買書とつんどくの日々

買書とつんどくの日々

2012年07月26日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類

私は意外な言葉に、ぽかんとした。
精神病患者を自宅に監置する、あれだろうか。――いわゆる「座敷牢」だ。明治期から終戦直後まで、制度として存在したことは知っている。精神病患者に対し、地方自治体の許可を受けた責任者が、定められた監置室(これが俗にいう座敷牢だ)に監禁する。
精神障害の患者はいつの世にも存在するが、明治期以前には「癲狂」と呼ばれ、周囲にとって脅威や邪魔になるようであれば監禁、拘束することで社会から隔離し、民間薬や加持祈祷で対応するしかなかった。法整備がなされたのは一九〇〇年になってからのことだ。この年にできた「精神病者監護法」によって、患者は弱者として保護されることになった。患者を私宅や病院に監置する場合には、医師の診断書を添えて警察署を経て地方長官の許可を得なければならない、とされた。医師の診断もなく、公の認可もなく家族や社会が勝手に患者を隔離することはできない。
しかしながら、この法律には医療上の対応についての規定がなく、又患者を収容する病院も絶対数が不足していたために、かえって患者を私宅に監置する大義名分になってしまった。これを憂い、一九一九年には「精神病院法」が制定されて、道府県に精神病院の設置を行うことにしたが、これは遅々として進まず、結果、一九五〇年に「精神衛生法」が作られるまで私宅監置が常態的に行われていた。
(小野不由美さん「残穢」P254)


397004.jpg





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2012年07月26日 19時39分20秒
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Profile

shov

shov

Calendar

Favorite Blog

密室法典 五十嵐律人 New! 鴨ミールさん

リト@葉っぱ切り絵展 吟遊映人さん

2024年12月発売予定… ぴいたあ8888さん

眠りの底で 無花果。さん
ミステリの部屋 samiadoさん

Comments

aki@ Re:聞いた曲(2024.1.20)(01/20) この様な書込大変失礼致します。日本も当…
shov @ Re:「フラニーとズーイ」(メモ12)(07/19) ご訪問ありがとうございます。 記事読ま…
ゆきこ@ 日本にとって大切な参院選 初めまして、こちらのブログとは場違いな…
omachi@ Re:「比ぶ者なき」(メモ11)(04/10) 歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知っ…
http://buycialisky.com/@ Re:「お嬢さまと青バラの君」(紹介)(03/30) differences entre viagra cialis levitra…

Free Space

設定されていません。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: