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2022.11.13
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テーマ: 法律(495)
カテゴリ: カテゴリ未分類
警察官は、集団による連続強盗事件の犯行グループの一員で ある疑いの濃厚な甲の容ぼうと、甲宅に常時出入りする者の容 ぼうを写真撮影してこれを被害者等に示し、犯人の特定を行お うと考えた。そこで、警察官は、甲宅向かいのビルの一室を借 り受け、望遠レンズを装着したカメラを設置するとともに、そ こから甲宅出入口付近の監視を継続し、自宅から路上に出てき た甲の容ぼうを撮影した。また、甲宅から出てきて路上を歩行 しているこの容ぼうも撮影した。

これらの写真撮影は適法か。

答案
第1 甲に対する写真撮影の処分は適法であるかという問いについて
1 結論 甲に対する写真撮影処分は適法である。
理由は下記で論ずる。
2 写真撮影という処分の性質について
(1) この点、検証とは、場所、物又は人について、強制的に形状、性質、存在の有無などを五感の作用を用いて明らかにすることにより、証拠を採取するものである。
(2) これを写真撮影についてみると、写真撮影は被写体のある時点の様態を写し取ることで、形状、性質、存在の有無を視覚的作用によって明らかにすることに証拠を採取するものである。

3 そうであれば、検証令状(218条1項)を得ずに、行われた当該写真撮影は、違法となり得るところ、当該写真撮影の強制処分(197条1項但し書き)の該当性が問題となる。
(1) 強制処分とは、有形力の行使の有無を問わず、憲法上重要な権利に強度の制約を与える処分である。
(2)これを本件写真撮影に検討する。
 ア この点について、確かに、本件写真撮影は、被疑者甲の容ぼうを無断で、撮影した上で、第三者に提示するものであるから、甲のプライバシー権を制約しうるものであることは否定できない。
 イ しかしながら、自宅から出てきて、公道を歩く様子を撮影したに過ぎず、公道を歩く様子とは、第三者に視認されることはある程度想定されるから、プライバシー権保護の要請の度合いも弱まり、強度の制約と評価できない。
したがって、本件写真撮影は、強制処分に該当せず、検証令状なしに行われたからといって、違法とすることはできない。
3 もっとも、強制処分に該当しないからと言う理由だけで、人権を制約しうるあらゆる行為を無制限に許していては、捜査機関による人権侵害が常態化を招いてしまう。
そうであれば、本件写真撮影は「必要な取調」(197条1項)にあたるのか、任意捜査(197条1項)の限界が問題となる。
(1)197条1項の趣旨とは、捜査機関に対して、必要かつ相当な処分を許容することをもって、真実の発見(1条)の実現に寄与する点に求められる。
もっとも、先述のように、本条は、真実の発見に必要だからといって、令状主義(憲法37条)や強制処分法定主義(197条1項但し書き)を潜脱するような脱法的捜査処分を許容することを認めるものではない。
そうであれば、自ずと捜査における処分には必要性に加えて、相当性が求められるものというべきである。

(2)これを本件について検討する。 
  ア 強盗罪の保護法益は、財産に加えて、身体生命であるところ、個人の尊厳を保障する上で、不可欠な法益である。
さらに、本件事案は、集団による連続犯であり、今後も発生の蓋然性が高いことから、①事件の社会的影響は極めて重大であるといえる。
  イ 次に、プライバシー権は、幸福追求権(憲法13条)に由来する人格的生存に必要不可欠な権利であるところ、本件写真撮影は、②重要な権利への制約と評価できる。
  ウ さて、先述のように、重要な権利への制約は認められるものの、強度の制約とまでは言えない。

そうであれば、被制約権利を保護する利益よりも公益を優先する利益が大きいものといえる。
したがって、本件写真撮影は任意処分として、許容される。
4 よって、結論は妥当である。
第2 問題後段の乙に対する写真撮影が適法であるかという問いについて。
1 問いに対する結論として、乙に対する写真撮影は適法である。
理由は下記で論ずる。
2 本件写真撮影についても、同様の規範が妥当し、乙が甲宅へ出入りし、かつ連続強盗事件への関与が疑われ、さらに撮影様態が公道を歩く様子を撮影したものである以上、任意処分として許容される。
3 よって、結論は妥当である。
    以上





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最終更新日  2022.11.13 00:59:44
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