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2005年04月10日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay
 風が吹いている。

 闇の中を、花びらが雪のように舞い散っているにちがいない。
 目を閉じると、そんな情景が浮かんだ。

 古語では、こんな風を『花の風巻き(しまき)』というのだそうだ。
 満開の桜を散らす風のことで、未練や余韻を断ち切るという意味らしい。
 らしいとは、あまりにも無責任であるけれど、わたしの周囲にある限りの文献には、
 これくらいしか載っていないので、後日詳しく調べるとして……。

 寒い冬を耐え忍んだ桜が、気温の上昇で一気に開花する。
 そして野山はこの時とばかりに、あちこちで開花した桜との競演となるのだ。
 まだ若い木の桜にも、時代の流れをじっと眺めて来た老木の桜にも、
 ものすごい存在感がある。
 凍てついた冬の時代を抜けてきた人々の心の中に、
 そんな桜は春が来たことを平等に伝えてくれる。

 わたしは、ずっと桜の開花を待っていた。
 母が愛した桜であり、わたしや姉、そして娘達までもが愛して止まない桜には、
 格別の思い入れがある。
 だから毎年、どこの桜を愛でようかと、楽しみにしているのだけれど、

 久しぶりに、体調を崩して熱を出してしまったのだ。
 今年の桜は、今年しか見えない。
 わたしは、必死で熱を下げた。下がって欲しいと祈った。
 そのおかげもあってか、昨日、今日と桜を見に出かけることができた。


 己の人生もこうありたいものと、きっと心のどこかで思いを写している。
 今しばらく咲いていて欲しいと、誰もが願うところを、この花の風巻きが散らしてしまう。

 明日の朝、あちらこちらに薄紅色の吹き溜まりが出来ていることだろう。
 わたしはそれを両手にすくって、思い切り空に投げてみよう。
 その舞い落ちる花びらを、身体中に浴びてみたい。
 幼い頃、そうして遊んだ日々を思い出しながら……。
 まだ無垢だった頃の、そんなわたしにきっと会える。





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最終更新日  2005年04月11日 10時10分29秒
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