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なかったような気がする。今回の芥川賞受賞作を読んで、新鮮な驚きを感じた。
題名からして【乳と卵】 (あのぉ~、朝食のメニューではありませんから^^;)
思春期の少女、緑子の日記を通して描かれる、母親の豊胸手術の顛末と、著者の分身
では?と思われる主人公とその姉で緑子の母である、巻子。
小説にはこの3人の女性しか登場しない。
語られるのは、巻子が大阪から娘の緑子を連れて、夏休みに豊胸手術を受けるために、
上京し、妹(主人公)の部屋で過ごす3日間の出来事。
非常にシンプルなのだけど、緑子の視点で綴られる日記の内容は、女性の躰を通して、
人間存在を問いかける、鋭い思春期の感性に満ち溢れていて、ハッ!とさせられる。
「第二の性」で、女は女に生まれない、女に成るのだ・・・と、書いた、ボーボワールだが、
彼女は女性の精神的、人間形成の部分に重点が置かれていて、女性の躰については
書いていなかったように記憶している。(高校生の頃なので、かなり忘れたかも?^^;)
今回、選考委員の中でも、かなり意見は分かれたようで、選評を読むと作家のみなさんの
感性の違いがよ~くわかり、それもまた面白い!
大阪弁、それも日常会話(口語体)で綴られた文章は、かなりエグイ?感じなので・・・
かなり抵抗感のある人もいるのでは?と思うし、その内容も女性の躰のことについて深く
綿々と綴られているので、男性は嫌悪感を持つかも知れない。
けれど、これは女性の躰を通して、人間存在を問いかける、哲学的小説だと感じた。
先日、このブログにも書いたのだけど、朝の支度をしながら、何気に聞いている朝の番組
で、芥川賞受賞者の川上未映子さんがインタビューに答えていた。
それを聞いた時、「あっ、読もう!」と即座に思った。
彼女の言葉が哲学的だと感じたから・・・
そして、文藝春秋の受賞者インタビューを読んで、やっぱり~!と納得!(^^)
家が豊かでないので、大学進学せず、様々な仕事をしながら、大学の通信教育で哲学を
学んだとのことで、「育った家には本が一冊もなかった!」と言う。
通信教育で哲学を学ぶうちに【自分が何を問題としてきたのか】がわかり、それまでは、
難解だった哲学史が急に生き生きと系統だって見えてきて、カントやニーチェの考えてい
たことが、次々と腑に落ちてきたと言う。
そして、、、現代に生きる自分は、この綿々と続く流れの先端にいるんだと。。。
小説が面白いのは、読んでいくうちに登場人物に自分を投影し、いつの間にか、その中
に入り込んでしまい、別の世界へ旅を出来ることだと思うけど、、、
今回、この受賞作を読んでいくうちに、緑子を通して、昔、昔の中学生の頃の私に戻って
いくような感覚を覚えた。
大人の身体になってゆくことへの戸惑い、抵抗感、女性であることの嫌悪・・・
当時の私へ、まるでタイムスリップしたような不思議な旅をした気分。。。
まっ、とにかく、是非!今発売中の【文藝春秋】をどうぞ!(まわし者?^^;)