シロクマの実家

シロクマの実家

2020.09.04
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カテゴリ: 無印CARRIES
第5運送…刃の命力


通路を突き進みながらゼノコードはアンジェラちゃんに聞いた。

「イレイズ?大した男じゃありませんよ。グシャナに媚びへつらうド三一(さんぴん)です」
「あそう」
「現在アジト内にはグシャナや幹部はいないようです」
アンジェラちゃんは周囲を見渡している。

「さすがの私、アンジェラちゃんでもグシャナや幹部連が相手だと分が悪いです。出会わない事を祈りましょう。―そう言う貴方は強いのですか?ボス・ゼノコード」
「吾輩?」
ゼノコードは自身を指さした。

「まあ戦闘は過去に齧った程度だけど」
「そうですか。まあいないよりはマシですね」
「おま、ひっどーい!」
「ところで」
アンジェラちゃんは振り向いて、ゼノコードの服装を上から下まで眺めた。

「何?」
「運送屋。ですか」
「あ、そうそう。吾輩新人のキャリナーッス」
ゼノコードは自慢気に胸を張った。

「へっ、運送屋ならますます戦闘力には期待できませんね」
「なんじゃい!!鼻で笑うな!!」
そんな中、二人は広い空間に出た。

「さっき盗賊に囲まれた場所か」
「ここは盗賊共の宴会場です。連中は略奪した食料や酒をここで楽しみます」
「そう言えば良い匂いがするね。食料の匂いか」
ぐおおおおおおおお!!がるるるるあああああああああ!!

「びいい!!」
ゼノコードは縮み上がった。
世にも恐ろしい怪物の咆哮。
そんな感じの音が空間全体に響き渡ったのだ。

「な、何スか!?まさか砂漠獣がここに潜んでいるのか!?ねえアンジェラちゃん!?ん?」
アンジェラちゃんに向き直ると、アンジェラちゃんが背を丸め、腹を押さえて静かになっていた。

「どったの」
「いえ別に」
アンジェラちゃんはスッと姿勢を戻し、歩き出 ぐああああああああああああああ!!ばるうううおおおおおおおああああああ!!
世にも恐ろしい怪物の咆哮的な音が、アンジェラちゃんから聞こえた。

「よもや…キミの腹の虫かね、今の音」
ゼノコードは顔を青くさせながら聞いた。

「一週間も何も食べていないので。腹の虫MAXになってしまったようですね」
アンジェラちゃんは冷静にそう答えた。

「何だ腹の虫MAXて。聞いた事ねえよそんな言葉」
「身体的には何の問題もありません。先を行きましょう」


「喋ったよね!?今、腹の虫MAXがハッキリ喋ったよね!?」
「ああもう、五月蝿いですね」
「いやいやお前程じゃねえから」
「問題ないと言っているでしょうが」
「うるせえから迷惑なんだっつの!!待ちな!!」
ゼノコードは周囲を見渡し、鳥の丸焼きを見つけた。
食べかけだがまだ肉がたっぷりと残っている。
アンジェラちゃんはそれを見るなり口から涎が滝のように流れ出て来た。

「これ食べなよ」
ゼノコードが笑顔で言うも、アンジェラちゃんは涎を拭いながらそっぽを向いた。

「…奴らの食べかけなんて、食べる気になりません」
がぼらあああああああああああああああ!!ぎゅおおおおあああああああああああい!!
まさかの地響きである。

「うるせえええええ!!お前の腹は虫じゃねえよ!!ドラゴンだよ!!プライド捨ててとっとと食えーッ!!」​​​​

・・・

ゼノコードが唖然としながら見守るのは、アンジェラちゃんの凄まじい食べっぷりである。
鳥の丸焼きを1分程度で骨だけにしたかと思えば、その辺に転がっていた腸詰め、大魚の燻製、果物にチーズを一気に口に詰め込み、更に樽に詰まった水に果実シロップを混ぜて一気に飲み干してしまった。

「げぇっぷ。腹八分目にします」
マジかコイツ。

「ホントに腹にドラゴン住んでんじゃね?」
「さて、宝物庫はあっちです」
アンジェラちゃんは口の食べかすを袖で拭きながら歩き出す。
ージャキッ!!
彼女の目の前に無数の銃口が突き付けられた。

