ひーちゃんのゼミナール 名古屋産業大学(現代ビジネス学科)・大学院環境マネジメント研究科)現代の社会・経済・環境・芸能・スポーツ・宇宙

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2019.07.29
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カテゴリ: 推理小説
お断り この推理小説はフィクションであり、登場人物及び団体等は実在のものと一切関係がありません。

 藤堂麻里矢は、ホテルニューグランドで軽くシャワーを浴びて、テレビのリモコンに手を伸ばした。お笑い番組をやっている。何か事件があったようだ。お笑い芸人がカメラの前で何か釈明している。質問者はテレビ局のレポーターだ。「噂されている反社との関係はいつ頃からあったのですか」「記憶にございません」などとやり取りが続いている。興味がなかったので、旅番組に切り替えた。そして、窓のカーテンの自動開閉ボタンを押すと、厚手のグレーのカーテンが、ゆっくりと閉じ始めた。
 しかし、その白いはずのカーテンが、薄く赤色に染まっているのに気がついて、ボタンから指を離して窓に近づいた。赤く染まって見えたのは、予想通り、車のランプの点滅だった。下を覗き込むと、数台のパトカーが、赤色灯を点滅させて道路の海側に停まっていた。まさかと思って、麻里矢は岸壁の方に視線を移すと、懐中電灯を持った黒い人影が蠢くのを認めた。
 麻里矢は、同じホテルの階下に宿泊しているマネジャーに電話をかけた。
「まだおきているかしら」
 マネジャーはすぐに出た。
「ああ麻里矢さん、起きてらっしゃったのですか? 大変ですよ」
 幸田友里恵というそのマネジャーは、興奮した口調で答えた。麻里矢は、下の道路の歩道から上を見上げているのが幸田友里恵だと分かった。手を振っている。野次馬をやっているようだ。20代の彼女は好奇心に満ちている。よく仕事のできる優秀なマネジャーだ。


「男性の殺害水死体が発見されました。通りかかったあの方が第一発見者なのですが、あなた方は何か見ませんでしたか? 背中をナイフでひとつきにされています」
 発見者はホテルの宿泊者で、酔い醒ましに仲間と散歩をしていたところ、死体が浮かんでいるのを見つけてすぐに通報した。辺りには誰もいなかったという。夏警部は、近くにいた幸田友里恵に尋ねた。
「私は部屋でテレビを見ていたので何も分かりません」
 そう答えると、ロビーのエレベーターから藤堂麻里矢が出てきた。
「あ、麻里矢さん」
といって、幸田は麻里矢の耳元へ囁いた。
「つい今しがた岸壁で男性の水死体が上がったそうです」
 夏警部は、見覚えのある藤堂麻里矢に驚いた様子を見せたが、早速質問に入った。
 「持っていた名刺から、東京の芸能プロダクション関係のマネジャーをしています」
 藤堂麻里矢は、以前、ある事件で夏警部に世話になっていた。殺人現場で昔話は出来ないので、麻里矢は軽く会釈をして、早速、見たことを答えた。
「今から30分か40分前ですが、11階の私の部屋から下を見ると、傘を挿した二人連れが歩いていました。それで少したってからもう一度下を見たら、傘は一人だけになって、何か急いだ様子で横浜駅の方へ消えていきました。それで変だなとは思ったのですが、そのあとはシャワーを浴びました。」

警部の問いに、
「ええ、海側にいた人が黒っぽい傘で、こちら側の人が赤だったように記憶しています」
 麻里矢は答えた。被害者の持ち物はビジネスバッグ一つで、スマホとスケジュール帳が見つからない他は、持ち去られた形跡はなかった。スマホとスケジュール帳に付き合いの形跡が残されているのだろう。
「赤い傘の方は何か特徴はありませんでしたか?」
「真上から見ていたので、ただ傘が動くのしか見えませんでした。背丈は、傘の位置からすると同じくらいだったと思います」

 夏警部は翌日、被害者のワールドエンターテイメントという芸能プロダクションを訪ねることにして、家族に連絡を取って現状を保存して引き上げた。家族は死体が本人であることを認めた。
​ (つづく) ​

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最終更新日  2021.07.01 13:19:28


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