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2013.04.06
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カテゴリ: 中村とうよう
ポピュラー音楽の世紀


著書を少しずつ読み直しています。今夜は、1999年
9月20日に発行された岩波新書『ポピュラー音楽の世
紀』の中から、ソンが成立するまでのキューバの融合音
楽の歴史のエッセンスを紹介します。


ラ・パロマは、1859年に出版され、世界的に大ヒッ
ト。リズムはハバネラ。キューバで生まれたリズムで名
称もハバナに因んでいる。作曲家イラディエールは若い
頃キューバに住んでいた。スペイン人によって送り出さ


"La Paloma"

カリブ海の多くの島々で、ハバネラが出てきた19世紀
よりずっと前からアフリカとヨーロッパのリズムが融合
して、様々な新しい民衆文化を生み育てていた。そのな
かからポピュラー音楽が開花していく。世界で一番早く
ポピュラー音楽が芽ばえたのは、カリブ海と南アジア・
東南アジアだ。

コロンブスたちのカリブ到達とヴァスコ船団のインド洋
横断に始まるヨーロッパとアメリカ大陸やアジアとの出
会い、アメリカ大陸に黒人奴隷が連れ込まれたことによ
るアフリカとの出会いこそ、世界史上で最大のインパク
トを持つ空前の文化衝突であった。ポピュラー音楽もそ


近代以降の世界の歴史は、表面的にはヨーロッパ・アメ
リカを中心に動いてきた。しかし、中心たるヨーロッパ
のはなばなしい発展は、周縁化したカリブ海・南アジア
からの略奪があって初めて成り立った。周縁は、従属化
という形での発展を、むしろ先進国よりも先に、なし遂


融合文化の形成はどのような条件のもとで起きるのか。
19世紀のカリブ海では、労働力を満たすために放り込
まれた下層ヨーロッパ人たちは、それぞれの故郷を捨て
去って新しいカリブ人に生まれ変わって生きてゆくしか
なかった。彼らは、強いインパクトを持つ民衆文化を必
要とした。

それが、躍動するアフリカン・リズムによって身体性を
なまなましく表現する踊りの音楽だったのは、当然の成
りゆきだろう。19世紀カリブ社会のテンションは、ジ
ャズを作ったニューオリンズよりも高かった。こうして
生み育てられた新しい融合音楽が熟成したのが、ハバネ
ラだった。

白人たちもヨーロッパ的な音楽伝統だけでは充分に生き
てはゆけないことを自覚せざるを得なかった。体の奥か
ら揺さぶってくれるようなビートを求めてやまなかった
。その欲求に応えられるのは、肉体の解放による満足感
と高い精神的な喜びとを合一させたアフリカのダンス音
楽しかない。

融合音楽のなかにアフリカン・ビートの魂がどれだけ息
づいているか。ジャズは、ハーモニーや演奏テクニック
などヨーロッパ的な価値観に進みがちだった。カリブの
島々の音楽は、コミュニティを基盤としてアフリカン・
ビートの生命力を受け継ぎ、強固なアイデンティティを
保った。

キューバでは、スペイン系の白人農民は内陸部で砂糖き
びやタバコを作り、奴隷の子孫である黒人たちの多くは
都市のスラム地区でコミュニティを作って単純労働で暮
らしてきた。白人農民のスペイン系音楽がグァヒーラ、
黒人宗教音楽がサンテリーアやニャーニゴ、黒人世俗音
楽がルンバ。

ルンバは、声自慢の男が最近の出来事などを即興的に歌
い、他の全員がコーラスを挟む、コール・アンド・レス
ポンスの形。踊りは男女が対になり、タイコが踊り手に
サインを出す。歌、打楽器、踊りが三位一体となってひ
とつの世界を作り出す。

Carlos Embale y Coro Folklórico "El Edén de los Roncos""Consuélate como yo"

