第4話 見切ったあと、どこへ行く?
「先輩、昨日の続きですけど」
新人が言った。
「外れた時の話?」
「そうです」
「待つ理由がなくなったら動く」
「そこまでは分かりました」
新人は少し間を置いた。
「で、どこへ行くんです?」
秋雄は笑った。
「そこだよな」
「駅?」
「行くこともある」
「病院?」
「時間が合えば」
「繁華街?」
「それもある」
新人が眉をひそめた。
「結局どこなんです?」
「次に人が動きそうなところ」
秋雄は言った。
「人がいるところじゃなくて?」
「そこ、大事」
「違うんですか?」
「人がいるだけじゃ、タクシーには乗らないだろ」
新人が黙った。
「駅前に人がたくさんいても、みんな電車待ちかもしれない」
「はい」
「病院に人がいても、まだ診察が終わらないかもしれない」
「はい」
「繁華街に人がいても、今から店に入る時間かもしれない」
新人は頷いた。
「人が出てくるところを見る?」
「そう」
「これから移動が始まりそうなところ」
「そういうこと」
新人は少し考えた。
「じゃあ、今いる場所を見切ったら」
「うん」
「次に人が動きそうな場所へ行く」
「まずはそれでいい」
「まずは?」
「だって、そこに行ったから乗れるとは限らないだろ」
「またですか」
「まただよ」
秋雄は笑った。
「営業なんだから」
新人も苦笑した。
「でも、今までよりは少し分かります」
「何が?」
「ただ空車で走り回るのとは違う」
「そうだな」
「人が動きそうな場所を考えて移動する」
「うん」
「それで外れたら?」
「また考える」
新人がため息をついた。
「ずっとそれですね」
「ずっとそれだよ」
秋雄は言った。
「待つのも営業」
「動くのも営業」
「そう」
「じゃあ結局、止まってても走ってても考える?」
「そこは変わらないな」
新人は少し笑った。
「なんか面倒な仕事ですね」
「今さら気づいたのか」
二人で笑った。
しばらくして、新人が言った。
「でも先輩」
「ん?」
「こういうのって、どうやって覚えていくんです?」
秋雄は少し考えた。
「そこが最後の話だな」
「待機場所の覚え方?」
「場所だけじゃない」
「また増えるんですか?」
秋雄は笑った。
「五話目だけ読みに来る奴には、少し面倒なくらいでちょうどいいだろ」
つづく
明日10:00に更新
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