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なんかもう1月も終わりなんですね。どうしようどうしようと意味もなく焦ってみたり。こーゆーときこそ、一休さんがヒツヨウだ。ひとやすみ、ひとやすみ。なんか毎年、この時期、マンガが読みたくなるんです。今気になっているのは蟲師。いい加減、流行に乗り遅れておりますが。こないだちょこっと一巻をめくったら、とりあえず第一話が超ツボでした。やばい、はまりそう。あと気になっているのは「おおふり」こと「大きく振りかぶって」二年にいっぺん、野球マンガにはまるんですよねー。周期がまた来てるのかなって。二年前にはまったのは「H2」だったんですけどね。(クロスゲームも気になってる。むー。)で、四年前にはまりまくったのが、「ドカベン」いや、まじで。オリックスの試合見に行ったくらい。(なんだそりゃ。)当時連載していたのが「ドカベン プロ野球編」でクセ者・殿馬がオリックスの選手だったんですもの~。殿馬ってあの人です、ず~らず~ら言ってて、小さい子。秘打・白鳥の湖とか打っちゃう子。どうも水島新司はバレエと音楽の区別がついてないんじゃないかと思いますが。(ダマレ)いっとう好きキャラは、女子の定番、里中ちゃんです。プロ野球編の里中ちゃん、すごーいかわいいんですよ!まつ毛長くって女の子みたいで……。まわりがプロ野球選手ばっかりなのに、あいかわらず華奢に描いてあるので、愛らしさが際立っちゃってます。「ピンクが似合う」(作中ママ)らしいし。あ、里中ちゃんはロッテマリーンズに在籍されてました。どうも私がロッテの渡辺さんを好きなのは、里中ちゃんの影響ではないかと……ごほごほ。おたくですみません。(ヤクルトの石川も好きー。カープだったら仁部くん。12球団で一番ちっちゃい投手。今年もがんばれ。めざせ一軍定着!)でまあ、プロ野球編の里中ちゃんに惚れてしまったワタクシはかの方の高校時代の面影を求めて、秋田まんが文庫で「ドカベン」と「大甲子園」の大人買いをしたのでした。いやあ、おもしろかった。特に「大甲子園」の中西球道との一騎打ちには、いい年して泣いたもん。あ、でも一番好きな里中ちゃんは真田一球との試合で、最後、一球さんの大飛球を採って、(ニコ…)とする里中ちゃんですけどね。ニコ!ですよ!!たまらん。「ドカベン」一番最初の頃は山田も野球やってないし(柔道やってる)里中ちゃんも出てこないので、マンガ文庫だったら4巻くらいから読めばいいと思います。好きになってから読まないと、ちょっと最初の方、きつい。やっぱりもう、ずいぶん前のマンガだし。うわ、暴言。今やってるドカベンはオールスターズ編かな。ちょっと冷めちゃって、今はもう読んでないんですけど、山田の妹さっちゃんが「中学ナンバーワン美人」(作中ママ)になっちゃって、岩鬼と里中のあいだで揺れているのが微笑ましい。でも里中ちゃんにさっちゃんは似合わないと思うな。里中ちゃんのが美人だし。兄貴(山田太郎)は里中ちゃんの恋を応援しているようですが、どうやっても傍目から見ると、岩鬼とさっちゃんが両想いです。わはは。あー、朝から馬鹿なこと書いてたら目が覚めたー。さくらももこのエッセイの中で(「さるのこしかけ」だったかな?)ひと夏ドカベンのマンガを読むだけで過ごした、ベルサイユの薔薇を古本屋にうっぱらってドカベン買ったら親に怒られた……ってのを読んで(そんなにいいかあ?)なんて首を傾げてた時期もあったんですけど、なるほどはまります。そーれにしても、ドカベン、連載何年目になるんでしょうね。まだ続いてるなんて、スゴイことだなと思います。いや、ほんと。
2007年01月31日
