草加の爺の親世代へ対するボヤキ

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2016年01月17日
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           第 三十五 回 目





  私は平成27年の夏を泉鏡花の諸作品とD .H .ローレンスの「チャタレイ婦人の恋人」の原書での熟読三昧で過

ごしております。勿論、お世話になっている学習塾での夏期講習をそれなりにカバーしながらの作業でありますが。そ

れと申しますのが、諸事情で昨年までのスケジュールの半分以下の分量で、塾での仕事が事足りるように成ったお蔭な

のでして…。この自然の流れも、例によって例の如くに、偉大なる演出者がその様に「取り計らって下さった」からで

ありますよ、全く、実際。― 私自身は現在では、かなり慣れてきておりますので、不思議とも殊更らしく感じないの

でありますが、不思議といえばこれ程の「不思議」も無いので、唯唯、只管、襟を正して「指示」に従い、己のベスト

を盡すのみと自身に言い聞かせている昨今でありまして…。


 それは扠措きまして、泉鏡花の魅力でありますが、日本女性の限りない魅力が彼の全作品に、見事に定着されている



どが受け継がれてはいない、ように私・草加の爺には思われてならない。尤も、鏡花が描くところの女性たちは例外な

く和服を見事に着こなして居る。伝統の和服でしか表現不可能な所作や情感その他。なにも現代的な、西洋伝来のファ

ッションがダメだなどと、駄々を捏ねるつもりは毛頭ないのですが、外見とそれに見合った感情や微妙な心の張り、そ

して得も言われぬ色気…。またまた、此処で非常に恐縮な「惚気話」をお許し下さい。大分以前のことでありますが、

私の家内が都内の高級料亭の仲居を勤めていた頃のこと。夜もだいぶ更けた頃に、仕事を終える時刻を見計らって料亭

の近くの寿司店で待機している私のところに、和服姿のままで家内が 恥じらいを見せながら やって来たのでした。

聞けば、同僚から「とても素敵だから」旦那さんに見せてお上げなさい、と唆されての事だとか。「男勝り」の家内

が、その時ばかりは上品で優雅な 溢れるばかりの色気と女らしさ を、巧まずして演出していたことが今だに瞼に強

く灼きついています、はい。

 ここで鏡花の戯曲「天守物語」の一節を引用致します―


    圖書・ずしよ、猶予 (ためら)はず夫人に近づき、手をつく。





圖書 はつ、夜陰と申し、再度左右・さう を騒がせ、まことに恐入りました。


夫人 何しに来ました。


圖書 御天守の三階中壇・ちゅうだん まで戻りますと、鳶ばかり大きさの、野衾・のぶすま かと存じます、大蝙蝠

の黒い翼に、燈・ともしび を煽・あふ ぎ消されまして、いかにとも、進退度・ど を失ひましたにより、灯・ひ 

を頂きに参りました。





圖書 針ばかり片割月・かたわれづき の影もささず、下に向かへば眞の暗黒・やみ。男が、足を踏みはづし、壇を

轉・ころ がり落ちまして、不具・かたは になどなりましては、生効・いきがひ もないと存じます。上を見れば五

重の此処より、幽・かすか にお燈・あかり がさしました。お咎めを以つて生命・いのち をめされうとも、男とい

たし、階段・はしご から落ちて怪我をするよりはと存じ、御戒・おんいましめ をも憚らず推参・すいさん いたし

てございます。


夫人 (莞爾・につこり と笑・ゑ む)ああ、爽やかなお心、そして、貴方・あなた はお勇ましい。燈・あかり 

を點・つ けて上げませうね。(座を寄す。)


圖書 いや、お手づからは恐れ多い。私・わたくし が。


夫人 否々・いえいえ、此の燈は、明星、北斗星、龍の燈、玉の光もおなじこと、お前の手では、蝋燭・ろふそく に

は點・つ きません。


圖書 はゝッ。(瞳を凝らす。)


    夫人、世話めかしく、雪洞・ぼんぼり の蠟・らふ を抜き、短檠・たんけい の灯を移す。燭・しょく を

とつて、熟・じつ と圖書の面・おもて を視る、恍惚・うつとり とす。


夫人 (蝋燭を手にしたるまま)歸・かへ したくなく成つた。もう歸へすまいと私は思ふ。


 魔界の女王様とでも称すべき富姫が人間の若き鷹匠・姫川圖書之助に愛を告白する件ですね。これ程に堂々として、

しかも女性らしさの極限を示している描写には、ただただ感嘆の一語でありますよ、実に。これは現代の設定では表現

不可能でありましょう。


 西洋流の 露出 するマリリンモンロー的なお色気にも悩殺されますが、その対極を行く、純和風の 包み隠す


 奥床しい女性の魅力には、男たるもの抗する手立てが見つかりません、実際の話が。








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最終更新日  2016年01月17日 18時22分06秒
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