海の向こうから届いたスパイスの知恵を、日本の風土と『うま味』がやさしく包み込む。完全無添加、すべて国産の素材で仕立てたターリー。
古くから日本の食文化は、海の向こうから届いた異国の料理や知恵を温かく受け入れ、自国の風土や素材、そして「うま味」の文化と丁寧に重ね合わせることで、独自の美しさを育んできました。
中華料理が日本人の繊細な味覚や旬の食材と出合い『日本の中華』として親しまれてきたように、本場の技法や思想に敬意を払いながらも、手仕事を通して新たな調和を見つけていく。そんなしなやかな探求が、日本の食の魅力のひとつだと感じています。
カレーもまた、その一例かもしれません。
伝わってきたスパイスの料理が、日本では刺激や香りの強さだけを前面に出すのではなく、出汁や素材の旨味を丁寧に重ね、厚みと深みを増していく。そして、一皿としての美しさや、食べたあとの身体の軽さまでを見据えて仕上げる…。そんな静かな進化を遂げてきたように思います。
現代は、食の選択肢がとても豊かで、便利な時代です。外食や既製品が日常を支えてくれる一方で、ふと『素材そのものが持つ声』や『ひと皿に込められる静かな手仕事』に、心が向くときがあります。
一杯のコーヒーを丁寧に淹れるように、自分の目で選んだ素材と向き合い、慈しむように料理を仕立てる時間は、何ものにも代えがたい豊かさをくれる気がします。
気になる料理があれば、カレーに限らず、食べ歩きながら幅広く触れてみたいと思っています。ひとつのことに絞るというより、幅広いものを丁寧に、深く見つめてしまう。そんな向き合い方が、自然と身についているのかもしれません。
素材とスパイスが織りなす、ターリーという試み
インドの伝統的なミールス(ターリー)の仕立てに学びながら、日本の素材でひとつの世界観を描いてみました。
大切にしたのは、『完全無添加であること』。そして、『スパイス以外のすべての素材に国産のものを選ぶこと』です。
日本の土壌と水が育んだ肉や海鮮、彩り豊かな野菜たち。それらが持つ旨味や出汁の力は、とても清らかで奥深いものです。尖りやすいスパイスの香りを、国産素材の穏やかな旨味がやさしく包み込み、心身にすっと馴染むような調和を生んでくれます。
個性を描き分けた「4種のカレー」
海鮮の滋味を丁寧に引き出したもの、お肉のコクを静かに重ねたものなど、4種それぞれが少しずつ異なる表情を持っています。スパイスの個性を活かしつつ、旨味の厚みを優しく重ね、美しく整えることを心がけました。
彩りを添える「季節の野菜たち」
季節の野菜を使ったサブジやアチャール。酸味や甘味、ほろ苦い味わい、さまざまな食感が、プレート全体にやさしいリズムを生んでくれます。
調和を深める中央のしつらえ
ハーブをまとわせたライスと、火入れを大切にしたゆで卵。そして全体をやさしく繋ぐ自家製のライタ。
一皿の上で、海鮮の出汁、お肉の旨味、野菜の彩り、スパイスの香りが静かに交わり、混ぜ合わせるたびに新しい発見が生まれます。
強い刺激や大げさな表現に頼るのではなく、素材の生命感を丁寧に手仕事で引き出し、食後の身体がすっきりと整うような美味しさを目指したいと思っています。
異国の食文化への敬意と、日本の風土への感謝を込めて。
これからも一皿一皿との出会いを大切に、静かに食の探求を続けていきたいです。
料理研究家 指宿さゆり
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