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2019年09月19日
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カテゴリ: こけしの古作復元

高橋正吾の伊藤儀一郎写し - 伝統と創造

このたび、高橋正吾の伊藤儀一郎写し(復元作)がヤフオクに 2 点出品され、幸いにも落札することが出来た。

伊藤儀一郎は鳴子で修業したことはあるが木地山系とされている。その野口小蘋の粉本による胴模様は果たして伝統かどうかで、論争を巻き起こしたことがあった。

伊藤常治が継承し、小椋久太郎も戦前に儀一郎型を作った。それは北原直喜コレクションでヤフオクに落札実績がある。現在は北山賢一、沼倉孝彦が作っている。しかし生粋の鳴子の長老の高橋正吾が写し(復元)を作るとは驚く他はない。これまでにも作っていたのだろうか。

胴模様は山茶花( 24 ㎝)と桔梗( 20 ㎝)、どちらも鳴子風ではないが頭が動く。描彩は原と同じく顔料を使っている。山茶花模様は上部にウテラカシが施されている。原にもウテラカシがあってそれを忠実に写している。胴裏には「儀一郎写 高橋正吾作 八十九才」とある。儀一郎は白目を白く塗っていてそれが効果的とも不気味ともいわれたが、正吾はそれはしていない。そのため、健康な少女の姿が好ましい。黄胴も印象を深めている。

これが伝統かどうかはともかく、逆説的ながら伝統派の高橋正吾が作るものは伝統というほかはない。

私見を述べれば、儀一郎の形態はあくまで木地山系であるので、その意匠が創作であっても問題はないと考えている。儀一郎が創作こけしなら、盛秀も創作こけしということになる。

 「こけし手帖」 7 号は儀一郎特集。石井真之介<瀧の原雑記>、米浪庄弌<小安懐古>、鹿間時夫<瀧の原回顧>、<瀧の原こけし批評二、三>の引用、武井武雄「日本郷土玩具」(昭和 5 年 2 月)他、<瀧の原座談会>、加賀山昇次<小安道しるべ>などだが、まっこうから儀一郎を否定する論はない。

【伊藤儀一郎】(いとう ぎいちろう) 1882 ~ 1933

〔人物〕明治 15 年 1 月 1 日、秋田県雄勝郡川連村に生まる。井上栄治の孫。明治 21 年母キサが伊藤政治と結婚したので、妹のキヱとともに政治の養子となった。明治 23 年養父に長男兵太郎が生まれた。小学校卒業後、鳴子へ木地修業にでかけ、高橋利四郎について半年修業した〈こけしの微笑〉。鳴子での修業が、小学校卒業後ならば明治 28 年儀一郎 14 歳の頃であろう。その頃高橋利四郎は 24 歳、丁度高亀から独立して大沼利右衛門の上手で営業していたと思われる。

修業後は小安に戻り、養父や義弟たち(兵太郎、常治)と木地挽きに従事した。伊藤家は本来農業であったといわれているが、副業で木地を挽いていたのかもしれない。儀一郎が鳴子に行く前に養父の政治から木地の基本は習っていたという説もある。儀一郎は利四郎ゆずりの小物を挽いて巧みであったという。

大正 13 年、仙台の鈴木軍治によってこけし作者として発見された。ただ最初の写真紹介は昭和 5 年の武井武雄著〈日本の郷土玩具・東の部)である。儀一郎は当時すでに転業し、滝の原発電所の水槽番をしており、余暇に挽くくらいだったから、きわめて少数しかできなかった。武井画伯は断然日本一と推賞し、「このこけしの優秀さは嶄然頭角をあらわしているもので、すでに玩具の域を脱して装飾芸術として認め得る佳品である。・・・御所人形、嵯峨人形の意気であって、その優雅な美しさは黒檀の違い棚に安置しても正にふさわしいものがある」と激賞した。

この武井武雄の評価は当時の郷玩収集家の指針となり、多くの収集家が狂奔して儀一郎入手に走った。当時既に儀一郎は病身で、注文に十分応じられず、蒐集家を手こずらせる難物工人として有名になった。

野口小蘋の粉本を手本にして、山茶花、芙蓉、桔梗、燕子花、百合等の絵を胴に配して描いた。また日本一のゴム判を捺したりもした。 一方で性格は几張面で小心であったらしい。昭和 8 年 3 月 16 日没、行年 52 歳。( KokeshiWiki )

