さら・シリウスという読みもの

さら・シリウスという読みもの

2026.09.10
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カテゴリ: 人生
​​​​​​​​​​​​​​




この頃になると、小さかった頃の夏休みを思い出します。

私は小学校1年生になって半年ばかり経ったその年の秋、佐世保から北九州へ引っ越して学校も転校しました。厳しいおばあちゃんでしたけど、私はおばあちゃんが大好きだったので、離れるのがとてもつらかったのを覚えています。それとジャニー……😭

北九州に引っ越して翌年の夏休み、私は誰にも何も言わずに駅へ行き、汽車に乗って一人で佐世保を目指しました。

持っていたのは、夏休み帳と筆箱とクレヨン、それに絵描き帳が入った袋。替えの下着も洋服も持っていません。汽車賃は、お年玉を貯めていた袋から出しました。

昔のローカル列車です。北九州から佐世保までは、八時間くらいかかったのではないかと思います。窓を開けたまま走る汽車だったので、佐世保に着いた頃には、鼻の穴が石炭のすすで真っ黒になっていました。


汽車に乗ってだいぶ経った頃、途中の駅から乗ってきたおばさんが声をかけてくれました。私が一人で乗っていることに気づいたのかどうかは、わかりません。

「お嬢ちゃん、どこば行くと? お母さんはどこにおんしゃると?」

「お母さんは、あっちの汽車に乗っとると。私はこっちに来て、外ば見とると」

私は、さも一人で景色を眺めるのが好きなロマンチストのような顔をして、こましゃくれて答えたのだと思います。


おばさんは「ふーん」と言いながら、「お嬢ちゃん、冷凍みかんば食べるね」と、赤い花模様の小さな袋からみかんを二つ取り出してくれました。


そういえば私は、朝ご飯を食べて家を出てから、お水も何も口にしていませんでした。うれしくて「ありがとう」と言うのもそこそこに、もらったみかんを大急ぎで食べました。


「おばちゃん、これ、おばあちゃんにお土産に持って行ってよか?」と私はもうひとつ残ってるみかんを見せながら言いました。

「よかよ!そんなら、これもやるけん。持っていきんさい」

おばさんは、袋の中をごそごそかき回すと、小さなセロファン紙に包まれたクッキーをくれました。

「えっ? おばちゃん、ほんなこつ、もろうてよかと?」

今でもモールなんかにある駄菓子屋を探せばあるかもしれません。

直径、2,3センチの小さなクッキー。
袋は10センチ四方くらいだったでしょうか。
私はジャニーにもお土産が出来たと思って、とっても嬉しくて、最上級の笑顔をおばさんに見せました❤️🎉😊

おばさんも、そんな私にニコニコしながら言いました。

「お嬢ちゃんは偉かとね。しっかりしとるとね。大きゅうなったら、どげな仕事ばするとやろね」

私は小さい頃から歌手になりたかったので、「私は美空ひばりより、うまか歌手になるとよ」と、声高らかに宣言しました。

私の大ボラ吹きは、小さい頃からだったようです🤣🤣🤣

おばさんは佐賀駅で降りました。私は開け放たれた汽車の窓から手を振りながら、おばさんの姿が見えなくなるまで「おばちゃん、ありがとう」と言い続けました。

もう六十年以上も前のことなのに、冷凍みかんとクッキーが入っていた赤い花模様の小さな袋と、そのおばさんの顔と、鼻の横にあった大きなほくろを私は今でも覚えています。名前も知らない人なのに、不思議ですね😄

佐世保駅に着くと、私は駅前にあったおばあちゃんの食堂まで走りました。食堂では、おばあちゃんと、私より10歳くらい上のいとこのお姉ちゃん、それからカメラマン志望だった母のお兄さんが働いていました。

