太田典生の「毎朝1話」良い話のおすそ分け

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2018.01.03
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ヒマラヤを黄金と化すも

 ポーランドの民話にこんな話があります。

ある時、海辺のあばら家に住む漁師が魔法の魚を釣り上げました。その魚は、自分を海に帰してくれるなら、その見返りに、漁師のつましい願いに応えて、丸太小屋と十分な食べ物を与えてあげると約束します。漁師は魚を放し、願いはかなえられました。

一週間後、漁師は最早それでは満足できなくなり、また海に行って魔法の魚を捕まえて、より大きな住まいを願い、手に入れました。 それでも一週間もするとまた満足できなくなって、また魔法の魚に頼みました。

そんなことが何度も繰り返され、ついに漁師は王宮を要求するまでになりました。そのあまりの厚かましさに、魔法の魚は彼を元の海辺のあばら家に戻してしまいましたとさ。

お釈迦様も、

「ヒマラヤを黄金と化すも、一人の満足を満たすこともできない」と言ったように、「もっともっと」と欲望を膨らませていくのが人間の変わらぬ性です。


 幸せ感は【充足/欲求】で表すことができます。
 ですから、欲望を「もっともっと」と高めていく限り、常に充足を今以上に高めていかないと幸せ感は高まりません。

そこで、人類は太古の昔から、次から次へとモノを買い、お金を貯め、旅をし、美味しいものを食べ・・・と欲望を満たすために狂奔してきました。その頂点がバブルです。

だが、私たちはそれで幸せになったでしょうか?

人間には欲望があり、それを満たそうとして頑張るから進歩する面もあります。だが、 「貧しく欲張らなければ、怒りと辱めの難を逃れて常に安らかで心配のない生活ができる。証拠は目の前に明らかで、仏教の教えを待つまでもない。それなのに道に暗い人は、財宝を蓄えて常に怒りを抱いている」と『正法眼蔵随聞記』が諭すように、財産を沢山持っていると、人がその財産を奪おうとし、すると取られてなるものかとたちまち怒りが生じて、口争いから訴訟になったり、殴り合いになったりして、辱めを受けることにもなります。

本来、欲望というのは、苦しむためのものではなく、楽しむためのものであるはずなのに、人間のすべての苦労や嘆きは際限のない欲望から起きます。

現在の私たちは、物質的には大変豊かな時代に生きています。それでもなお、もっと儲けたい、もっと贅沢な生活をしたいと血眼になり、奪い合い、蹴落としあう醜い争いが、至る所で繰り広げられています。

「自分の欲以上の損はしない」という諺があるが、年間二万件前後もの詐欺事件が表沙汰になるように、何かを得ようと必死になりすぎて却って財産を失う人が後を絶ちません。

常に求めて何時までも得られないのは欲求不満のストレスを、求めて裏切られるのは怒りのストレスを、内心で求めているのに我慢するのは自己抑制のストレスを引き起こします。
 この世の中は、そんなストレスでいっぱいの人ばかりです。

貪欲は、決してあなたを平安で心豊かな暮らしには導いてくれません。

物質的なものや相対的なものは、一時の幸せ感をもたらしたとしても長続きしません。

何事も上にはがあるので、麻薬と同じで、次から次へと刺激を強くしていかなければ効かなくなります。

ですから、外的なものを沢山得れば得るほど、かえって内的な心の平安や至福の世界からは遠ざかっていきます。


 豊かさには、財貨などの目に見える豊かさと、心豊かな時間のように目には見えない豊かさとがあります。
 心豊かな時間とは、どんな空間(環境)で、誰と(人間関係)、どんなことを話し(情報=教養)、どんなことをしたか(行動)で決まります。

幸せ感とは心の平安であり、それは目に見えるものよりも、目には見えない精神的な豊かさによってもとらされるのではないかと思います。

トルストイも『戦争と平和』の中で、「自分の心中に幸福を求めなさい。幸せの泉は外ではなく内にある」と書いています。

臨死体験をした多くの人が、死の寸前までの自分の人生を走馬灯のように思い出した時、困っている人を助けた時や、汗を流して奉仕した時を一番楽しく感じたと語ります。

この話は、人間が生きている意味として最も大切なのは、お金や地位や名声ではなく、自分が世のため他人のためになったという、心の満足にあることを暗示しています。

人よりも一歩でも二歩でも抜きん出ようとか、今日よりも明日、明日よりも明後日と人を押しのけてでも頑張ることが、本当の幸せをもたらすとは思えません。

そのような生き方は、かえって幸せを取り逃しかねないと思います。

日々の暮らしの中で周りの人とも共有できる心豊かな幸せこそ、本当の幸せの姿ではないでしょうか?

死ねば無一物です。遺産がどうなるか未練を残して死ぬほど愚かなことはありません。あの世には何も持っていけないのに、沢山のものを持ち過ぎるから苦しくなります。身分や地位、権威、財産、傲慢・・・、こんな持ち物を持って天国に行くことはできません。

私たちは、現世におけるそのような持ち物にとらわれて、毎日汲々としています。そんな荷物を一度下ろしてみると、苦しみを喜びに変えることができるはずです。






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最終更新日  2018.01.03 05:26:12
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