「あら」
「呑気に飯を食ってるとは間抜けだな」
10数人の盗賊達がぞろぞろと通路から歩き出ていた。

「!」
「これだけの数で囲めばこっちのもんだ」
「ちょ…」
ゼノコードの背後にも盗賊達が並んでいる。

「一対一で敵わないからすぐに数でねじ伏せようとする。芸のない連中は嫌いです」
と、アンジェラちゃん。

「黙れ!大体お前、どうして運送屋の肩を持つんだ化け物女!!」
「大頭を狙うのに、そんな運送屋にまで頼るとは、とことん堕ちてやがるな!!」
「そちらほど堕ちてはいないと自負しています。ボス・ゼノコードは私の名付け親です。彼は仲間を救いたがっている。だから助けます」
アンジェラちゃんは盗賊達の罵声に物ともせずに切り返した。

「ちょりーっす、名付け親っすー」
ゼノコードが軽い調子でそう言った。

「俺達をなめてるな!!」
「もういい!!撃て!!」
盗賊達は激怒し、機関銃の引き金に指をかけた。

「丸腰相手に撃つなんて、とことん三下ですね」
アンジェラちゃんは素早く足元の地面を蹴った。

「叩きのめしてあげます」
砂煙が巻き上がり、近くの盗賊達の視界を奪った。

「うお!?」
驚く盗賊の内一人の足を、アンジェラちゃんは思い切り蹴り、体勢を崩させた。
膝をつく盗賊の顔面に勢いを付けて回し蹴りをお見舞いする。
左右に立つ盗賊が銃口を向ける。
アンジェラちゃんはその場から前方に宙返りをし、盗賊達の背後へ着地した。

「え?!」
「あっ!!」
振り向こうとする盗賊二人の首根っこに、

「でりゃ!!」
両肘で思い切り肘打ちをした。
盗賊二人がヘナヘナと崩れ落ちる。
ゼノコードはそんな様子を見てポカンとしていた。

「満腹になった私に勝てるとでも?」
「うへえ~、強いなァあの子」
ゼノコードは笑いながら、後ろから銃口を突き付けて来た盗賊にチラリを目線を向ける。
素早く身を反らし、銃口を掴んで引き寄せる。

「うわっ!!」
「はい風・輸送!!」
―ドンッ!!
竜巻を盗賊の顔面に叩き込んだ。

「ぎゃぶろろろろろ」
盗賊は竜巻に吹き飛ばされ、回転しながら壁に叩き付けられた。

「わっ!!」
驚く盗賊達。
アンジェラちゃんも背後で起こった風圧に振り返った。

「だりゃりゃっ!!」
ゼノコードは両手を左右に広げ、盗賊に向かって竜巻を放っている。

「あれは…命力…それも“風”の…」
アンジェラちゃんはゼノコードを見ながらつぶやいた。

「やはり我々だけじゃ無理だ!!増援を呼べ!!イレイズ様を呼んで来い!!」
盗賊の一人が慌てふためきながら仲間に叫んでいる。

「合点だ!!」
別の盗賊が通路へと走って行こうとする。

「行かせませんよ」
ソイツに向かってアンジェラちゃんは足元に転がる皿を蹴り飛ばした。

「ぎゃああ!!」
足に皿が命中し、盗賊はすっ転んだ。

「増援を呼ばれては面倒です」
「~♪やるねえ」
ゼノコードが口笛を吹いた。
同時に別の盗賊に竜巻を放ち、吹き飛ばす。

「何で取り囲んでいるはずの俺達が追い詰められてんだ!!」
盗賊達はゼノコードとアンジェラちゃんの暴れっぷりに翻弄されていた。

「強いじゃないのキミィ」
「伊達に鍛えてませんので」
ゼノコードとアンジェラちゃんは背中を合わせ、身構える。

「しかし、この宴会場はあちこちに繋がっています。このままですと奴らはすぐに集まって来てしまいます」
「なるへそ、ほいじゃあ暴れるのはこの辺にして、どっかに身を隠そっか?」
「逃げるのは美学に反しますが、賛成です」
「ぷぷーっ!キミに美学なんてあったんだ~♪」
ゼノコードが吹き出すと、

「あっちゃあダメですかね」
アンジェラちゃんが彼の顔を睨み付けた。

「いえ、美学ってのはキミだけのものです」
青ざめながらゼノコードは答えた。

「ですよね」
同時に二人は全速力で走り出した。

「宝物庫は!?」
「こっちです」
しっかりと宝物庫への通路へ飛び込んだ。

「逃げたぞ追え!!」
「まずいぞ!!あっちは宝物庫だ!!」
盗賊達が慌てて追いかけようとした。

「はいはい宴会はこれにてお開きッスよー」
ゼノコードは振り向きざまに、右拳を思い切り引き下げた。

「風・輸送♪」
通路から宴会場に向かって竜巻が放たれた。

「ぎゃああああああああああ!!」
天井が崩れ、通路は塞がってしまった。

・・・

「後先考えずに通路を塞いでどうするのですか」
アンジェラちゃんは無表情のままそう言った。
少し呆れている様子である。
二人はアンジェラちゃんを先頭にして、通路を突き進んでいた。

