戦国ジジイ・りりのブログ

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2016年04月07日
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カテゴリ: 城(東北・関東)
地方の戦国期の国人衆などと比べて、江戸は史料が充実しており
また比較的手に入れやすいので、興味のおもむくままに追っていくと
時間がいくらあっても足りない・・・
研究に専念するために断筆をした杉浦日向子先生の気持ちが本当によくわかります。

さて、顔のパーツであと残っているのは目と鼻と口。

目は先行して 「(26)」 で少し書いてますが、
化粧について書きだしてから色んな絵を観ていたら、
お江の姉の初ちゃんが二重に描かれていることに初めて気がついた。

お江が二重かはわからなかったけど、浅井三姉妹の長女・茶々も二重に描かれている。
ので、必ずしも日本人に二重が少なかったという訳ではなさそうだけど、
江戸期には一重の涼しげできりっとした細目が好まれたということかもしれない。

ただ、あまりに小さいのもイマイチだったようで、そういう場合の修正法は

生まれつき目が小さくて、目を開けてるように見えねえ奴がいるが、それを隠そうとして
 無理に目をみはれば黒目が上に行くばかりで空を見ているみたいで見苦しいもんだ。
 こういう目をフツーに見せるには、化粧法と気の付け方なのさ。

 まず、フツーに化粧をしてから上まぶたのまつ毛のあたりを湿らせた手ぬぐいでぬぐい、
 うすーく紅をさす。こうするとちょっとは良く見えるもんだ。で、目は向こうをはるかに
 見るつもりではっしりと開けること。ただ、目をみはるとコワい目になって怒ってる
 顔に見えちまうから、気を付けるんだぜ。


と佐山半七丸はアドバイスしている。

まあ、大きいの小さいの言ってもガイジンからすれば
日本人の目はどれも同じように見えたようで、ツュンベリーは

この国民の眼は、中国人と同様に広く知られている。それは多民族のように円形ではなく、
  楕円形で細く、ずっと深く窪んでおり、ほとんど目を細めているように見える。
  他の点では、瞳は褐色というよりはむしろ黒色で、瞼は大きな目尻ぎわに深い線を
  かたち造っていて目つきが鋭くなり、他民族とはっきり区別できる独特な風貌を
  持っている。


と一律細目だと言っている。

『都風俗化粧伝』にはほかに垂れ目、つり目の修正法も載ってるんだけど、いずれも紅を使う。

単純な色あいを色々工夫して効果的に使っていたことがわかる。


で、鼻。
ツュンベリーから見た日本人の鼻は、

鼻は低いとは言えないがしかし太くて短い。

だそうだが、平均して日本人の鼻はお世辞にも高いとは言えないだろう。

気になったんだろうな。

しかし、当の日本人には自分たちの鼻が低いという自覚があったらしく、
半七丸が紹介している鼻についての2つの項目は、いずれも低い鼻をなんとかする方法。
高い鼻を低く見せる方法は載っていない。

2つの項目のうちの1つは化粧法で、これは鼻すじを他より白く塗ることで
鼻すじを通して高く見せるというもの。
もうひとつは根本的な解決法で、「鼻を高くするおまじない」だと言っている。
半七丸はまず、この方法の霊験をおごそかにうんぬんして、具体的な方法を説明する。

厠に入って心を静め、念仏でも題目でも各自の信じる方を唱えながら、右の親指と
  人指し指、中指の3本の指で鼻の両肩の真ん中の下に当て、鼻柱を鼻先まで
  高くもみあげるように挟んで何度もやれば自然と鼻は高くなる。この奇妙のまじない、
  絶対に疑うんじゃねーぜ。


つまりマッサージしろと言っていて、アン・シャーリーの洗濯バサミよりはいいと思うけど、
トイレで「なんまんだ~」か「なんみょ~ほ~れんげ~きょ~」を唱えながらというところが
仏教徒らしくて笑える。
あるいは、人差し指と中指で鼻の両脇を、両眉の下の方から小鼻にかけて押し下げても
効果があると言っている。
低い鼻でお悩みの方は、お試しくださいませませ。


顔の最後は口。
口にはもちろん紅を塗る。
紅は口だけではなく、アイシャドウやチークとしても使われたし、
爪紅(つまべに)といってマニキュアとしても使われたが、
頬紅は享保以降は遊女の真似をして使われなくなったという。

紅は紅花から採る。
産地によって製法に違いがあるようだけど、『日本の化粧』に載っている製法を
引用してご紹介しましょう。

 【まず、朝早く、露のあるうちに摘みとった紅花をよく水洗いし、踏んで黄色素
 (サフロールイエロー)をもみ出す。赤い色素だけが残った紅花を花蒸籠(はなせろ)という
  箱に広げて、さらにむしろをかぶせて水分を補給しながら、約二日間日陰に置き腐熱
  させる。その後とり出してこねて、粘り気が出たものを丸めて自然乾燥すると紅餅になる。
  こうしてつくられた紅餅は、目方を計って包装され京都に送られた。】

当時は防腐剤などはないので、一年で最も寒いとされる寒中の丑の日に作られた紅が
良質だとされたそうな。

京に送られた紅餅は、各専門業者が紅を抽出して染料や口紅などに加工されたが、

 【紅を抽出する技術は大変に高度で、その製法は門外不出の秘伝とされていた。】
  (前掲書より)

