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2004年07月26日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay
 娘たちが別れた父親に会いに行った。

 彼はわたしに『ありがとう』のコメントを添えて、旅費を送ってきていた。
 『ありがとう』には、いろんな意味があったのだろう。
 気を遣って娘たちを寄越してくれて、とか、二度と会えないと思っていたのに会えて、とか。

 娘たちは、わたしに気遣いながら、どこか嬉しそうに仕度をしている。
 「ねぇ、何かお土産がいるでしょ?買いにいかない?」
 わたしが誘うと、
 「わたし達の身体が土産だから手ぶらで良いよ」


 デパートを散々歩いて選んだのは、お煎餅だった。
 彼の大好物である。
 嬉しそうに食べる顔が浮かんで、不覚にも涙がこみ上げてきた。
 入退院を繰り返す彼の容態は、ここにきて少し落ち着いていた。
 元気な姿で娘たちに会えるのがなにより嬉しい、とそのコメントは結んであった。

 夫婦は別れてしまえばそれで終るけれど、親子の関係は命が果てた後にも続く。
 心が通った父と娘たちだっただけに、結果は不憫であった。
 その彼へのお土産を探す、わたしと娘たち。
 「父さんはこんなのが好きだったね」
 「違うわよ。こっちよ」
 きゃっきゃとはしゃぐ姿を、わたしはとても不思議な気持ちで見ていた。

 どこまで時間を巻き戻せば、元に戻れるのだろうか?
 到底、戻れもしないのに、そんなことをぼんやりと思った。

 「じゃぁね。行ってくるから」
 「うん。よろしく伝えてね」

 改札の向こうで手を振って、くるりと背中を見せた。 










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最終更新日  2004年08月27日 13時07分17秒
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