「出られなくなったら私達もおしまいですよ」
「めんごめんご、じゃあ抜け道はもうないのかい?」
ゼノコードが苦笑しながら聞く。

「…あります。私はこのアジトを隅から隅まで把握しているので」
「にひひひ!だったら問題ないっしょ!後先考えてたら人生面白くないよ?」
ゼノコードの明るい言葉に、

「人生に面白味など感じた事はありません」
アンジェラちゃんは食い気味にそう返した。

「…そっすか」
しばらく沈黙が走った。

「ねえ、ところでどうしてバラっちが宝物庫にいるってわかるのさ」
ゼノコードが思い出したように聞いた。

「私が牢獄を使っていたからです。他に厳重な扉のある部屋は宝物庫だけです。閉じ込めるのには最適です」
「なるへそ。バラっち弱いからなあ、うってつけだわ」
「私も聞きたい事があります」
アンジェラちゃんが目線をゼノコードに向けた。

「吾輩のプロフィールかい?趣味はスイーツ屋巡りで、特技はポップコーンを口で―」
「殺しますよ」
「あぁん冗談なのに」
「貴方のその、命力です」
アンジェラちゃんは立ち止まり、ゼノコードの胸板に指を当てた。

「うひょひょくすぐったい」
「風を操っていましたね」
ーずぼ!!
指先が胸板の中央というか体内にめり込んだ。

「いぎゃあああああどんな指の力してんだあああああ!!」
「貴方のそれは、風の命力ですね?」
「はいそうです!!吾輩は風の命力を持ってます指抜けえええ!!」
アンジェラちゃんは胸板から指を抜きながら、

「風の命力を持っている人間は多くはありません。それに」
ゼノコードの頭上に揺れる触角を見た。

「そ…それに?」
胸を押さえながらゼノコードが息を切らす。

「それに…その頭―」
その時―

「ガルルルルルルルルァ!!」
凄まじい咆哮が聞こえた。

「ちょおま!!また腹の虫MAX!?」
ゼノコードが仰天してアンジェラちゃんを見た。
アンジェラちゃんは音のする方を睨み、

「違います」
そう言った。通路の向こうから、何かが走って来る。

「忘れていました。盗賊共なんかよりも遥かに脅威な存在を」
「な、何だあ!?」
走って来たのは、大柄で毛むくじゃらな何かだった。
頭部は異形で、巨大なシンバルを横にしたような形状で、びっしりと歯が剥き出しに生えそろっていた。

「知り合い?随分とワイルドな人だね」
ゼノコードが顔を引きつらせながらアンジェラちゃんに言った。

「掃除屋ウルフです」
アンジェラちゃんがそう言うと、目の前のソイツは口を開けた。

「ちょおま!!」
箱を開けるかのように90度、上顎は開いた。
真っ赤な口と、触手のような舌が露出する。
舌は無数にあり、当初それが舌なのかもわからなかった。
口を開けた状態で、掃除屋ウルフはじりじりと歩み寄って来た。

「そ、掃除屋ウルフって言うからには綺麗好きなのかな?見た目より良い子なのかも」
後ずさりをしながらゼノコードが聞いた。

「いえ、獲物を骨まで残さず噛み砕く様から、そう名付けられています。凶暴な砂漠獣です」
「救いのある情報は無いかね!?」
「調教すると『お手』程度は覚えます」
「そりゃ救いがあるね!!」
「ガルァア!!」
掃除屋ウルフがアンジェラちゃんに飛びかかった。

「うひゃあ!」
ゼノコードが悲鳴を上げると、

「五月蝿い!!」
アンジェラちゃんは拳を握り締め、真下から天井に振り上げるように、掃除屋ウルフの下顎を殴り上げた。

「うひゃあ!?」
それを見てゼノコードはまた悲鳴を上げる。

「貴方は息も臭い。誰に牙を剥いているのかわからないのですか」
「ほんとスゲー腕力」
ゼノコードが唖然としながらアンジェラちゃんを見つめる。
掃除屋ウルフはそのまま意識を失ったかと思ったが、すぐに空中で姿勢を立て直し、アンジェラちゃんから数メートル離れて着地した。

