『先輩、そのルートで合ってますか?』

『先輩、そのルートで合ってますか?』

2026年08月16日
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「先輩」

「何?」

「この連載、5話目だけ読めばいいんじゃないですか?」

秋雄が新人を見た。

「なんで?」

「だって、最後にだいたい答えが出るじゃないですか」

「まあ、出ることもあるな」

「だったら最初から5話目を読めば早いですよね」

「いいんじゃない?」

新人が少し驚いた。

「いいんですか?」

「読む順番なんて、俺が決めることじゃないだろ」

「ですよね」

「5話目だけ読んで分かるなら、それでいいよ」

新人は少し得意そうな顔をした。

「やっぱりそうですよね」

「うん」

秋雄は頷いた。

「で、明日それ使える?」

新人の顔が止まった。

「……え?」

「読んだ答え。明日、自分で使える?」

「それは……」

「今日と同じ条件なら使えるかもしれないな」

「はい」

「でも、時間が違ったら?」

「変わるかもしれません」

「曜日が違ったら?」

「それも」

「天気が違ったら?」

「……変わりますね」

「じゃあ、どうする?」

新人は黙った。



秋雄が笑った。

「答えを先に知るのが悪いって言ってるんじゃないよ」

「はい」

「俺だって、分からない漢字があったら読み方だけ教えてほしいし」

「僕もです」

「パソコンの操作が分からなかったら?」

「やり方だけ早く教えてほしいです」

「だろ?」

「はい」

「答えだけで済むこともあるんだよ」



新人は少し考えた。

「でも、この仕事は違う?」

「違うことが多いかな」

「なんでです?」

「同じ場面が、あんまりないから」

「なるほど」

「昨日うまくいったことが、今日もうまくいくとは限らない」

「はい」

「俺がうまくいったことを、お前がそのままやってうまくいくとも限らない」

新人が秋雄を見た。

「じゃあ、先輩の話を聞いても意味ないじゃないですか」

「そうなる?」

「だって、同じようにやってもダメかもしれないんでしょ?」

「同じことをするために聞くならな」

「じゃあ、何を聞くんです?」

秋雄は少し考えた。

「なんで、そうしたのか」



新人が黙った。



「どこへ行ったかじゃなくて、なんでそこへ行ったのか」

「はい」

「待ったか、動いたかじゃなくて、なんでそう決めたのか」

「はい」

「それなら条件が変わっても、自分で考える材料にはなるだろ?」

新人は頷いた。

「なるほど」

「だから5話目だけ読んで、そこまで分かるなら」

「分かるなら?」

「俺は何も言わないよ」

新人が苦笑した。

「なんか言い方がずるいなあ」

「そう?」

「最初から読めって言われた方が、まだ素直に読めますよ」

「じゃあ、最初から読め」

「急に言うんですか」

二人で笑った。



答えだけ知りたい時はある。



読み方の分からない漢字。

パソコンの計算式。

スマートフォンの操作。



そんな時まで、

最初から全部勉強し直す必要はない。



でも、

判断の仕方まで知りたいなら、

最後に出てきた答えだけでは足りないことがある。



何を見たのか。

何を考えたのか。

どこで迷ったのか。

なぜ、その答えになったのか。



たぶん、

持って帰ってほしいのは、

そちらの方だ。



だから、

5話目から読んでも構わない。



ただし。



途中に何か落ちていても、

こちらは拾って届けませんので。



番外編 おわり








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最終更新日  2026年08月16日 00時00分06秒
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