二階にある食堂まで、とことこと階段を上がっていくと、おばあちゃんが洗い物の手を止めて、「さちこ、一人で来たとね」と目を丸くしました。


「うん。夏休みになったけん、一人で来たと」


私はおばあちゃんに顔を見せて、冷凍ミカンを渡した後、おばあちゃんの家のある町まで走りました。
バスで、六駅か七駅あったと思います。

息を切らせて、坂道をどんどん上がって、おばあちゃんの家の前に行くとジャニーが玄関の前に寝そべっていました。


「ジャニー! ジャニー!」






肩すかしをくらったジャニーは私の足元に伏せをして、私を見上げて「クーン」とひと声鳴いて、嬉しそうにしっぽをぶん回しています。


それから私はそのまま、玄関の前の三段ぐらいあった階段の一番上に座って、ジャニーと並んで一緒にクッキーを食べたのです。


ジャニーは、私が倒れそうになるくらい体をすり寄せてきて、本当に嬉しそうでした😍
その頃の写真を見ると、体の大きさが同じくらいだったので、当たり前ですよね!(^^)!、


それから夏休みが終わるまでの約四十日間、私はおばあちゃんのところに居候しました。


かわいい孫が一人で八時間も汽車に乗ってきたのだから、少しくらい甘やかしてくれてもよさそうなものですけれど、おばあちゃんはそんな甘ちゃんではありません。小学生の私にも掃除をさせたり、食堂の手伝いもさせました。

部屋を掃除するときには、そばでじっと見張りながら、「さちこ、四角い部屋ば、丸く掃いたらいけんばい」と注意します。小学二年生のいたいけな子供にそんなこと言いますか?普通😱

でも、食堂を手伝うと、一日五十円もらえました。私がよくやらされていたのは、かき氷の氷かきです。


四角い氷をかき氷の機械にセットして、左手で器を回しながら、右手でハンドルを回します。落ちてくる氷を器で受け、蜜をかければ出来上がり。難しい仕事ではないけれど、台が少し高かったので、私はいつも背伸びをしながら氷をかいていました。

後で聞いた話ですが、私より一歳年上のいとこも食堂を手伝っていて、氷かきのハンドルを脇に引っかけて、脇の下をケガしたそうです。

私より少し背が高いのに、どうして氷かきのハンドルで脇の下を切ってしまったか……。

それが不思議で、しばらく頭から離れませんでした。おばあちゃんはそのことがあってから、私といとこに氷かきをさせなくなったようです。


そんな厳しいおばあちゃんでしたけれど、お風呂上がりには、扇風機の前で私の髪を乾かしてくれました。


北九州の家には扇風機がなかったので、火照った顔や体に当たる風が気持ちよくて、私はそれがとてもうれしかったのを覚えています。

そうそう、髪を乾かしてもらったことで、思い出しました。

おばあちゃんが私の髪を洗うときは、私をお風呂場に寝かせて、自分は正座をして、私の頭を膝の上に乗せました。そして、そのまま、ゆっくり髪を洗ってくれるのです。


私の母はそんなふうに髪を洗ってくれたことがなかったので、私はなんだか恥ずかしいような、嬉しいような、妙な気持ちでした。


おばあちゃんがシャンプーを手に取る間、薄目を開けて下からこっそりおばあちゃんの顔を見ます。
大きなおっぱいの下から見えるおばあちゃんの顔は、それはそれは優しい顔をしていました。
いつもの厳しいおばあちゃんとは、まるで別人😅


日頃は商売のことや、居候(私、一歳上のいとこと一歳下のいとこの姉妹、時折押しかけてくる祖母の弟)食堂を手伝っている私の母の兄、私の十歳年上のいとこと、皆の暮らしを支えなければという責任があの気難しい顔を作り上げていたのかもしれません😖


ちなみにどうでもいいことですが、私も母と祖母ほどではないけれど、若い頃少しはバストに自信がありました(下記短歌)。


そんなこんなで、私は毎年、夏になると佐世保へ行っていました。なぜか冬には行かなかったんですよね。きっと、冬休みが短かったからでしょう。
ただ、翌年の小学校三年になった夏休みの夏、私がまた佐世保に行ったとき、なぜかジャニーの姿がありませんでした。

私は近くの公園や、いつも一緒に登っていた裏山にも探しに行きました。それでもジャニーはどこにもいなくて、泣きながら家に戻りました。

けれど、ジャニーがいないわけを、おばあちゃんにも誰にも聞くことができませんでした。

これは、またの機会に書くつもりです。



短歌(破調) 🤣🤣🤣
第4巻・70歳の少女短歌より
トランジスター
グラマーと
言われた昔 
今はただ 
ちいさいだけのババ
注※トランジスターグラマーとは小柄だけど、バストやヒップの大きい女性の事





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Last updated  2026.09.10 17:05:04
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