「さすが私が調教しただけありますね。生半可な攻撃では倒れません」
「何つった!?調教!?」
ゼノコードが驚く。

「お前が調教したんかい!!」
「勘違いしないでください。『お手』は教えていませんよ?」
「そこじゃねえ!!」
「標的を確実に素早く殺す方法を伝授しています」
「余計な事すんなし!!」
「ああ、そうですね、いずれは敵対するつもりでいたからこうなる事は目に見えていました。まさかの師弟対決、いや、主人とペットの悲しき対決というヤツでしょうか。泣けてきます」
「言っとる場合か!!目ェカラカラだし!!」
ゼノコードが叫ぶと、掃除屋ウルフが再び牙を剥いて飛びかかって来た。

「アンジェラちゃん伏せて!!」
ゼノコードは右拳を引き下げた。

「だりゃあ!!」
竜巻を放ち、掃除屋ウルフをぶっ飛ばした。
だが、すぐに体勢を立て直す。

「ちぇっ!やっぱこの空間じゃあ威力は半減しちゃうみたいだ!」
「酸素が薄いからですか」
アンジェラちゃんが言うと、ゼノコードは頷く。

「吾輩は命力によって風を操れるけど、風を作り辛い環境が苦手でね」
「ならば私がやりましょう。少し心が痛いですが」
掃除屋ウルフが再び襲い掛かって来た。
アンジェラちゃんは左拳を引き下げ、右手を掃除屋ウルフに向ける。
筋肉が激しく隆起した。

「え!?え!?」
アンジェラちゃんの放つ殺気に気付き、ゼノコードは声を上げる。

「そもそも主人様に襲い掛かるとは何事ですか」
そう言ったかと思えば、アンジェラちゃんはものすごい勢いで拳を掃除屋ウルフの顔面に叩き込んだ。

「ヘビーゴングハンマー」
パァンと音を立てて吹き飛んだのは掃除屋ウルフの鋭い歯である。

「心が痛いと言った人間のパンチかい」
ゼノコードは呆れかえっている。

「厳しく調教したというのに主人に歯向かうとは…残念です」
痙攣しながら横たわる掃除屋ウルフを見下ろし、アンジェラちゃんは肩をすくめている。

「恨んでたんじゃね」
ボソッとゼノコード。

「何か?」
「いえ別に!!」

・・・

「掃除屋ウルフもやられたようです!!」
盗賊が慌てた様子で走って来た。
宝物庫の前で、イレイズは苛立った顔で立ちはだかっていた。

「クソ…まさか運送屋が化け物女を味方に付けるとは…あんな凶暴なヤツが人に気を許す事自体奇跡だというのに」
「ど、どうしますか?」
盗賊が怯えた顔を浮かべていると、イレイズはその胸ぐらを掴んだ。

「ひいっ!!」
「どうするだと?俺がうろたえているように見えるか?」
イレイズは盗賊を放り投げた。

「俺はイレイズ。大頭グシャナ様一番の部下だ。証拠に、大頭は俺に魂技を託してくれたんだ」
そう言いながら、イレイズは両手を広げた。

「ううううおおおおお…」
イレイズの胸元が光り出した。

・・・

「!!」
ゼノコードが立ち止まる。

「どうしたのです?」
アンジェラちゃんが振り向いた。

「シッ」
ゼノコードは人差し指を立てながら、ジッと前方を見つめる。

「魂技値(ソウルゲージ)を感じる…向こうに魂技使いがいるよ」
魂技値とは、魂技を使う者が持つエネルギーである。
魂技を使える者はこのエネルギーを敏感に察知できるのだ。

「グシャナの部下でしょうか。幹部連の可能性が高いです」
「イレイズは?」
「イレイズは魂技を持っていません」
アンジェラちゃんが険しい顔を浮かべ、通路の奥を見た時―
通路の奥深くから何かが空を切る音がした。

「!!」
アンジェラちゃんもそれに気付いたが、

「危ない!!」
ゼノコードがアンジェラちゃんを背中から押し倒した。
真上を無数の鋭い刃がかすめ、飛んで行った。
―カカカカッ!
と、音を立てて刃が壁に突き刺さった。

「これは…!!」
ゼノコードが顔を上げてその刃を見上げた。

「破廉恥」
アンジェラちゃんが思い切りゼノコードの顎に頭突きをした。

「ぶうううう!!」
ゼノコードの下顎が変形した。

「気安く触らないでください」
「不可抗力だろうが!?お前を守ってやったんだろうがいいい!!」
ゼノコードは顎を押さえながら激怒していると、誰かが歩いて来るのに気付いた。

「宝物庫に向かおうとしているのだろう?全てわかっている」
通路から歩いて来たのは、イレイズだった。

「化け物女から聞いてそこに向かっていたんだよな?御名答だ。そこに仲間を閉じ込めている」
「イレイズ…ド三一の分際で偉そうな口を」
アンジェラちゃんがそう言った時、その頬を刃がかすめた。

