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2005年07月09日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay


 三連休だし、12日にはわたしの胃カメラ検診があるので、その結果を持っていけるから。
 でも、元夫からのメールの行間には、只ならぬ気配のようなものが漂っていたのだ。
 それは、わたしだけが感じる特殊な感情なので、うまく説明がつかないのだけれど。
 以前から元夫に何か起きるたびに、わたしの身体は具合が悪くなった。
 一番最初に遭遇したのは、旅先で唐突に歩けなくなった。
 楽しいはずの旅のほとんどを観光バスの中で過ごし、やっとの思いで家に辿り着いたその時、我が家が転覆する大事件が起ていたのだった。
 それからも小さなことは、度々起きていた。


 病院に行くと彼は怪訝な顔をした。
 「え?来週来る予定じゃなかったの?」
 「うん。そうだけど。都合がついたから」
 「実はね、今朝方ものすごく具合が悪かったんだ。ああ、もう駄目かなーって。急に一人でいるのが怖くなった。初めてだよ。こんなの。でも、驚いたよ。なんで具合が悪いのが分かったんだろう」
 「テレパシーよ。きっと」
 わたしは茶化しながら、やっぱりそうだったのかと頷いていた。

 担当医にわたしと長女はそっと呼ばれて説明を受けた。
 「そろそろですよ」
 「具体的には?」
 「いつ来てもおかしくない状況です。本人がものすごく病気に対して前向きなので、それで現在があるのですから」

 わたしは義母に伝えた。

 「そう。悪いね。苦労ばかりかけるね」
 初めての義母からの労いの言葉だった。

 わたしは決意した。
 今日は不覚にも泣いてしまったけれど、以前の、離婚する前の、彼が愛していた頃の(今でも彼はそう言うのだけれど)、わたしの笑顔で旅立たせてあげようと。

 頭の中ですばやく仕事を辞める為の段取りを始めた。
 (生活は厳しくなるけど、まぁいっかー。なんとかなっるっしょ!)

 「ねぇ。娘と一緒に写真を撮ってあげようか」
 「うん。いいねぇ。とびっきりのやつをひとつ頼むよ」
 わたしはファインダーの中の二人が、全く屈託の無い顔で笑っていることに感動を覚えた。
 「うわー。良すぎるよー、見る?」
 二人が同時に覗き込んで来た。
 「いい、いい。上出来だよ。なんと言ってもモデルが良いからね」
 「じゃあ今度は母さんと父さんで」
 何度か撮り直して、ようやく
 「まぁまぁかな?」
 長女のOKが出た。
 「そろそろ新幹線の時間だから行くよ。来週また来るね。今度はずっと居てあげるから」
 「ああ。お願いするよ。楽しみに待ってるからね」
 彼は、痛み止めの点滴が始まっていた。
 左腕はすでに、点滴液が漏れて紫色の痣だらけである。
 今日から利き腕の右手に変わった。
 そのチューブがついた手を、彼は軽く挙げた。
 わたしは少しおどけて「バイ」と手を振った。







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最終更新日  2005年07月10日 09時32分49秒 コメント(8) | コメントを書く
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