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こけし用語辞典 by 松田ひろむ 【梅こけし】うめこけし

弥治郎の大野栄治が
1917
年
(
大正
6
年
)
ごろ創案したくびれ胴に枝梅を配したこけし。鬢にも梅を描く。こけしの胴模様としての梅は、『こけし辞典』の「梅模様」の項にあるように各系統ともに多いが、ここでいう「梅こけし」は単に胴模様の梅ではなく、大野栄治から派生したものをいう。くびれ胴(鹿鳴館調とも)は、嘉三郎の弟の重松が横須賀に出てきたときに見た西洋人の膨らんだスカート(パニエ)を見て作ったのが始まりであるという説もある。(「こけし手帖」78北村勝史)
くびれ胴だけでなく直胴もあるが鬢に梅があることが基本である。
大野栄治が昭和 4 年に北海道に去ったあと、師の小倉嘉三郎も作り、その後、嘉三郎の子の篤、勝志、大野栄治の息子定良も作った。弥治郎の佐藤誠、佐藤誠孝、佐藤英之、高橋精志など多くの工人に広がった。(参照:『こけし辞典』「梅こけし」)
弥治郎だけでなく、遠刈田の佐藤円吉は 1939 年 ( 昭和 14 年 ) 米浪庄弌の持参した名刺の大野栄治のこけし絵から、梅こけしを作った。頭部は弥治郎のいわゆるベレー帽と呼ばれるろくろ線の黒頭ではなく、おかっぱ風の黒頭であった。
土湯系鯖湖亜系の高橋忠蔵も「昭和十五年頃と思うが、東京からたずねてきた鳥居さんという人に和紙に描いた(大野栄治の梅)こけしの絵を見せられ、こんなこけしを作ってくれないかと熱心に頼まれたのです、お客さんの注文だから、何でも出来るものはやろうと思ってやってみたら、予想以上によいできだと喜ばれました。後日、この型のこけしを作って、原ノ町の駅前の店に出したらよく売れた。鶯は思い付きで後から書き加えるようになったものです。」(「こけし手帖」 256 号松井貞夫「老工から聞いた話 - 高橋忠蔵さんの思い出」)という。ただし『こけし辞典』は 1951 年(昭和 26 年)とある。これは孫の高橋通も作った。忠蔵の梅こけしの頭部は土湯系なのでろくろ線であり、それはまったく弥治郎風である。(「こけし千夜一夜物語」第 764 夜)
伝統継承という観点からは、弥治郎以外の梅こけしは邪道と考える向きもある。米浪自身も「(私が)不用意に犯した罪の反省に悩んだ。そして円吉宛に、決してか様な他系統のこけしを模作しない様に手紙を送ったが入れられず、次々と他の愛好者へも送った様である」としている。
画像は向って右から大野栄治、小倉嘉三郎(木地処さとう HP )、富塚由香 9 cm( https://starry.sunnyday.co.jp/products/detail.php?product_id=537 )
円吉梅こけし 米浪庄弌(前略)柴田長吉郎氏「遠刈田の梅こけし」の研究談に、心惹かされて拝聴していたら、佐藤円吉の変型梅こけしが卓上に置かれて、私は一瞬ハッとした。同時に古瘡に触られた思いがして上気した。それは昭和十四年五月のこけしの旅の出来事である。私はいつも旅の用件を知ってもらう為に、こけし絵を書いた名刺を用意して、出掛けるのが常であった。この時は大野栄治の梅こけしを描いた名刺を、訪ねた工人に手渡した。遠刈田では、円吉にもこの一枚を使った。旅が終わって二ヵ月位は、注文のこけしが続々と到着し、毎日うれしい日が続いたが、計らずも円吉から届いたこけしは、頭部の描彩以外は、すべてくびれた形も胴模様も、大野栄治そのままであった。私は驚きと共に、不用意に犯した罪の反省に悩んだ。そして円吉宛に、決してか様な他系統のこけしを模作しない様に手紙を送ったが入れられず、次々と他の愛好者へも送った様である。私はこれ以来工人達には一切文献や写真などを送るまいと心に誓った。私の「こけし人形図鑑」に一人の工人も会員に入れなかったのもその故であった。円吉の梅こけしも、二十五年も経った今日、最早や伝統の様にさえなっているのではないか。(「こけし手帖」 54 号)
(ひろむ注)米浪庄弌は、こけし絵の名刺を渡したのがいけなかったというが、現在からみると時代錯誤的と思える。現在では何系の工人であっても他系統のこけしの情報は十分に知り得るし、系統を越えた交流も盛んである。他系統のこけしから刺激を受けることは当然あり得る。米浪のように情報を遮断することは出来るはずもない。工人の工房にいけば『古作図譜』や『らっこコレクション図譜』などの図譜も当然のように置かれている。他系統との交流はもっとあっていいと思う。問題はそれを自身のこけしといかに融合させるか、あるいは自家薬篭中のものとするかどうかであろう。
富岡由香9㎝
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<こけし用語辞典 by 松田ひろむ> 本用語辞典は『こけし辞典』(東京堂出版)、< KokeshiWiki >に立項されていない項目。あるいは内容や定義が相当程度異なるもの。内容を相当大きく充実させたものに限定している。必要に応じ順次充実させてゆきたいと考えている。みなさまのご意見、ご叱正をいただければ幸いである。
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