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大島真寿美 角川文庫タイトルからふんわりと想像していたとおりの小説でした。惹句に「少女とひと夏の物語」とあるのですが、二十歳を少女と呼んではいけないでしょう。二十歳なんて、実はちっとも大人じゃない、なんて、経験者だけにわかっているよ。だけどね、やっぱり二十歳は二十歳。主人公の「とうこ」はきちんと自分を保とうと頑張っているんだから、それを少女と呼んではいけない。とうこはとうこ。それでいい。父が気がつけば死んでいて、ひとりぼっちになっていた。むかしむかし、家を出て行った母と陸は、どこにいるのかな。どうして、また夏がくるのかな。いつまで、一人でいればいいのかな。ほんとうに、もう誰も、かえってこないのかな。すこぅしむかしの、少女マンガの雰囲気です。センシティヴでオカルトちっく。ハッピーぽくて、ピースっぽい。トライアングルを透き通る水の中でカツンと打てば、あ、息を止めてもぐるプールの日輪の中、音が波紋を広げていくよ。そんな話。よわよわしい話だけれど、会えない人に会いたい夜に、水音聴きながら読むと沁みこんでくると思います。うそっぽくてもハッピーぽければ、心をなだめて眠れるもんです。マタアイマショウ、おやすみなさい。
2007年01月29日
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今日はRADWIMPSのライブのチケットの発売日なのですが、ぴあにも行かずにまだ家にいます。晩には出るつもりだけれど、残ってるかな。なに、この欲のなさ。それとも一週間前に初めて知ったバンドのライブにもう行こうってのは、欲望強いってことなのかしら。それにしてもライブハウスに行こうってのは実は10年ぶりで、そんな欲かきたててくるRADWIMPSってのはすごいバンドだと思います。あまりに心騒ぐので、本が読めないんですよ。なんでこんな「今」しかない歌、作るのかな。感情浮ついても、理性が土台にあって、澄み渡る感じ。歌でこんな表現されちゃうと、かなわないですよ。「セツナレンサ」なんか、たまらん。私は小説という表現形態を心から愛しているので、こんな音楽を聴いてしまうと、心から悔しくなります。
2007年01月27日
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昨日はなんとか7時にお仕事を切り上げることができたので、ひさびさ息をつく。亡くなったともだちの残したピアノの楽譜を大きな紙袋いっぱいにいただいた。ありがとう。頭を下げた。捨てるのは嫌だったから。あの人の大事な人は笑った。この人たちを残していったんだから、あの人はやっぱりひどい人だと思う。楽譜を開いたら、どこか筆跡が残っているようで、まだ開けない。ピアノに立てあるのを一緒にのぞきこんだ日曜日の午後の記憶、あの日ながめた黄ばんだページを探しはじめそうな自分を肯定しきれなくて、まだひとまとめのまま部屋においてある。ゆっくり。時間ができたら。自分が清澄に保てるときに、開きたいなと思う。休日出勤も二箇所勤務も残業も、できない、と放り投げたら、誰もあきらめてくれるだろう。それをしないのは、投げ出す自分が嫌だから。それなら堪えて、誰にもあたらなければいいのに、些細なきっかけに燃え上がる負のオーラ。なんで自分ばっかり。なんて考えたら、損をするのは自分なのに。追い詰められるな。余裕を持てよ。まだ道幅は広いから、東西南北、どちらにも行ける。やさしくなりたいな。きれいごとしかしりたくないな。かすみだけ、たべようか。けどそんなわけにもいかなくて、今日も鶏肉を食べるわけです。昨日から、白秋のうたの一部分だけ思い出して、頭の中をくるくるめぐる。――雪よ林檎の香のごとくふれ
2007年01月25日
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すげーいい、まじでいい。言葉遣い変わっちゃうほど、すごくいい。RADWIMPS 4 おかずのごはん昨日、CD屋に行って、流れているの聴いて、(あ、きた)てんで買いました。好きになれる歌って実はとても少ない。好きになれる人とめぐり合えるのと同じくらいの奇跡。ねえ、みつけたよ。この歌をみつけたよ。どかんとせつないのがいいです。曲はあっという間に後ろに行ってしまうのに、声がするり耳元に残る。一瞬。振り向いても歌は見えない。「ふたりごと」 とか 「セツナレンサ」 とか、すごく好きです。CD屋で一聴き惚れしたのは 「me me she」 僕が例えば他の人と結ばれたとして 二人の間に命が宿ったとして その中にもきっと 君の遺伝子もそっと まぎれこんでいるだろうそんなに好きなら、別れたりするんじゃないよ。と少し泣きたい気持ちで思う。
