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第32話「親子の情」

罪人・王藺(オウリン)の処刑は明日に迫っていた。
謀反の罪と母を死なせた恨みが父への情と絡み合い葛藤する王儇(オウケン)、一方、決断を迫られた蕭綦(ショウキ)も悶々としていたが、独りで出かけてしまう。
やがて日も暮れる頃、王儇は意を決して天牢を訪ねた。
門衛の話では父は皇太后から特別待遇を受け、不自由なく過ごしているという。

王儇は独りで父に会いたいと頼み、地下牢へ向かった。
すると父が壁に何やら書いている姿を見る。
…天よ、我が祈りを聞け

…国への忠心は叶わぬが、妻と共に戻られる
王儇は父との幸せな日々を思い出し、居たたまれなくなって引き返してしまう。
足音に気づいた王藺は柵の間から入り口を見たが、わずかな人影だけしか分からなかった。
「…阿嫵(アーウォ)か?」
しかし答えはない。
一方、王夙(オウシュク)は父を助けるため嘆願を続けていた。
侍女は頑なに動かない世子に困って皇太后に報告したが、皇太后は誰にも会いたくないという。
父の命乞いのためひざまずき続ける王夙、なかなか戻らない蕭綦の帰りをひたすら待ち続ける王儇、それぞれの長い夜が明け、ついに処刑当日を迎えた。

王藺は水を要求し、身なりを整えてから牢を出た。
すると眩しい日の光の先に馬車を準備して待っている豫章王の姿が見える。
一方、王夙は嘆願をあきらめ、刑場にいた。

2人は父を見送りたいと訴えたが、門衛は朝廷からの命令で誰も入れないと2人を阻んだ。
その時、ついに執行時間を知らせる太鼓の音が鳴り響く。
愕然とする王夙と王儇、しかしそこへ宋懐恩(ソウカイオン)が駆けつけた。

蕭綦は郊外まで馬車を走らせた。
馬車を降りた王藺は豫章王の手で死ねるなら思い残すことはないという。

密詔を見た王藺は蕭綦のおかげで命だけは助かったと知った。
すると蕭綦はもうすぐ阿嫵と王夙が来ると告げる。
しかし王藺は阿嫵に合わせる顔がなく、すぐ出発すると決めた。
その時、王儇と王夙を乗せた馬車が疾走してくるのが見える。
「蕭綦、阿嫵を頼む、娘を頼んだぞ…二度と会うことはないだろう」

王儇が馬車を降りると父の馬車が走り出していた。
「父親!」
王藺は自分を追って必死に走ってくる阿嫵の姿に涙し、思わず窓から顔を出す。
一方、王夙は蕭綦の密詔を確認し、呆然とたちすくんでいた。
「ふーちーん!ふーちーーーん!」
「あーうぉー!走るな!転ぶぞ!」
王儇は幼子のように無我夢中で父を追ったが、やがて勢い余って転んでしまう。
小さくなって行く父の馬車、すると父は思いを断ち切るように窓を閉めて辺境へ旅立った。



その夜、王儇は蕭綦が父を救ってくれたと知った。
蕭綦はどうであれ阿嫵の父であり岳父である王藺を助けるのは当然だという。
一方、皇太后は蕭綦が免死金牌を使ったことに驚いていた。
実は免死金牌が与えられたのは建国後たった2回、蕭綦はこれを惜しみなく使うほど阿嫵を愛しているのだろう。
「阿嫵は大したものね、1人の男をあれほど夢中にさせるとは…はぁ〜その点は私よりも幸せね」
しかしそんな蕭綦に辛く悲しい現実が待っていた。
太医の見立てによれば王妃は寧朔(ネイサク)での大怪我が回復しないまま心労を重ね、今回の流産という悲劇に見舞われてしまったという。
「今後、懐妊は難しいかと…」
太医は王妃が懐妊することはできても、出産時に王妃まで危険に陥る可能性が高いと伝えた。

皇太后は早速、皇都を発った兄に刺客を放った。
「北の辺境に近づいた時に始末せよと…失敗は許されぬ、確実に骸を確認させよ」
しかしその話を王藺の護衛班が聞いているとは知るよしもない。
一方、子澹は皇帝陵に戻ると決め、皇后に報告した。
宛如は子澹がいなくなったら謝氏を立て直せないと焦ったが、子澹は皇太后の脅威から逃れるためだという。
「機を見て帰京し協力する…」
子澹は領土をもらって藩王になればかえって帰京が難しくなると分かっていた。
「謝氏はこれ以上、譲れない、いや譲らない」

子澹の覚悟を知った宛如は安心し、自分でも動くことにした。
そこで自ら皇帝を訪ね、政務に手こずる皇帝に力になれる者がいると謝守正(シャシュセイ)を推薦する。
伯爵だが金銭や穀物の勘定に精通し、数字に弱い皇帝の手助けになるはずだ。
素直に喜び、明日にも官職を与えると決める皇帝、しかし皇太后は謝氏である皇后をこのまま見逃すほど甘くはなかった。
「早く手を打つべきだった
 子隆は謝宛如に心の限りを尽くしている、妊娠中に手を打たねば…
 謝氏の血を引く太子などもってのほか、王氏の皇后を私で終わらせてはならない」
皇太后は琅琊に人を行かせて王一族の中から良い娘を選び、皇都に連れてくるよう命じた。

政変が終わっても王儇は未だ心と身体の不調で伏せっていた。
そこで療養のため母の痕跡が残る慈安寺に移る。
すると王儇はいくらか心の平安を取り戻した。

軍営に戻った蕭綦はひとりになってはぼんやりと考えることが多くなった。
そこへ宋懐恩がやって来る。
長い付き合いの懐恩は大王の様子で悩み事があると分かった。
「…言いづらいのですが」
「私たちの間ではないか、言ってみろ」
実は王氏が没落したことで、今度は豫章王が朝廷を牛耳り、皇帝を操っていると噂になっていた。
さらに王妃が慈安寺に移ったこともあり、豫章王と王妃の関係は終わり、じきに廃妃にするつもりだと憶測が流れる。
蕭綦は無責任な人々の噂に呆れ、それに対抗する計画を立てると言った。
「帰京する、皆に教えてやろう、私が心を決めたら政局をも動かせるとな」
「ふっ、余計な心配でした」

一方、辺境へ向かった王藺はその夜、宿で眠りについた。
すると黒衣の刺客たちが現れる。

つづく


( ;∀;)アーウォ…
これお兄ちゃんだったら笑い話になってたかも?w





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最終更新日  2021.12.16 22:57:53
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