「!?」
後ろの壁に刃が突き刺さっている。

「いけね!!大丈夫!?」
ゼノコードが慌てている。

「驚いただろ…これは、刃の命力。大頭が俺に託してくれた力だ」
イレイズは右手を付き出した。
手の平から光が漏れ、それが刃を作り出している。

「託したぁん?」
ゼノコードが不思議そうな声を上げた。

「命力…」
アンジェラちゃんも顔を上げる。

「魂技を手に入れたのですか、イレイズ。いつの間に…」
「よお化け物女。牢の外の空気は美味いだろ」
イレイズは刃を指先で回転させている。

「すぐに戻してやる。四肢を切り刻んでからな」
「クッ…」
アンジェラちゃんは歯を食いしばった。

「どうした化け物女。俺の顔面を粉々にするんじゃねえのか?」
イレイズはアンジェラちゃんを見下ろし、ニヤニヤと笑う。

「今度からは舐めた口も聞かせないぞ。馬鹿力を持つお前でも、命力を持つ俺が相手なら手も足も出ねえな。っふふふふふ…」
イレイズが不敵に笑い声を出していると、

「アンタおバカさんですか?」
ゼノコードがイレイズを指さした。

「…何?」
ピキッ、とイレイズの額に青筋が浮かんだ。

「命力ってのは自分の魂の中に眠る力で、修行をしたり、何かのきっかけで開花するものなんだ。人からもらう力なんかじゃない。どういう理屈か知らないけど、本当にもらったって言う力なら、それは仮初の力だ。アンタの力じゃないっす」
ゼノコードは立ち上がりながら淡々とそう語った。

「それと、あまり女子を虐めちゃだめでしょうが。んな事しても上がるのは、小物感だけすよ」
「どうやら何度殴られても懲りないようだな。お前は」
「懲りないッスよ~?自分タフなんで」
「…だったら切り刻む!!死ねえ!!」
イレイズは刃をいくつも作り出し、ゼノコードに向かって投げつけて来た。

「死ね死ねうるさいっすよ、ド三一(さんぴん)さん。アンタは教育上よくない」
ゼノコードは素早くアンジェラちゃんの前に飛び出した。

「だりゃあ!!」
竜巻を放つ。竜巻は風圧を放ち、飛んできた刃を弾き飛ばした。

「何っ!?」
イレイズは驚いた。竜巻はイレイズに命中する寸前で、勢いが弱まり、消滅してしまった。
イレイズは怯む事無く、即座に刃を生成し、投げつける。
ゼノコードはそれを軽く身を反らして回避した。

「やっぱダメか…閉鎖空間じゃあ本領が発揮できない」
「そんなものか!?生意気ほざく割に大した事無ぇな!!」
イレイズは笑いながら刃を次々に生成し、投げつけて来る。
ゼノコードとアンジェラちゃんはそれを必死に回避し続ける。

「どうします?私はアイツをぶちのめすのに一票ですが」
アンジェラちゃんが冷静に聞いて来た。

「ちょ、無駄な戦いは避けようよ。でも、通路の後方は塞がっている。だったらこの通路を突破するしかない…よし」
ゼノコードはアンジェラちゃんに目線を向けた。

「吾輩に捕まって!」
「は?」
「いいから早く!」
アンジェラちゃんはゼノコードの背中を少し見つめ、抱きついた。

「おふ」
胸の感触にゼノコードは少し顔がにやけたが、

「何をする気だぁ!!」
イレイズが両手を合わせ、巨大な刃を生成した。

「オラァ―」
勢いを付けて投げつけようとした。

「風脚輸送!!」
両足から竜巻を放ち、その勢いに乗ってゼノコードは通路内を滑空した。

「…―ア?」
イレイズの目の前にゼノコードとアンジェラちゃんの顔があった。
鈍い音と共にイレイズは空中で回転しながら吹っ飛ばされた。

「竜巻が消える!!後はダッシュだ!!」
「はい」
通路内を転がりながら二人はすぐに体勢を直し、走り出す。

「お…お…」
顔を押さえながらイレイズは立ち上がり、ケースライドを開いた。

「野郎共!!宝物庫に向かった侵入者と化け物女を捕まえろ!!捕まえた者にはキンカ1000枚だ!!」
通信はアジト中に広がった。
イレイズの大声は反響して、ゼノコード達にも聞こえていた。

「キンカ1000枚!?吾輩達高いんだね!!」
通路を走りながらゼノコードが叫ぶ中、

「…」
アンジェラちゃんは何かを考えていた。





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Last updated  2026.02.16 08:20:12
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