2007年01月22日
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村上春樹 佐々木マキ 講談社絵本。きれいな絵と、ひらがなの多い大きな文字。読みやすいけど、ユメがあちこち散らばっているので、ひとつひとつに戯れるなら、先になかなか進めません。迷う迷う、夢の迷路。月の光の作る道。佐々木マキの絵がすごくいいです。色がぱきんとしていて、線でくぎられて、輪郭際立っているのに、あくむ。羊男のイラストをかけるのは、佐々木マキしかいないと思います。かわいすぎてもいけないし、グロテスクでもいけないし。それにしても村上春樹の作品によく出てくる羊男とは何でしょう。と、思うのがまた楽しい。こわい話です。さみしい。読んだあと、宙ぶらりんになるような。すきな表現、抜き出します。以下、白文字で。見ているだけで目が痛くなるくらいきれいな女の子だった。手足も首も、ちょっと力を入れただけでぽきんと折れてしまいそうなくらい細かった。長いまっすぐな髪は宝石でもとかしこんだみたいにきらきらと光っている。小さな両手は、きちんと並べてひざに置かれている。彼女は朝の光をうけた、せん細なガラスのおきものみたいに見えた。私、美少女、好きです。
2007年01月20日
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大槻ケンヂ 角川ホラー文庫大槻ケンヂの音楽は(申しわけないことに)いっかいも聴いたことないんですけど、小説はスゴク好き。グロテスクで気持ち悪くてエロティックでせつないの。うまいなあ、と思う。15歳から17歳の少女たちが原因不明の死をとげて、ステーシーとしてよみがえる。ステーシー……人肉を喰らう少女ゾンビ。彼女たちにもはや人格はない。痛みもない。生きていない。ただの危険な死体。ゾンビは肌の上にあわく光る燐粉をまとって、ただ行き会う人を殺戮する。だから、再殺しなければならない。娘を、妹を、恋人を。165分割して、再殺しなければならない。ステーシー化する前の少女たちに、人はひどくやさしい。ニアデスハピネスと呼ばれる多幸的な表情を浮かべて、彼女たちはふわふわと街を歩いてケタケタ笑う。ステーシー化をおそれはしない。「もうじきよ。もうじきに私は死んでステーシーになってしまうから、」「ねえ、私の再殺の権利、もらって?」彼女たちは笑う。ねえ、私の運命の人に、なってくれない?そんな話。必要以上にセンチメンタルじゃありません。だからって悲しくないわけじゃない。セツナ。序章が一番よかったです。これだけ取り出して短編にしてもいいんじゃないかと思うくらい。設定が強烈なので、ばさっと日常切り落として、切り口だけ見せた方が効果的だと思うので。エログロが好きなら全編どうぞ。こんなの書く人、今はいないと思います。よく書いたよなあ、ほんと。いろんな意味で、出版社の倫理規定によくひっかからなかったなと感心する。バランスが崩れている本なので、受け入れられない人は全く受け入れられないと思う。本を読みなれている人が読まないと、危険な本。そんな印象。
2007年01月19日
