戦国ジジイ・りりのブログ

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2015年02月22日
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カテゴリ: 旅日記(近畿)
叡山の七不思議や「魔所」についてはここまでの記事で折にふれ

覚えておられるでしょうか。

「魔所」がその名にふさわしい霊的な場所を指すのに対し、
「地獄」はそんなおどろおどろしいものではなく、あくまで観念的な意味でのもの。
ま、見方によっては現実的な「地獄」の方が「魔所」より怖いのかもしれませんが。

で、「最も澄む男」が眠る、山内で最も聖なる場所とされる浄土院は、
実は「叡山三大地獄」のひとつでもあります。
その話の前に、まずは前回の解説にも出てきた



「最澄の真影に侍す」というところからくる役の侍真は、
現在では12年という長いお勤め期間が設定されている。
が、12年の籠山修行はもともと最澄が決めたもので、
侍真のためのルールという訳ではなかったし、
浄土院ができた当初から侍真が現在のような形でお勤めに励んでいた訳でもない。

長い叡山の歴史の中では持戒がゆるくなっていった時期もあったようだけど、
江戸中期、一部の僧から戒律復興運動が起こった。
その頃には12年籠山修行が絶えてからかなり長い期間が経過していたようで、
復興運動の一環として12年籠山制の復活も試みられた。

その時、浄土院にはちょうど侍真がいなかったそうなので、
12年籠山制と侍真制の2つをドッキングさせて、


侍真には誰でもなれるものじゃない。
仮にわたくしが最澄萌え~で今すぐ頭をマルコメ君にして

「最澄様に12年お仕えしま~す!」

と宣言したところで、無理です。

『比叡山 その歴史と文化を訪ねて』によると、
まず侍真になるには浄土院で毎日3千回の五体投地での礼拝を続けなければならない。

そのことを現職の侍真に認めてもらうのが最初のダンジョン。

そして戒壇院において自誓受戒をして、ようやく侍真の資格を得る。
同時に、この時から12年の侍真生活が始まる。

「好相を感得する」と一口に言っても一種のさとりのようなものだろうし、
当然個人差があるものと思われる。
『伝教大師最澄の寺を歩く』(比叡山延暦寺監修/JTBパブリッシング)で紹介される
平成19年時点での現職の侍真さんは感得するまでに10年かかったそうな。
感得すればそのまま受戒を経て12年籠山に突入するから、
実際は12年ではなく好相を感得するまでをプラスした期間が
侍真関連での修行期間となる。

晴れて各ダンジョンをクリアして侍真になれたとして、
当然そこがゴールじゃない。
ここからがラスボス・・・いへ、最澄たんに文字通り侍る生活の始まり。

12年浄土院にこもるってどんなでしょう・・・
生まれたばかりの赤ちゃんが小学校を卒業するまでの期間ですよ。

 【比叡山での暮らしの厳しさは、論・湿・寒・貧という言葉で表わされる。
  論は論議の厳しさであり、山深い谷あいの毎日は、じめじめとして寒さも
  ひとしおであり、暮らし向きはあくまで質素、ということだが、浄土院のある
  東塔西谷は、夏の日中でもあまり陽がささないうえに、周囲には湧水地も多く、
  朝夕は霧が立ち込めるなど、その寒さ、湿気の多さは、僧侶の健康を苛む
  ほどだという。】
  (『伝教大師最澄の寺を歩く』より)

今回、3日間山内を歩いた中で主要堂宇はロクに観ませんでしたが、
観光客が集まる主要堂宇以外の場所に2つ、大のお気に入りがありました。
2つのうちの1つがこの浄土院で、もう1つは魔所・・・
地獄と魔所が山内きっての個人的お気に入りだなんて、
後から考えて自分でも笑いましたが、何ていうのかな、
魂が無性に惹かれるというか、身体の力が抜けて動きたくなくなるような、
とにかく理屈や言葉では説明できない感覚。

これまでの旅でも新高山城とか、京の相国寺の法堂(はっとう)だとか
「ここから動きたくない」という場所はあるにはありましたが、
そこまで惹かれる場所というのは数えるほどしかない。
それが、叡山には2つもそういう場所があったんです。
今回はあまり時間がなくて山内の一部しか歩いてませんが、
探せばもっと見つかるかもしれない。

まあ、浄土院は山中のへんぴな場所というほどでもないし、
さすがに伝教大師の廟というだけあって来る人もそれなりにはいるものの、
塔の中心部ほど人は来ない。
それにオフシーズンだしね。

で、人がほとんど来ない静寂の中でまったりして、
これから西塔を見て回る予定だとゆーのにかなり長居をした訳ですが、
隣のスポットとあわせて1時間ほどいるうち、身体はかなり冷えた。

