買書とつんどくの日々

買書とつんどくの日々

2009年03月01日
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娘は青い魚の目玉をえぐり出し、コーニーに渡した。コーニーは走って家に戻り、ガジュマルの根元に二つの目玉を並べて置いた。それから家に入ると、腹這いになって目玉を見張った。マッチューが畑から帰ってきたときも、同じ姿勢で目玉を見張っていた。マッチューが何を言っても耳には入らなかった。目を離す瞬間をキジムナーは狙っているのだ。じっと見ていると、二つの目玉もコーニーをじっと見返した。きっとキジムナーもどこかからじっと目玉を見ているに違いない。そのうち我慢できなくなって出てくるだろう。(中略)しかしキジムナーはなかなか出てこなかった。コーニーはだんだん待っているのがつらくなった。むこうが出てこないならこっちから行ってもいいと思ったが、体がこわばったように動かなかった。再びガサッと音がした瞬間、コーニーの体はバネのように跳ね上がりガジュマルめがけて突進していた。(中略)
このようにして、ぼくは自分に気がついた。あるいは気が付いたら存在していたというべきか。雲がとぎれて月の光が差すと、ガジュマルの梢に唐突にぼくはいたのである。得体のしれない衝動が体の底から湧いてきて、幹を駆け降り、地面に並ぶ二つの魚の目玉を見つけるとためらうことなく口に含み、両頬を膨らませながら村の白い道を走った。急かされるように手近な樹に駆け上がり、勢い余って枝の先から空中に躍り出ると、あたりの樹々がいっせいにざわめき、時空の狭間にぼくは飲み込まれていった。
ガジュマルの家 」P27)

「昨日の夕方、逢い引きした帰りに墓のところを通ったら、少し先を猫が歩いていたわけさ。ひょこひょこと人間みたいに後ろ足だけでよ。それで誰かが死ぬと思って、こっそり後をつけたら、猫はジラーの家の前に立ったわけさ。ああ、わたしの家じゃなくてよかったよう・・・・・」
そのときカナシは、門口に立っている猫を見て叫び声を上げたのだった。猫は人間のように後ろ足だけで立ち、前足をふらふらさせ、口をだらんと開けて舌をひきつらせながら家の中をじっと見ていた。その視線の先ではジラーが眠っていた。
「おまえは誰の使いできたかっ」
カナシは震えながら叫んで猫に石を投げつけた。我にかえった猫は四本の足で墓地の方角に逃げっていったので、カナシはジラーの命がまもなく尽きることを知って悲しくなった。
(大島孝雄さん「ガジュマルの家」P53)





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Last updated  2009年03月01日 06時35分35秒
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