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いま営業所にヘルプで入っていて、あと本社のもともとの自分の仕事もしているんですけどね。 営業所で3時まで仕事して、それから本社に戻って21時までお仕事して、おお、それぞれの場所で7時間勤務。 本社の本来の仕事はこなせてます。 でも、本社の臨時の仕事や、共有の仕事が、ちょいと過剰な感じです。 営業所にヘルプで入れるのは、たまたまその業務を知っている私だけなので、私が二箇所勤務になるのはかまわないんですけれど、じゃあその分、本社の仕事、少し考えてくれないだろうか。本社の仕事、臨時の業務を私をはずして割り振ってくれるなら、営業所にもう一日、行けるのに。 と、言っていたら、 「自分の本社の係は忙しいんだから、あんたをはずして臨時業務を割り振るなんて、ムリだろう。」 と言われました。 なんかもやもやしたものの、そのときは(ムリなのかなあ)と黙ったんだけど。 やっぱり違うよね。私にはたまたま私しかできないからってかぶせられちゃった臨時業務が一つすでにあるわけで、じゃあ他の人でもできる臨時業務を等価でかぶせてくるのが、まずいちばん最初におかしいじゃないか。 頭が悪くていけません。すぐ反論ができないよ。 3時に本社に帰ってきたら、私の仕事はそのままそこにおいてありました。明日締め切りなんですけどね。同じ係の人は、臨時業務に出てました。自分の仕事に手をつけないで。 ねえ、あなたの本来業務、私が手伝わないと間に合わない量、残っているよ? その臨時業務に携わるのは、今日でなくても、良かったでしょ??どうしてその順番で仕事をするの。 年上で上司なら、私よりも勤務経験があるんなら、もう少し、効率とか能率とか優先順位とか、考えようよ。 それでも、その人より先に帰るワタクシ。 自分の仕事は一件残して片付きました。この1件は複雑そうなので日を変えて、朝のさわやかな頭で片付けて、そうしたら、その人を気兼ねさせることなく、その人の仕事手伝うこともできるわけで。手伝いってのは相手の負担にならないでこその手伝いで、仕事ってのは業務をこなして初めて仕事なのっ! がんばっても間に合わないなら、間に合う方法、考えようよ。結果、人を頼ることになるとしても、もう少し、考えようよ。水曜日、気遣ってくれる友人に「死ぬなよ」と言われました。Vサインで答えときました。伊達に「親方」とあだ名されてないもんね。やっちゃる。
2007年01月19日
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雨の降る日は、開かない目が心地よい。くたりくたり。ベッドでもソファでもフローリングの床にでも、もういっそのこと、崩れこもうか。ああ観葉植物も眠そうだ。赤い花のつぼみが、ねったり頭を垂れている。花びらのあいだの空気は、きっとほのかに温いだろう。硝子の針でひっかけるなら、空気の層をてのひらにのせられるかな。昨日の晩、しっとりと冬の雨にぬれたコートが部屋にかかっている。まだ乾かない。
2007年01月17日
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氷室冴子 集英社コバルト文庫……もう買えないんだろうなあ。同世代の女子なら、みんな知ってるんじゃないかと思うけど。(いや、それは「なぎさボーイ」に「多恵子ガール」か……これ何年か前に古本屋で買いなおしたんですけどね。おもしろいですね、やっぱり。多恵子ガールにはキキララのびんせんなんかが出てきて、それがまた懐かしくてかわいい。)「シンデレラ迷宮」「シンデレラ ミステリー」続けて読みましたよ。正統派少女小説でとても楽しい。今のコバルト文庫よりも比較的文字が小さくて、行間が狭くて、お話が長い気がします。文章がしっかり書いてあるせいかもしれないけど。愛されることに餓えている思春期の少女が「人を愛すること」に傷ついて物語世界の中に逃げてくるお話なんですけどね。白雪姫、眠り姫。「白鳥の湖」に「ジェインエア」。メジャーなおとぎ話の新解釈でもあるのです。ジェインエアはおとぎばなしとは違うけど……いやおとぎばなしなのかしら。あれも。ジェイン・エア本編には執拗にジェインは不細工だと書いてあったのですが、こちらのジェインはわりと美人です。うん、少女小説だからね。ジェインエア本編はねえ、作家が女性だとはいえ、ここまで執拗にジェインの美を否定しないでもって感じなんですよ。やさしい女姉妹が「この人は意志の強そうな顔立ちだわ」なんて言ったら「だが美人ではない。