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2021.04.27
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第13話「逸る気持ち」

傅九雲(フキュウウン)が突然、覃川(タンセン)の前に現れた。
九雲は覃川を桃源(トウゲン)鎮へ連れて来ると、まるで何事もなかったかのように陽気に振る舞う。
「傷は治ったの?痛むなら無理に出歩かなくても…」
「無理などしていないさ~」
「戦いのあと、一体どこにいたの?」
すると九雲はようやく絵の中で傷を癒していたと答えた。
実はあの絵は九雲の隠れ家、しかし天原国太子と戦って台無しにしてしまい、今や身を隠す場所もないという。


すると九雲が巨大な真珠を出して貸切にしてしまう。
九雲を心配していた覃川はすっかり振り回され、部屋にこもって悶々とした。
…元気そうだし傷もなさそう、霊灯を探す様子もないわ、霊灯のことなんて気にもしてない…
その時、九雲が酒を持ってやって来た。
覃川は戸を開けて九雲だと分かると閉めたが、九雲はいつの間にか仙術で部屋に入ってしまう。
「私をからかって楽しいの?今この瞬間にも無辜の驪(リ)国人が殺されているのに!」
焦りを隠せない覃川は自分で霊灯を探すことにしたが、九雲は鯪魚(リョウギョ)城にはないと教えた。
しかも今は傷を負っている身、霊灯より哀れな自分に同情して欲しいという。
確かに覃川も九雲の身体は心配だった。
そこで仕方なく万全の状態になったら必ず探しに行くという九雲を信じ、酒に付き合うことにする。
一方、鯪州王府では靂渊(レキエン)と亭渊(テイエン)が一見、仲良さそうに囲碁を打っていた。

しかし亭渊は興味がなく、それより今年こそ一緒に中元節を祝おうと誘った。
「そうだな、忙しくなければ一緒に楽しもう」
「いつもそう言って会ってくれませんけどね~」



覃川は仙術で自分をからかう九雲に腹を立て、仙術禁止令を出した。
すると九雲はならば非力となった自分の世話をして欲しいと条件を出す。

「お断りよ!」
「もう私のものではないのだな…私の侍女はどこへ行ってしまったんだ~うわ~ん」
九雲は卓にうつぶして大げさに泣きわめいた。

一方、豊城(ホウジョウ)へ出発した左紫辰(サシシン)たちは途中で馬車を止め、小休止していた。
すると左相国(サショウコク)が息子を誘ってその場を離れる。
「秋華(シュウカ)夫人が私と一緒にいるのは娘をお前に嫁がせるためだ
 だがお前にはその気がないのだな?
 もう大人だ、お前の考えがあるのだろう、それで構わん
 気が向いたら時々、顔を見せに帰って来い」
左相国は自分から離れた息子の心を取り戻そうと必死だった。
「四海紀を集めたぞ、闌洲(ランシュウ)紀もあと2巻だ、お前が家を出てから2年かけて集めていたんだ
 目が治ったらすぐ読めるようにな」
左相国は自らを責め続けていたと吐露し、父親として間違っていたと謝罪した。
老いた父の弱々しい姿に同情した紫辰は、父の願いを聞いて豊城でしばらくそばにいると約束する。
一方、秋華夫人は玄珠(ゲンシュ)を紫辰に嫁がせようと画策していた。
今や自分たちは左家の機嫌を損ねれば吹けば飛ぶような存在、娘が嫁げば見捨てられずに済むという。
玄珠は下心なく純粋に紫辰を想っていると訴えたが、母はどちらにしても早く紫辰に嫁げと急かした。
「玄珠…私の運命はあなたにかかっているのよ?」

九雲は覃川と市場へ出かけ、2人の時間を堪能した。
お揃いのお面を頭に着けて露店を回り、九雲は次々と目についた物を買ってしまう。
「無駄遣いして歩くなんて…本当の人間みたい」
「そなたもだろう?」
九雲から皇宮育ちを揶揄された覃川は、ならばと自分の好物の露店に案内した。
「昔は贅沢三昧の公主だったのに、今は一文の酥油餅(スーヨウビン)が美味しいとはな?」
「(もぐもぐ…)はあ~妖魔が襲って来てもこれがあれば幸せだわ」
九雲は安上がりだと失笑し、宮中を出た頃も泣かなかったのか聞いた。
「(*゚▽゚)*。_。)*゚▽゚)*。_。)ウンウン
 泣かなかった、だってね、面白いことがたくさんあったの
 買い物で支払いを忘れたり、髪型を失敗して変になったり…そうそう!
 身体中にすごくかゆい斑点ができたことがあったわ!それで買った肉をひっくり返しちゃったり!
 …だからもう慣れた、私にとっては何でもないの」
「ではもう帝女の頃に未練はないと?」
「フル(・_・ ))(( ・_・)フル
 考えたこともないわ、これが現実だもの、それに今はやるべきことがある、だから大丈夫!」
「やり遂げてもそなたの父皇も母后も二哥も戻らないぞ?」
「分かってるわ、もちろん全て分かってる
 だけど父皇や母后、それに二哥も、天界で安心してくれるんじゃないかな?
 以前は頼りなかった小公主が自分たちのようにたくさんの人を助けるのを見たら…」
九雲は健気な覃川の言葉に胸を打たれた。
しかし当の本人はけろりとしながら、講談が始まったと言って走って行ってしまう。

