた藻で緑色に濁った水に映った空が不気味な色に染まっていた。

 プール内の放射線量をくまなく計測した結果、プール水面上=0.42マイクロシーベルト、プール横排水口付近=1.13マイクロシーベルト、プールサイド=0.86マイクロシーベルト(数値はいずれも毎時・水面、地上からそれぞれ10cmの高さで5回連続して計測した平均値を算出)となった。これは、福島第一から約24kmにある南相馬合同庁舎の0.43マイクロシーベルトを上回る線量だ。

 排水口やプールサイドのほうが高いという結果は、南相馬市で除染作業を行う東京大学アイソトープ総合センター長の児玉龍彦氏が言う「水が留まりやすく、濃縮が促される地点や汚泥などの放射線量が高い」という論に見事に当てはまる。

 実は今から3ヵ月ほど前の6月16日、文科省は福島県の状況を考えず、排水方法にはまったく触れないまま『福島県内の学校の屋外プールの利用について』と題した通達を出した。その内容に県は困惑した、と吉田氏は言う。

「通達に基準値が記載されていると我々は思っていたんですが、まったく書かれていませんでした。通達は『プール使用のための基準値は改めて設定するが、(それとは関係なく)プールの使用は問題ない。月に2回放射性物質の測定をして、検出された場合は推定被曝量を文科省で計算するが、大した被曝量にはならない』と決めつけるような内容でした」

 この通達に従って、放射線モニタリングを開始した福島県だったが、6月16日の通達以降、一向に国からの指示はなく、放射性物質が不検出だった学校のみプール使用を許可する独自基準を設定。その結果、近隣の学校同士でもプールが使える学校と使えない学校が発生する不明瞭な状況が生まれた。

 国が無視した溜まった水の放射線量について、前出の吉田氏はこう弁明する。

「福島県としては、国が排水の基準を設けていないため正式な線量調査は行っておりません。ただ、市町村などが行った同じような状況のプールでの調査結果を聞いています。その結果は参考値ですので公表はしておりませんが、高い数値ではありませんでした。そのため福島県では、問題は水そのものよりも、底に溜まっている汚泥だと考えております」

 汚泥が問題だという見解を示しても、県民の安全を考えれば、数値を公表しない理由にはまったくならない。これでは児玉氏が批判する「数値をいじるだけで、真に守るべき妊婦と子供の存在を軽視している」政府と同じだ。県が主導権を握って、独自の安全基準を県民に示す気がないことを如実に表している。

 ただ、この弁明にも頷ける点はある。

「この問題に関して、政府は一向に処理の指針を決めず、最初から対策を自治体に丸投げしていたんです。この状況では、我々としても各市町村、各学校単位で地域住民の方々の理解を得て処理をして下さい、としか説明できない状態なんです」


野田内閣で初の閣僚選出となった中川正春文部科学大臣。意欲は見せたが、早急な解決は可能なのだろうか 国は、この問題をどう考えているのか。本誌は、プールの排水問題について9月2日、同日の閣僚人事で就任したばかりの中川正春文部科学相に聞いた。

---文科省がプール使用可能の通達を出しても、排水すらできない学校があるが。

「そういった質問があるだろうということで、文科省の対応を調べていました。私もプールの水がどのくらいの濃度なのか確認し、市町村任せの対応ではなく、文科省も力を出していきます」

 新大臣の回答は文科省の通達を要約しただけで、結局、文部科学省学校健康教育課に聞かねばラチが明かなかった。

---福島県のプールについての現状は。

「今、福島県の教育委員会が、何校ぐらい未排水で残っているのかを調査中ですよね。それが9月中に終わると聞いております。我々も排水状況の把握に努めております。もうすぐプールの期間も終わりですが、県の動きもありますので、いずれ把握したいなと考えております」

---汚泥の処理が問題となっているが。

「当然、そのことは認識しておりますが、具体的な施策については、今後検討という状況でございます」

 担当者である、菊池信太郎係長の発言からも、福島県に任せきりにする文科省の丸投げ体質が裏付けられた。

 最後に本誌は、福島県が国に再三要請しているという要望について聞いた。

---福島県はプール使用基準の明確化、汚泥処理の指針設計、モニタリングへの協力の3つを求めていますが。

「課内でも共有させて頂きます」

 伊達市や南相馬市などの一部の学校では、放射性物質を吸着する性質を持つ鉱物「ゼオライト」を利用してプールを除染・排水した。これには1ヵ所当たり数百万円とも言われるコストの問題があるが、福島県はどう考えるのか。

「大がかりな作業で、すべての学校で実施できないですし、また、そこまでする必要があるかということもあります。ただ、これは、地域住民の生活圏の除染という重大な問題ともかかわってきますから、国には一刻も早く排水・汚泥処理に対して、基準値作りを進めて頂きたいと思っています」(前出・吉田氏)

 効果的な施策を打ち出せない県と、動きの遅い政府が責任を押しつけ合うこの瞬間にも、汚染は人々を蝕んでいく。

 郡山市の中学校に通う女子生徒の母親が、率直に不安を口にした。

「水泳好きの娘が、『放射能に汚染された水には入りたくない』と言ってきます。このことでプール嫌いにはなってほしくないのですが・・・・・・」

 福島の子供たちの健康も興味も、行政の怠慢が奪っていく。


PHOTO 片野茂樹 鬼怒川 毅

「フライデー」2011年9月23日号より


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最終更新日  2011.09.17 09:17:15


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