それは確かだ」なんて兄貴が言うの。ひどくない?この兄貴がジェインに求婚したときには、正直、ザマーミロと思いました。「あの人はピカロだわ。平気で人を裏切るわ。人の心を弄んで、笑っているのよ。嘘をつくことなんか、なんとも思ってやしない。何人もの人が彼のためにどれだけ傷ついたか……」「でも、それでも彼を愛していると、心が叫ぶの。魂が叫ぶのよ……」当時から大時代的な言い回しだと思っていましたが、今読んでもやっぱり大時代的だ。古きよき少女小説、正統派家庭小説のおもむきがあって、いいなと思う。この物語はきっと、これ以上古くはならないんだろうなっていう安心感。私、少女小説、好きです。たぶん、ずーっと好きだと思う。
2007年01月16日
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でもこういう脱力系は好きである。
2007年01月14日
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長野まゆみ 河出書房新社単行本化されなかった幻の初期作品が甦るデビュー10周年企画、で出版された本みたい。図書館で借りました。この本、1998年に出ているから、じゃあ来年で長野まゆみはデビュー20周年になられるんですね。この頃の作風は好みではないので手に取ることもなくなったけれど、20年、コアなファンを持ち続ける作家でいらっしゃるのだから、やはりこのお方は魔物だと思います。だって初期作品を、私は未だに愛してる。この本には「カンパネルラ」と「銀木犀」が収録されてます。幻の初期作品だそうですが、私はどっちも文庫で持ってます。この時期、月間長野まゆみって感じで毎月単行本出てたんですよねー。広島駅の本屋さんで通学途中に狂喜して買った思い出があります。「夏至祭」とか、「夏期休暇」とか……好きだったなあ。この頃の話はほんとうに。カンパネルラ、カンパネラ、カムパネルラ、カムパネルリ。私はエセ文学愛好家なので、どれが彼のほんとうの名前なのか存じません。「銀河鉄道の夜」もどれがほんとうのおわりなのやら、自分の好みすら見極めきれない状態です。で、長野まゆみの「カンパネルラ」これは巻頭にあるとおり、「失われた風景の上に、少年(きみ)の名を書く」ための「カンパネルラ」だと思われる。ジョバンニでもいいんでしょうけど。ザネリでもよいんでしょうけど。すりぬけて消えてしまった少年は、永遠にそこにとどまる少年は、カンパネルラだけなので。すきとおったほんとうのたべもののような小説ではなく、関口巽が女の人だったらこんな小説書くんじゃないの?って雰囲気なのですが(特に「銀木犀」! 植物にとりこまれて泥と水の中、永久に眠る……関口くんの小説まんまじゃないですか?)、この向こう側に渡る空気がお好きな人にはたまらない物語。「死んだ鳥の躰の中の卵を食べるとね、ずっと少年のままでいられるんだよ。」←白文字引用。こんな雰囲気です。
2007年01月13日
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今、「しをんのしおり」読んでます。しをん大先生ったら、久生十蘭の「湖畔」にふれていらっしゃってね、ああ久生十蘭ってすっごく貧乏だったから「食うとらん!」って筆名つけたって話は本当なのかしらん、などと思い返しておりましたところ。超絶同感文章発見!!「この『どこがエッチなわけでもないのだが、濃厚にエロティックだ』というテイストが私はとても好きである。ケーキではなく和菓子のエロティシズムとでも言おうか。半透明の白いぎゅうひから、中の薄桃色の餡がほんのり透けて見えているような……。そして食べてみると、意に反してほのかな苦味が口の中に広がるのさ。ちょっとびっくり。でもやみつき。」あああああ、サイコー!!てんで、私もとばしていいですか?たとえば、中井英夫。「薔薇の獄 ― もしくは鳥の匂いのする少年」なんて、タイトルだけで、くらりときません?これ、トランプ譚の二作目「悪夢の骨牌」に収録されているんですけどね。