人生初の叡山訪問も真冬の寒い中だったので、叡山の寒さを覚えていたわたくしは
登山での運動量と山内での寒さを考慮したウェアを選んだ。
だからこそ、門前で脇を通り過ぎていったバサバサのスカートの
不思議なお姉さんに違和感を感じたんだけどね。
叡山の寒さを知らないのんきな観光客かな~と思って見ていたのだ。

「三塔十六谷」の「谷」についての延暦寺の説明については
「叡山攻め(82)」 で紹介してますが、東塔西谷でも浄土院のあるこの場所は
文字通りの「谷」にある。

低い場所には冷気も湿気もたまるし、確かに侍真は寒・湿に
耐えなければならないな~と現地で思った。


さて、侍真の1日のスケジュールは、まず午前3時半に起床。
拝殿の扉を開くところから1日が始まる。

真言宗では「空海たんは高野山奥の院で今も生きている」とされているのは
有名な話ですが、浄土院でも最澄たんは生きているとされ、
午前5時と午前10時に最澄たんのために侍真が一汁一菜のお食事を供する。
その30分後にはお食事を下げて、侍真がおこぼれをいただく。
侍真の食事はこれだけ。

え~、なんだったかでこれについて「奥ゆかしい風習」みたいに書いてるのを
読んだんだけど、「午後に食事をしない」というのはインド仏教からの伝統で、
これは暑い国のインドならではのルールだと思う。

日中は1日3回の勤行。
午後5時に拝殿の戸を閉めて、夜9時に就寝。
休みは1日もない。
1日の間で休むヒマもない。

で浄土院の「地獄」ですが、これは日中の「おさんどん」や勤行の合間に行われる
お掃除のことを指す。
門内の境内エリアから周辺一帯までてってーてきに掃除に努めるので、
「掃除地獄」と呼ばれるそうな。

浄土院はわたくしのオススメのスポットですが、
もしこれから浄土院に行かれる方がいたら、「掃除地獄」のことは
ぜひ頭にとどめておいて、現地では地獄に奉仕する侍真さんへの
配慮をお願いします。



それでは、現地紹介に戻ります。

正面の門は開かれてはいるものの、柵が置いてあって中には入れない。
この柵は最澄たんの命日である6月4日に行われる「長講会」の時だけ開かれる。

自分の大きな夢が叶うところを見ずに死んだ最澄たんだったが、
弟子たちの懸命の奔走により死後にその願いは叶えられる。
それで、最澄たんの一周忌の命日に弟子たちが法要を行ったのが
長講会の始まりだそうな。

特別な長講会の日、浄土院はいつも以上に掃き清められて
正面の門から御供物が運び入れられる。
長講会に参加するのは天台座主および各門跡寺院の大寺の高僧たち20人。

これらの僧が廟堂へ入るに先だって、霊前への献茶が行われる。
日本に茶を広めたのは栄西さんだというイメージが強いけど、
最澄たんが留学先の唐から茶の実を持ち帰って日本で植えたのが
日本で初の茶の栽培だそうな。

山麓にはその茶の歴史を持つ日吉茶園があり、
長講会の時にはこの茶園の一番茶が大津市の代表によって献じられる
ならわしだという。

お茶の後には正装に身を包んだ天台の高僧たちが入堂し、
声明・論議・座主の「おしらべ」と続いて約3時間の法要が終わる。
「法要」というと読経がメインのイベントのようにも思うけど、
もともと最澄が始めた「法華十講」を引き継いだものであり、
さらに学僧の勉学の向上のために良源さんが論議をも取り入れたものらしい。

が、長講会の重要なのはこれだけじゃなくて、一旦控え所へ下がって
衣装を改めた出仕者がふたたび廟堂へ入ると、天台座主から重要な発表が行われる。
それが、その年に行われる 「戸津説法」 の説法者の発表。

戸津説法は最澄たんに代わって説法するという重要な役どころでもあり、
天台座主への通過点でもある。
この発表が浄土院の廟堂で行われるということは、
天台の大寺をあずかる高僧への通達である一方、
最澄たんへの報告も兼ねているということだろう。

長い歴史を引き継ぐ叡山らしい、数々の伝統の詰まったイベントのようです。

しかしだね、現地に立つわたくしは困った。
これじゃ中に入れないじゃん・・・
門は開いてるからいちおう中の様子は覗けるけど、
ここから見るだけえ~!?

う~ん、入れないなら仕方ないけど、
ここ楽しみにしてたのにな・・・

残念無念でいっぱいで進行方向の道の方を眺めると、


叡山2・東塔・浄土院98


・・・なんか、奥の小さな扉が開いてる気がする。 
ので先へ進んでみると、


叡山2・東塔・浄土院2


うおっしゃあああああ~!! (←ガッツポーズ取った)
ありがとう、ひろのん



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最終更新日  2015年02月22日 22時18分21秒


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