だそうで、必然的に口紅のお値段も高くなる。
そのお高い紅を、大奥ではふんだんに使っていた。

紅を塗る時には、まず白粉で唇を白く塗りつぶす。
その上から紅を塗る訳だけど、口は小さい方が好まれたらしく、
生まれつき口がデカい人がそのまんま自前の唇に紅を塗ると
人を食ったような口になってしまうので、その場合は小さめに描く。
小さすぎる口の人は、自前の唇いっぱいに濃く紅を塗る。
一般的に当時は上唇は薄く、下唇には濃く紅を塗っていたらしい。

半七丸が伝授する大きな目を小さく見せるテクは、目の中に入るぐらいにまで
目の際に白粉を塗れというもので、目なんて中に入ればかなり吸収は早いし、
口だって一旦白粉で塗りつぶすのなら飲食時はもとより、
ちょっと唇を舐めたりするだけでもすぐ体内に取り込まれてしまうから、
当時の白粉の成分を考えると実にコワい話ですが、まあそれは置いといて。

「(24)」 で桂川甫周が正月の挨拶時に見た御台ちゃまの緋袴が
緋を通りこして黒く見えたという話を紹介してますが、口紅も同じような現象があり、
紅を塗って塗って塗りまくるとギラギラと玉虫色に輝く唇になったそうで、
ゼイタクしてた大奥では高価な紅をふんだんに使って
「笹色紅」と呼ばれる玉虫色の唇を輝かせていた。

が、高価な紅を沢山消費する笹色紅は庶民にはちと手が届かない。
それでも、庶民の間でも笹色紅は流行った。
なぜそれが可能だったのか、これも半七丸に教えてもらいましょう。

紅を濃く光らせるにはな、まず下地に墨を塗り、その上から紅を濃くつけるんだ。
 こうすると濃く見えて紅の色も青みがかって光るのさ。ただ、あんまり濃いと
 顔がコワく見えちまうので、ちょっと薄めにすると顔もやわらかに見えるし、
 おとなしく愛敬があるように見えていいぞ。
 あるいは、墨じゃなくて行灯にたまった油煙を採って筆で塗り、その上から紅を
 さすっていうテもあるぜ。


口に墨を塗るなんて、女性の化粧への執念を感じさせるような話だな

各パーツは大体こんなとこですが、江戸美人はその人に合った化粧をするだけではなく、
髪のお手入れや手足のお手入れのほか、歩き方や立ち居振る舞いなど
すべてにおいて心を砕いて美しさを保つことが求められる。

美人になるにはなかなか手間がかかったようですが、
手間暇かけてそういう努力をしたのはなにも女性だけの話ではない。
駿河でケンペルは

そのうえ私が黙って見逃すことができないのは、村の街道に沿ってたくさん並ぶ家の中に、
  9軒か10軒の立派な店構えの家があり、その前に10歳から12歳までの2、3人の
  少年たちが、きれいに着飾り化粧して、きちんと一列に並んで座っていたことである。
  彼らは婦人の姿をし、銭を払えば、神にそむくいやらしいやり方で、通りすがりの好色家の
  思いのままになった。いま述べた膏薬を店先に出して売っているのは、一種の言いのがれの
  ためで、不案内の者が邪推しないように、また事情を心得ている者には、大胆に少年たちと
  関係する機会を持ちやすくするためでもある。われわれ一行の指揮者である上奉行は、
  これまで一度も、宿舎に着いた時以外は、自分の乗物から下りなかったのに、気晴らしの
  ために半時間も少年たちの傍に腰を下ろしていた。

と男娼について書き留めている。
まあ、この時は上奉行がのんびり美少年に鼻の下を伸ばしていたおかげで
周辺をじっくり観察する時間ができたようなんだけど


さて、化粧については今回で終わりとしますが、少し文字数が残っているので、
『都風俗化粧伝』からいくつか面白い項目を紹介しましょう。

 ○小便をこらえる法
  青松葉(あおまつば)をよくもんで、へその中に入れておけば長く我慢できる。

 ○大小便をこらえる法
  急にもよおしたら、左の掌へ右の中指で、大便なら「大」の字を、小便なら「小」の
  字を書いて、3回なめる。ぴたっと止まる不思議なおまじないだそうな。

 ○髪を黒くし、つやを出す方法
  男女の抜けて落ちた髪を集めてよく洗い清め、干して胡麻の油で煎じつめ、鉢の中で
  乾いたものを細かくきざむ。それを油で練って髪につければ、髪は長く黒くなって
  つやが出ることウケアイだとさ。煎じつめられるほど落ちた黒髪を集めるのって
  大変だと思うけど(笑)。

 ○にわかに舌が腫れ痛むのを治す法
  釜の下についた鍋墨を酒で溶いて患部につける。

 ○耳から膿が出るのを治す法
  セミの抜け殻を黒焼きにして胡麻の油で溶いたものを粉にして、紙のこよりの
  先につけて耳に入れる。

 ○顔のシワをのばし、少女のように若やぐ薬の伝
  ブタの蹄を4つ洗い清め、米のとぎ汁で煮つめ、とろりとなったものを寝る時に塗り、
  翌朝米のとぎ汁で洗い落とす。これを毎晩繰り返せば半月で顔のシワはのび、
  きめが細かくなり、ツヤが出て若返ること少女のようである。

 ○涙が多く出るのを治す法
  塩を目にすりつけ、冷水で洗う。

こんなのが色々と載っている訳ですが、昔の人はチャレンジャーだなとつくづく思う。
ただ、結構現代に通じる方法もあって、顔のシワを伸ばしてチョ~若返る方法は
要するにコラーゲンのパックってことらしい。

まあでも、即戦力になるのは大小便をこらえる法ですかね
旅には青松葉を携帯せねばならんな。


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最終更新日  2016年04月08日 22時59分07秒


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