キューバの黒人たちがカトリックの聖者の像を礼拝して
いたとしても、心の中ではアフリカ生まれの神々を歌と
タイコと踊りで礼拝してきた。こうした宗教活動がアフ
リカン・ビートの保存装置となり、コミュニティの結束
を保つ役目を果たした。

Merceditas Valdés "Shango"

キューバでは19世紀末にはギター伴奏でじっくり聞か
せる歌カンシォーンが重要な存在となっていた。白人っ
ぽいきれいなメロディと聞こえても、そこには黒人の感
覚が入っていて節回しの微妙な味わいやリズムのノリに
影響しているのである。

Maria Teresa Vera "Veinte Años"

キューバ音楽は1910年代後半のソンの成立で新しい
段階を迎えた。ソンは、ほぼ対等と思える黒人と白人の
協力で生まれた点で、世界に類例のない音楽だ。誰の耳
にもまぎれもなく20世紀大衆のダンス音楽であり、ポ
ピュラー音楽であった。

Septeto Típico Habanero "Como Esta Miguel" Conjunto Típico Cubano "Dulce Habanera" Septeto Típico Habanero ""El Florero"

ソンは、スペイン色の濃い歌の主題部と、アフリカ的な
繰り返しの部分とから成る。簡単なイントロのあと、主
題部をリード・ヴォーカルが歌い、繰り返しのパート
(モントゥーノ)をリード・ヴォーカルと全員のコーラス
の掛け合いで演奏する。

Septeto Típico Habanero " El Tomatero"" Elena la Cumbanchera" Conjunto Típico Cubano "En el Silencio de la Noche"

ソンのバンドが使う楽器は、トレースという小型で高く
響くギター、普通のギター、ベース、マラカス、クラー
ベス、ボンゴの6種。半数がヨーロッパ系の弦楽器、半
数はアフリカ系の打楽器。1920年代後半にはトラン
ペットが加わった。

Septeto Típico Habanero "Junto al Rio""A la Loma de Belen" Conjunto Típico Cubano "Maltrato"

クラーベスは、2小節に5つの決まったビートを打つ。
前半1小節の3打は、ハバネラの基本でもあったスペイ
ン系ダンス音楽のリズムを受け継ぐ。後半1小節の2打
は、シンコペーションで始まり、アフリカン・ビートの
躍動感が生きている。

Conjunto Típico Cubano "Nieves""Tiene Son y Guanguaco""Tres Lindas Cubanas"

イグナシオ・ピニェイロは、ハバナの黒人居住区で生ま
れた。マリア・テレサ・ベラのベーシストを経て、19
27年にセプテート・ナシォナールを結成。セカンド・
ヴォーカルの対位的な絡み方、トレースのビートの効い
たフレージングが特徴。

Septeto Nacional de Ignacio Piñeiro "Esas No Son Cubanas"

トリオ・マタモロスは1925年から1960年まで3
5年間、同じメンバーで活動。ミゲール・マタモロスの
書く曲は、古くからキューバの民衆が歌ってきた民謡の
伝統を守った親しみやすい曲で、味わい深いフレーズが
散りばめられている。

Trio Matamoros "Reclamo Místico""Olvido"

ロス・コンパドレスは、ロレンソ・イエレスェーロとレ
イナルドの兄弟。ロレンソはマリア・テレサ・ベラの伴
奏者を17年つとめた。1949年からデュエットで活
動。オリエンテ州の伝統を受け継ぎながら現代に生きる
キューバ音楽を創造。

Duo Los Compadres "Frutas De Caney"

モダン・グァヒーラは、キューバの内陸部で砂糖きびや
タバコを作っていたスペイン系の白人農民の民謡が、ソ
ンの影響を受けたもの。ややスパニッシュ的なメロディ
にパーカッションも加えた伴奏がつき、艶と丸みのある
声で生き生きと歌う。

Ramon Veloz y Conjunto Saborit "Amorosa Guajira"





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Last updated  2021.09.05 05:46:41
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