買書とつんどくの日々

買書とつんどくの日々

2010年09月10日
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「私は長い土手を伝って牛窓の港の方に行った」(「冥土」より「花火」)
短編集は夢とも現実ともつかぬ心象風景をつづって、特有の非論理性につらぬかれている。
「片方の海の側には、話にきいた事もない大きな波が打っていて、崩れる時の地響きが、土手を底から震わせている」
奇妙な不安感がしだいにふくらみ、つづいてやにわに、恐怖が背中にかぶさってくる。
それは借金のもつ特性と瓜二つではあるまいか。どうしても金がたりないから、しかたなく借りる。にもかかわらず返さなくてはならず、返すために、またよそから借りなくてはならない。借りる条件は悪くなり、返していけばいくほど借金はふえていく。借金をすると貧乏暮らしだけでなく、つねに奇妙な非論理性を日常的に生きなくてはならない。
(池内紀さん「内田百間と借金」(「文学フシギ帖」所収)P69)

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Last updated  2010年09月10日 21時02分02秒
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