私は白水Uブックスの日本幻想小説傑作集に収録されているので読んだのが初読なんですけどね。「悪夢の骨牌」の中に据えて読むより、一編とりだして読む方が、「薔薇の獄 ― もしくは鳥の匂いのする少年」はいいような気がする。ざわついた雰囲気から離れて、ひとつ、静謐です。トランプ譚は一冊目の「幻想博物館」が一番いいと思うけど、「薔薇の獄 ― もしくは鳥の匂いのする少年」は別格で好きです。あと、ぎりぎりのとこで踏みとどまってエロティックだった小説としてまっさきに頭に浮かぶのは長野まゆみの「テレヴィジョン・シティ」だったりします。こーれーはー、本っ当に!やらしいんですよ。男の子しか出てこないんですけど、ものっすごく濃密な雰囲気。でも決して、色恋の話ではなくて。アナナスとイーイーという名の少年が中心人物なんですけど、読み始めたときは(変な名前で読みにくい)って思っていたはずなのに、読み終わったときには半ば涙を浮かべて「なんて綺麗な名前なんだろ!」とひっしと本を抱きしめてました。読んでいてあまりのエロスに一分間、息が止まって先が読めずに床に転がってしまった台詞、今でも鮮明に思い出せます。けど恥ずかしくてつぶやけない。どこ?と問われたら、たぶん、5秒でそこのページを開けるんだけど。ほら、読んだことある人、わかるでしょ?あそこですよ、あそこ!「ねえ、アナナス」ってとこから続くあの言葉!とにかくとにかく、初読の衝撃がすごいです。読み終わって、3日くらい、ぼんやりしてた。再読したら、意外と(なんだ、こんな話だったっけ?)って軽かったんですけど。私は初読の快感が忘れられなくて、この小説、一度忘れ去ってしまいたいと一生懸命努力しているんですけれど、ああ、また思い出しちゃったじゃんかー。どうしよう、〆の一文まで完璧に思い出してしまった。どうしようどうしよう、涙出てきた。ああイーイー、大好きだー。(でも一番好きなのはアナナス。)長野まゆみはテレヴィジョンシティ以降、赤裸々にエロティックな方向に発展してしまって、今では滅多に手にとったりもしないんですが。まどろっこしいエロスが好きなら、初期作品はすべておすすめです。少年は恋の一歩手前で立ち止まる。執着も透き通って、美しい。水密の雫。むっつりでもなんでもいいさね。私は和菓子なエロスが好きです。しをん先生、ありがとう。うわ、テレヴィジョン・シティ、画像がなかった。河出文庫から出てます。上下巻。中井英夫の「悪夢の骨牌」は古本屋で探すか、講談社文庫で出ている中井英夫全集の3巻で読むかかなー。この「中井英夫全集 3巻」はトランプ譚が全部入っている分お得じゃないかと思います。
2007年01月12日
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私はわりと健胃家で、朝からしっかり食べちゃいます。カレーでも唐揚げでもなんでもこい!でもって、この頃、お仕事が立て込んでいて12時間労働です。家に帰ると21時を回ってる。お腹すいてるけど、PCのぞきながらポテチつまんでもういいや。お風呂に入って23時にはお休みなさいって火曜、水曜。今日、木曜日。起き抜けにがっつりお腹がすいていました。あ、昨日、うどん玉買ったんだった。鍋焼きうどん作ろう。鶏肉入れて、たまご落として、水菜をちぎって、ぐつぐつやって。あったかくって、結構いいなと思いました。100円ショップの土鍋に感謝。こどものころ、夕飯にスキヤキをやったとき、翌日の朝食はスキヤキの残りにご飯いれて煮たお粥さんだったなあ。あれもけっこう、好きでした。
2007年01月11日
