ひーちゃんのゼミナール 名古屋産業大学(現代ビジネス学科)・大学院環境マネジメント研究科)現代の社会・経済・環境・芸能・スポーツ・宇宙

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2019.07.26
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カテゴリ: 推理小説
お断り この推理小説はフィクションであり、登場人物と団体等は実在のものと一切関係がありません。

 藤堂麻里矢は、横浜のホテルの窓からパノラマのようにひろがる横浜港を眺めていた。「ディナーショーのお客様は、満足してくれたかしら」いつものように湧き出てくる何気ない不安を鎮めようと、赤ワインでのどを潤わせながら自問自答した。2部構成のディナーショーは隔月でこのホテルで催されており、10年にもわたって開催されている。なじみの客が多く、藤堂麻里矢の父親の藤堂輝彦のファンであることから、娘の麻里矢を自然に大切に思うファンが多かった。レコード会社に所属している父親は、がん治療のためにしばらく一線から退いている。
「皆さん、今晩はどうもありがとうございました。父親の経過はとてもよくて、幸い転移もなく、体力がついたら再び皆様方へご挨拶したいと申しております」
麻里矢の報告に、こじんまりとしたライブ会場の一同、
「おーっ」
と感嘆のため息をついた。そして午後10時半、ディナーショーは成功裏に終わった。
 11階の部屋から見える横浜港は、霧に覆われているようだった。真下に見える氷川丸のマストの赤い照明が煙って見えた。ポツダム宣言受諾後、マッカーサー元帥が厚木飛行場へ到着し、飛行機のタラップを降りて投宿したホテル・ニューグランドの新館から、藤堂麻里矢は充実した歌手生活の感動の余韻に浸っていた。長い梅雨空のもと、滅入った空気も、このすばらしい夜景によって一気に晴れて行った。梅雨明けは間近かだった。

 眼下の山下公園には、ところどころ照明があり、バラの花が咲いているのがぼんやりと見えたが、人通りはなかった。湾内の波も静かだった。
「こんな時刻に、変だな・・・」

確か、黒と赤。
 麻里矢は、残ったワインを口にした。
(つづく)

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最終更新日  2021.07.01 13:19:49


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