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2022.03.04
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第52話「守るべき者」

皇后・謝宛如(シャエンジョ)は皇帝・馬子隆(バシリュウ)から殉葬を賜った。
驚いた王儇(オウケン)は慌てて昭陽殿に駆けつけたが、すでに支度を済ませた宛如が小皇子・馬静(バセイ)を抱いている。
宛如は息子を阿嫵(アーウォ)に託し、殉葬は馬静を守るためだと説明した。
「今までごめんなさい…私の代わりに静児を守り、朝廷から遠ざけて欲しい
 平凡でいいの、健康で生きてさえいてくれたら…」
「嫌よ、約束できない」
「因果応報だわ…自分に返って来た、でも静児を守ってくれるのがまさかあなただなんて…」

すると皇太后の命を受けた桂(ケイ)嬷嬷(モーモー)が声をかけた。
「皇后、お時間です…太后が報告をお待ちです」
侍従はすでに毒酒、匕首(ヒシュ)、白綾を準備して控えている。
覚悟を決めた宛如はその場でひざまずき、皇子を託せるのは阿嫵だけだと訴え、拝礼した。
「今日からあなたが静児の母親よ!ゥッ…」
「約束するわ、今日からこの王儇が静児の母となります、決して不幸にはしません」
「静児が恩返しをするわ…早く連れて行って、私の最期を見せたくない」
「宛如姐姐…」
「来世も姉妹同然の幼なじみになりましょう…」



王儇が皇子を抱いて昭陽殿を出ると、外はすでに日も暮れ、雨だった。
すると雷鳴に驚いた皇子が泣き始めてしまう。


王儇は小皇子を抱いて式乾殿に戻った。
大臣や妃嬪たちは殿前でひざまずき、静かに皇帝を見送っている。
殿内では精魂尽き果てた皇太后が書斎で居眠りしていた。
王儇は皇太后を起こさないようそっと寝所へ入り、風前の灯となった子隆に息子を会わせる。
「子隆哥哥、静児を連れて来ました…抱いてあげて」

「阿嫵…すまない、昔から申し訳ないと思っていたが、今はさらに…豫章王にも申し訳ない」
「誰の仕業なの?」
「…阿嫵…余の過ちだ…実は…権力への欲望に目がくらみ、悪事を働いた…」
すると子隆は帝位の恐ろしさを思い出して急に胸騒ぎを覚えた。
実は皇位を静児に継承させるよう言い残したが、まるで我が子を火の中に放り入れたも同然ではないだろうか。
「この宮殿では母上すらも信用できぬ…信用できるのは阿嫵、お前だけだ、お前を信じる」
その時、皇帝の声に気づいた皇太后がふと目を覚ました。
<隆児!…隆児?!…母ならここにいますよ!
子隆は母の足音に気づき、最期の力を振り絞って訴えた。
「早く行け…静児を連れて逃げろ…できるだけ遠くへ行くのだ…急げっ…」



皇太后は阿嫵が寝所に来ていたとも知らず、息子の枕元に駆けつけた。
すると子隆は夢を見ていたと話し、急に身体を起こす。
皇太后は息子を腕に抱くと、子隆は母の腕の中で短い人生を振り返りながら、息を引き取った。
「はっ!隆児…隆児ぁぁぁぁぁ!」

一方、脇殿から抜け出した王儇は鳳池(ホウチ)宮へ戻らず、そのまま馬車に乗り込んで永華門に向かった。
蘇錦児(ソキンジ)は窓を開けて皇后の令牌を差し出すと、警戒中の将軍が中を確認する。
奇しくもこの緊迫した状況で再び相見えた王儇と魏(ギ)将軍、すると将軍は黙って窓を閉めた。
その時、皇帝の崩御を知らせる鐘が鳴り響く。
衛兵たちは宮殿に向かって一斉にひざまずくと、王儇はその隙に馬車を走らせた。

激しい雷雨の中、誰かの馬車が疾走する王儇たちの馬車の行く手を阻んだ。
もしや自分たちの不在に気づいた皇太后が追っ手を差し向けたのだろうか。
しかしそれは護衛・龐癸(ホウキ)の隊伍だった。
「龐癸です!王妃、本日の午後、情報が入って来ました
 皇帝の窮地を知って調査したところ、寧朔(ネイサク)軍の兵は帰京しておらぬ上、
 皇帝の刺客事件に大王が関与しているようです」
王府の危険を察知した龐癸は独断で屋敷を整理、使用人を解雇して護衛は姿を隠したという。
「よくやったわ…すぐ皇都を出ましょう」

皇帝の崩御に打ちひしがれる皇太后、そこへ丞相・温宗慎(オンシュウシン)がやって来た。
実は禁衛軍のわずかな生き残りが帰京し、方大勇(ホウダイユウ)が軍を率いて寧朔軍を山谷で包囲したが、相打ち死したと報告したという。
「つまり豫章王も死んだと?」
「はい、近くの村から情報を受けて駆けつけると、方大勇と豫章王の亡骸があったそうです」
皇太后は豫章王の死を知り歓喜したが、それだけでは到底、怒りが収まらなかった。
「誰か!豫章王妃を捕らえ、関係のある者は全員、投獄しなさい!」
すると桂嬷嬷が駆けつけ、王妃が小皇子を連れて宮殿を脱出したと報告する。
逆上した皇太后はすぐ皇子を取り戻せと命じたが、そのまま卒倒した。

皇太后の意識は戻ったものの、脳の病は悪化していた。
太医の見立てではこれから度々、意識が混乱すると思われ、根治は難しいという。
わずか1日の間に皇帝の崩御、皇后の殉葬、そして皇子が失踪し、皇太后が病に倒れた。
まるで天がこの国を滅ぼそうとしているかのよう、温宗慎はついに覚悟を決めて皇太后を見舞った。

皇太后は温宗慎の姿を見つけると、重い身体を起こした。
この大局を安定させることができるのは温宗慎だけ、皇太后はかつての想い人に熱い信頼を寄せる。
しかし温宗慎は国のために直ちに君主を立てるべきだと上奏した。
大成の士族は王・謝・顧・温、温氏も王氏とまではいかなくても由緒正しき家柄だという。
その意味を察した皇太后は再び興奮し、帝位を継ぐのは静児だけだと反発した。
「しかし太后、皇位が空けば国は不利になります!士族も同意せぬでしょう」
「…私は人を見誤った、温宗慎、出て行って!」

皇太后は金全(キンゼン)を呼ぶよう命じた。
そこで侍女・朝雲(チョウウン)は監禁している金全の元へ急ぐ。
「密令よ、太后のために重要な仕事を…」

つづく


( ๑≧ꇴ≦)いよいよシーズン3へ!
それにしてもパンダ、仕事早すぎw





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最終更新日  2023.04.04 19:17:59
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