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大崎梢 東京創元社 ミステリ・フロンティアあえて「ミステリはお好き?」のテーマを選ばなかったよ。本屋さんのお話だったから、こりゃ、「本のある暮らし」の方が適当でしょう、と思ったので。本にまつわるミステリー(たとえば「六の宮の姫君」のような)ではなくて、書店員さんが本屋さんでお勤めしながら突き当たる日常の謎の物語。本の配達の途中で出会ってしまった災いとか、お見舞いの本を選んでくれた人を探し出そうとするロマンスとか、亡き人の最後の言葉が一冊の本に出会うことからほどけていったりとか……あら、やっぱり本にまつわるミステリーなのかしら。でも、この場合の本って、四角くて形のしっかりした「本」なのです。「情報」としての本ではなくて、書店で日々品入れして返品される重く数多い書籍たち。書店員さんたちは手の中をただ通りすぎていく「本」という商品が誰かに愛されることを知っていて、だから、内容を知らなくても本を愛してる。本を本棚に並べるときに天地逆におけない人、枕元に本をおいても本を枕に出来ない人なら、きっとこの本、好きだと思う。ちょっと気になったのは、守秘義務。このお話に出てくる「成風堂書店」は雑誌の配達なども請け負っているから、常連さまのお名前などよくご存知です。定期購読の雑誌とか、この前お買い上げになった本とか、よくご記憶なさっています。それって顧客にとって嬉しい。いい本屋さんだと思うけど、その記録と記憶はその人のためにだけに使って欲しいなあ、と。家族が聞きにきても何の本を買ったのか話さないで。専門書の知識がありそうだからって、他人の事件にひっぱりこまないで。あの店が定期購読している雑誌はこれですよ、なんて他の店にさらさないで。私はときどきBL小説を読むけれど、それを職場の人に知られたら、泣いてしまうよ。いやまじで。図書館の守秘義務は徹底していて、個人での貸し出しの本の過去履歴すら保存されてない(はず。)なのです。(今借り出し中の本の記録ならもちろんありますよ。)本屋さんも守秘義務、準じてるもんだと思ってたんだけどなあ。私、本屋さん、好きです。昨日行った本屋さんでは「本が好きな人は本屋さんもだいすき!」ってフェアくんでました。「配達あかずきん」も並べてあって、ほんのり嬉しくなりました。続きも出ているみたいなので、また読みたいと思います。
2007年01月10日
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色鉛筆とカラーサインペン買ってきてチャレンジ!「心を癒すマンダラぬり絵」 あんまり「心を癒す」ってフレーズ、好きではないんですけれど、たんじゅんにおもしろそうだと思ったので。 何色使ってどう塗ってもよいんですって。 で、ウキウキ一枚塗ってみました。なんか私、幼稚園の頃から好きな色、変わってないです。 色鉛筆が紙にこすれる音がとても気持ちが良かった! 本を買ったときから「怖くない?あやしくない?」 って懐疑的だった連れができあがりを見て 「僕も塗っていい?」 いいさねいいさね。 ぬり絵は、40枚もあるんだからさ。あ、図柄は違ってますけどね。 人が塗ったマンダラをむしろ見てみたいと思います。 ちりぢり色くるくる円。 きっとそれぞれきれいでしょう。
2007年01月08日
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アレックス・シアラー 原書房ちょっとだけ未来なのかもしれない話。人たちは老いを拒んでいる。アンチ・エイジング!老化防止薬を40代から飲み始め、そこで老化を拒むのだけれど、120か150を超えるころ、肉体は生きる力をなくして、突然の死を迎えてしまう。でも、その頃には、もう生きることにも飽いているから。あまり悔いはない。悔いがあるとしたら?それは「こども」をもてなかったこと。おもいきり、こどもを愛でることができなかったこと。そう、人々は老化を手放すと同時に、生殖能力を失ったのだ。子どもが誕生するのはごく稀な出来事になってしまった。「こども」でいることは価値のあること。だから、こどものままでいる手術を受けないかい?それで、こどものまま、ショービジネスの世界に入ってみないかい?何もできなくても大丈夫。木登りをしたり、キャッチボールをしたり、二段ベッドの上の段を取り合ったり、そんな「男の子らしい」ことをしているだけでいい。大人は涙を流して、ブラボーを叫ぶよ!