買書とつんどくの日々

買書とつんどくの日々

2009年03月21日
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「<国民文学>は<国語>と同じようにその起源を忘却することによって成り立つ。日本近代文学もそうである。巷の人が手紙でやりとりする言葉が新聞や小説の言葉に近づき、新しい日本語があたりまえなものになるのと同時に、日本近代文学の起源――それが、大学で西洋語を学んだ二重言語者によって、翻訳という行為を通じ、翻訳の可能性と不可能性のアポリアから創られていったものであることは、急速に忘れられていった。

日本近代文学の起源を振り返るということ自体、<国民文学>が、国民の魂の自然な表現であるという<国語イデオロギー>と相容れないものである。その起源を忘却させようという意図がどこかに存在したわけではない。日本に<国語イデオロギー>が浸透するにつれ、知らず知らずのうちに、日本近代文学が、日本人の魂の表現そのものに思えるようになったのである。しかも、明治時代から義務教育で強制された規範的な<話し言葉>も、やがてラジオ、次にはテレビの普及によって強制を伴わずに茶の間から茶の間へと山を越え、川を超え、県境いを越えて普及していった。規範的な<書き言葉>の流通は規範的な<話し言葉>の普及とあいまって、日本語という<国語>をいよいよ日本人の魂のそのままの表現のように思える言葉――<自分たちの言葉>としていったのである。」
(水村美苗さん「日本語が亡びるとき」P227)





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Last updated  2009年03月21日 07時22分15秒
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