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では、1913年、ロンドンで書かれた
エルザ・バーカーの序文の中から抜粋


**************************************

 昨年パリに滞在していたある晩、わたしは鉛筆を手にして文章を書きたいという激しい衝動に襲われたが、自分がなにを書こうとしているのかまったくわからなかった。その衝動にはさからえず、わたしの手はまるで何者かに強制されたように鉛筆をとると、人間の本性に関するみごとな文を綴り、そのあとに“X“と署名した。
 文章の趣旨ははっきりしていたものの、この署名は謎だった。
 翌日、その文を友人に見せ、“X”という署名に心当たりがあるかときいてみた。
「あら」と友人は言った。「これは、わたしがいつも――さんと呼んでいるあの人のことよ。知らなかったの?」
 わたしは知らなかった。



 わたしの知る限りでは、ヨーロッパで彼の訃報をきいたのはわたしが一番早かったと思う。そのあとすぐ例の友人に電話して、“X”が亡くなったことを知らせた。彼女は驚いた様子もなく、このあいだ“X”の手紙を見せられたとき、それはもうはっきり感じていたのよ、あなたには教えなかったけど、と言った。
 当然ながら、わたしはこの異様な事件に強い印象を受けた。


 アメリカから――氏の訃報が届いてまもないある晩、わたしは“X”の正体を教えてくれた友人と話をしていた。そのとき、もし彼にその力があれば、また彼のために文章を書いてあげてはどうか、と勧められた。


 “X”は並々ならぬ人物だった。七十歳近い高名な弁護士で、哲学に造詣が深く、多くの著作があり、彼を知る者はだれもがその純粋な理想と情熱に感銘を受けた。家が遠かったので、わたしは彼にたまにしか会えなかった。死後の意識について彼と話し合った覚えはない。


 これらの手紙にわたしの序文をつけて出版しないかと最初にもちかけられたときは、あまり乗り気ではなかった。すでに数冊の本を出し、それが多少なりとも世に知られていたので、物書きとしての評判を落としたくないというささやかな虚栄心があったからだ。


 全体の三分の二にあたる手紙を書き終えたころだろうか、この問題はようやく決着がついた。もしこの書簡集を出版するのであれば序文は正直に書き、メッセージを受けたときの状況を正確に説明すべきだと意を決したのだ。


 実際の筆記の作業は十一か月以上に及んだ。次は編集だ。どこを省き、どこを残すか?結局、ほとんどの部分をそのまま残し“X”やわたしや“X”の友人たちの私事にふれた箇所だけ削除することにした。つけ加えたところはまったくない。


 “X”の文章はたいへん口語的な部分もあり、また法律の専門用語やアメリカの俗語を使っていたりもする。親しい友人にあてた手紙のように、話が急に飛び、それがまた前ぶれもなくもとの話題に戻っていることも多い。


 この本が、肉体の死後も魂が生き続けることの証拠になるかどうかは、それぞれの読者が、読者自身の性格、経験、それにこの本の中身を信じるか否かによって判断することになると思う。


 これらの手紙を読んでわたし自身がどう変わったかというと、いままで心にひそんでいた死への恐怖が完全に消え、不死を信じる気持が強まり、死後の生が、太陽のもとにあるこの生と同じくらいリアルで生き生きしたものに思えるようになった。これらの手紙がわたしに与えてくれた不死という至福の感覚を、この本の読者が一人でも感じてくれれば、苦労したかいがあったというものだ。


**************************************






彼女は最初、その自動書記を喜々としてやっていたわけではなく、逆にこのやり方に嫌悪感がつのっていたそうです。でも続けたのは、もし、“X”が本当にこの世と交流したいと望んでいるのなら、彼を手伝えるのは素晴らしい特権だと友人に説得されたにすぎないからだとしています。

出版の話が来た時、あいつは変わっている、奇人だといわれるのがいやだったので、序文だけは書き、自分の目の前で自動書記によって書かれたものだ、ということにして出版しようとしました。

しかし、それでは読者を欺くことであり、そもそもだれが自動書記をしたのかにも問題がいってしまう。彼の死を知らないうちに自動書記していることから、潜在意識が作り出したという説はとれなくなる。

最終的に、すべての手紙を書き終えるころ、あったことを正直に書き、出版することを決意したのです。




上に書いた序文の抜粋最後の、これらの手紙を読んでわたし自身が~ の文が、私のこの本の感想をすべて語ってくれています。





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Last updated  2007.12.09 07:04:41
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