講談は人間を愛してしまった仙女の話だった。
九雲は仙女に自分の姿を重ね、興味深く話を聞く。
…恙(ヨウ)王を愛した仙女はついに正体がバレた
仙人が人間の子を成せば神々の怒りを買い、10年の干ばつと10年の洪水が襲う
そこで仙女は天界へ戻って罰を下さぬよう説得すると決意、恙王に自分が戻るまで他の人を娶らないで欲しいと頼んだ
仙女は天界で壮絶な罰を受けたが、恙王との幸せな記憶を支えに耐え続け、やがてそんな仙女を哀れんだ母親が願いを聞き入れてくれる
喜んだ仙女は人間界へ戻ると、仙女を心配して待っていた恙王は白髪になっていた
仙女は愛する恙王に罰を受けたことを隠し、天界で夫婦になろうと言ったが…

講談を聞きながら、覃川は九雲だったら待てるか聞いた。
九雲は本気の恋なら千年の時間も一瞬だとさらりと答える。
まるで経験者みたいだと笑う覃川、まさか九雲が千年も自分を探していたとは知る由もない。
すると覃川は結末の前に恙王は天界へは行かないと言い当てた。
「聴衆は幸せな結末を望むけど、恙王は一国の王よ?もし行ってしまったら民が苦しむわ」
「だが仙女にも恙王が必要だ、大勢のために1人を諦めることが本当に正しいか?」
「もし恙王が天界に行っても心にしこりが残る、美しい日々も彼には地獄だわ
 私が恙王でも人間界に残ると思う!たとえ後悔したとしてもね!」
覃川は思わず声が大きくなり、聴衆たちから何と冷たいのかと噛みつかれてしまう。

2人は幸せな結末を期待する聴衆の怒りを買い、慌てて逃げ出した。
そこで物陰に身を潜めてやり過ごしたが、九雲は抱きしめた覃川をなかなか離してくれない。

すると覃川の高鳴る動悸が聞こえ、九雲はこの機に乗じて口づけしようと顔を近づけた。
「あ…お腹が空いた」

九雲は覃川が麺を食べる姿を苦々しい顔で眺めていた。
やがて我慢も限界、九雲は霊灯や驪国人のことを考えない日はないのかと責めてしまう。
「あるわ…」
「いつだ!」
「教えないっ!」
「はっ!そうか!じゃあ食え!」
そこへ物乞いが現れた。
覃川は物乞いが驪国人だと知って恵んであげたいが手持ちの銭がない。
すると九雲が大きな真珠を渡し、これでちゃんとした生活をしろと送り出した。
「あの真珠は返すわ」
「いいさ、だが手持ちの2つは宿と彼に渡してしまった
 旅に出る金がないから、もう少しここにいるのはどうだ?」
「また先延ばしにするつもり?!」
「貧しき者を救うためだったんだ~しかもそなたのためにな」
「人助けは自分を犠牲にせず行うものよ!」
「…できることをして自分を犠牲にしない、その通りだ、なら自分はどうだ?」
痛いところを突かれた覃川は反論することができなかった。

豊城に戻った靂渊は妖魔を崇める密室へ向かった。
すると車椅子の国師が現れる。
「殿下、そなたが送った煙書は見た、確かにあの者か?」
「間違いない、結界の中で戦ったのは驪国皇宮の上空にいた琴を弾く仙人に間違いない」
「前回は驪国の皇宮に現れ、今回は驪国の流民を助けた…ふっ、関係があるに違いない
 奴と戦った時に顔は見たのか?」
「端正な顔立ちだったが、泣きぼくろはなかった、傅九雲ではないはず」
しかし国師が残念がる様子はなく、人を出して調査させると決めた。
「傅九雲を見つけて2つの力が手に入れば、もう苦しまなくていい」
「…そう願いたい」
靂渊はそこで出て行った。

九雲は何とか覃川の部屋で一緒に寝ようと食い下がった。
しかし覃川に出ていけと拒まれてしまう。
すると九雲はがっくり肩を落とし、傷口が悪化しそうだとぼやきながら戸を開けた。
「ゆっくり休め」
九雲の悲しそうな顔を見た覃川は怪我人に冷た過ぎたのではと思い直した。
「…ここにいてもいいわよ」
「そうか?」
九雲は急に元気になって戻って来た。

その夜、国師は傅九雲の居場所を探すため、黒煙を放った。
すると九雲は首の封印の異変で目を覚まし、覃川を起こさないようにこっそり外へ出る。

その時、寝たふりをしていた覃川が目を覚ました。

つづく


(๑•́ω•̀๑)ルースー、やっぱり上手いな〜しんみりしちゃったわ





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最終更新日  2021.04.27 22:42:38
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