買書とつんどくの日々

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2012年05月19日
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(中略)
重盛がこのような運命の預言者たり得たのは、彼が神々を媒介として、運命を察知し得る特別な能力をそなえた人間であったからであった。古代人の考えでは運命は厳存していても、それはたれのまえにも自分をあらわにするような性質のものではなかった。特別な人間のみがそれを察知し、それによって未来を予見し得るのである。
(中略)
平家物語において、重盛が「天性此大臣は、不思議の人にて、未来の事をも兼て悟給けるにや」と、未来を予見することのできる不思議な人物とされているには、それだけの理由がある。彼は清盛や義仲や義経などの普通の人間とは、性質のちがう世界に片足をおいている人物であって、このことは平家物語の構造を知るうえに大切なことである。運命と人間を媒介する一つの方法は夢想であるが、平氏の滅亡の運命を予言する信託が、とくに重盛の夢にあらわれたことは注意する必要があろう。春日大明神は、重盛の夢想のなかで、平氏の悪行が度をすぎたので、清盛の首を召しあげるという託宣を下しており、それによって重盛は、「一門の運命既に盡んずるにこそ」と、平氏の過去と将来をかんがえて涙したとしるしてある。重盛のこの性格を理解しておかないと、少なくとも彼が重要な役割を果す物語の前半の構造を理解することはむずかしい。
(石母田正さん「平家物語」P20)


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Last updated  2012年05月19日 19時11分54秒
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