〔作品〕深沢要が小安で入手した写真がある。〈こけしの微笑〉「小安紀行」に次のように書かれている。「翌朝、私は二本の古びたこけしを手に入れた。三寸くらいのただ形だけのものではあるが、一本は佐藤留治のものであり、一本は儀一郎のものである。ともに地元の子供が持ち遊んだこけしとして、憶い出と共に愛蔵したいと思っている。」

この儀一郎、面描はほとんど見えないが、胴の赤と緑はかすかに残っており、野口小蘋の粉本による模様ではなく、木地山風あるいは鳴子風の菊模様が描かれている。これが子供が遊ぶための本来の儀一郎のこけしだったと思われる。

石井眞之助旧蔵の(写真の)儀一郎 2 本、特に右端は小椋久四郎が持っていたものを譲り受けたと伝えられ、大正期の儀一郎である。まだこけしの蒐集が本格的に始まる前に、こどもが遊ぶためではなく、飾る目的でこうした上手物のこけしが作られていたことは興味深い。上手物の歴史は決して新しいものではない。蒐集家出現以前から上手物の歴史はあったのである。

この 2 本の胴模様、山茶花と芙蓉は、野口小蘋の粉本をほぼ正確に写したものであった。

当時日本一ともてはやされた伊藤儀一郎が、〈画法自在〉の野口小蘋の絵を敷き写してその胴模様を描いていたことは、高久田脩司によって昭和 14 年の東京こけし会会誌〈こけし・ 4 〉に報告された。しかも粉本の上には「上に紙を当てて鉛筆で写したものと見え、強く上から押した痕が歴然と残って居った」とあって蒐集界は騒然となった。儀一郎のこけしは「新型、あるいは創作こけしのはしり」とするものも、依然支持を続け「過小に評価すべきものではない」とするものもあって、こけし界の評価は二分された。 鹿間時夫 はどちらかというと擁護派、 土橋慶三 は糾弾派であった。

〔伝統〕木地山系 ただし野口小蘋の粉本による上手物の作品は儀一郎一代の工夫であった。義弟の伊藤常治は儀一郎の様式を継承した。北山賢一、沼倉孝彦は伊藤儀一朗型を作っている。 (KokeshiWiki 抜粋)義父の政治も儀一郎型を作っている。(「こけし手帖」)

高久田の報告の後で出版された「古計志加々美」の儀一郎評は手厳しい。「正確に言へば彼のこけしは独自の形式を備ヘで居て、之を以て鳴子系のこけしとは称し難く、さりとて木地山風でもなく、全く特殊なこけしと言ふべきである。木地としては挽成及び仕上げの美事さが賞美されるが、野口小蘋の花弁絵を敷きうつしゝて習ったと言ふその胴模様は、それに払った努力にも拘らず、幼稚極るものであって、或は彼が企画したかも知れないと思はれる芸術的効果とは反対の結果をあらはし、正に狇猴にして冠するものと言ふべきである。勿論こけしとして相応はしき素朴さと簡素さからは遥かに遠ざかって居て、こけしとしては推賞すべきものではない。」として徹底的な酷評を加えた。

武井武雄はこれに対して「日本一として目の色を変える程のものではないにしても、これはまたこれで決して過小に評価すべきものではないと思います」 ( こけし通信)と釈明した。池袋にあった武井さんの蛍の塔が、戦災で灰塵に帰したことが、彼がこけし界から離れていった直接の原因であったとしても、加々美などで加えられた武井評価に対する間接的にではあるが容赦のない批判なども、こけし界に嫌気がさした一因であったろう。

戦後になると、やはりこれは本来のこけしとは違う、武井武雄は装飾芸術と云ったが、むしろ創作こけしの前駆的なものであったという解釈が主流になった。それと同時に伝統こけしとしてはほとんど話題に上らぬこけしとなった。

それでも「儀一郎トラウマ」はやはり幾分残っていて、あの鹿間時夫氏ですら「キミィ、そんなに悪く言うようなもんじゃありませんよ。」と言って、「こけし辞典」の伊藤儀一郎の項目はかなり熱を入れて執筆していた。少なくとも彼には「儀一郎を巡る蒐集家の業」と云ったものに強い共感があった。(木人子室 http://bokujinshi.info/santi/oyasu.htm )  #滝の原 #伊藤儀一郎 #子安

KokeshiWiki のいう土橋慶三が糾弾派というのは、上記「古計志加々美」の記述を指しているようだ。ちなみに「古計志加々美」は菊楓会同人の共著。その同人は土橋慶三(代表)、溝口三郎、西田峯吉、金森遵(たかし)である。

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最終更新日  2019年09月26日 06時03分53秒コメント(0) | コメントを書く
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