主人公、タリンは、そのごくごく稀な本当のこども。希少価値ゆえに実の両親の元から誘拐され、「レンタルこども」として商売のタネになり、大金持ちはタリンを買い取ろうとする。いや、タリンではなく「男の子」を!少子高齢化の話じゃん。と言ってしまえば、一言で終わっちゃうんですけどね。たとえば新井素子の「チグリスとユーフラテス」の最初も似た話でしょう?もしかしたら、『世界でたったひとりの子』ってのは、星が見始めた悪夢なのかもしれないなあ、と。シチュエーションをもてあそぶように、少々くどい展開ではありましたが、だからこそタリンの焦燥はつらいほどに伝わりました。なにがこわいって、これがもうそんな目新しい設定ではなくなっているところですかね。「世界でたったひとりの子」夢物語と言い切れない。
2007年01月07日
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こどものころ、葉牡丹は熟れすぎたキャベツだと思っていました。 本当に食べられないのかな。 重なった葉の間に溶けた雪が光っていました。 葉牡丹は曼陀羅に似ている。 触れると壊れるから、ただ覗きこみ甘露の在処を確かめる。 ああ良いものが無くならなければいいなあ。
2007年01月06日
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昨日が仕事始め。いきなり12時間労働で年始の涼やかな気分ふっとぶ勢いです。 ばたばたと総務に物品もらいにいって途中で指名電話かかって物品、散らかして。 やさしいバイトさんが声をかけてくれました。 「とおりさん、これなおしといていい?」 ん?なおす?文脈からして、かたづける? 「もしかして九州の人ですか?」 確か九州出身の子が使ってた。たずねると彼女はびっくりして、 「え?広島の人って『なおす』って言わないんです?」 「広島では修繕って意味でしか『なおす』ってつかいません。」 ぽやぽや話をしていたら同い年の同僚が 「修繕って言葉もまた古風な、」 つぶやいて通り過ぎました。 バイトさんは山口の人でした。お隣りの県だけど、たしかに山口の方言って広島よりも九州に近いような気がします。 なおす。 響き、やわらかくて、いいなあ。
2007年01月05日
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みなさま、元気に夢みていらっしゃいますか?年始のお休み中、睡魔とぎりぎりまで闘って本を読んでおりましたので、あんまり夢を見ませんでした。けれどその中、キョーレツに覚えている夢。ゴジラと戦う、コトー先生。ばりばりばりと音を立てて飛ぶヘリの中に、コトー先生がいます。苦しげに息をしながら立ち上がり、銃を構える人たちを制して言います。「ほかのゴジラのことは知りません。けれど、ゲンさんの体のことは僕が一番よく知っています。……だから、ぼくが。」そう、かつてコトー先生の患者だったゲンさん。今やゴジラになってしまったゲンさん。苦悩の表情で銃を受け取ったコトー先生の脳裏に、人間だった頃のゲンさんの記憶がよみがえります。島の診療所に来たゲンさん。不安げな面持ちでシャツをめくる。コトー先生が聴診器を当てると冷たかったのか、びくりとした。午後の日差しに、さらされた、ゲンさんの、やせた腹。(ゲンさんはもう、不治の病に冒されていた。)気弱になることもあっただろう。そこを宇宙の邪悪な意思につけこまれて、心を手放したゴジラに変じてしまったのか。(やさしい人だったのに、)ときどきは手土産をもって診療所をたずねてくれた。どくだみのお茶や、食べ切れなかったお饅頭。咲いたばかりの彼岸花。それなのに、目の前にいるのは黒く大きなゴジラ。もう言葉は通じない。町を踏み荒らしてゴジラは雄叫びをあげる。ゴジラの左手には、ああ、なんてこと、あやかさんが!「大切な人のため、僕は、あなたを撃つ・・・・・・!」蒼白の額に髪をはりつかせて、けれど冷静に狙いを定めるコトー先生。――運命の一瞬が、いま!私ドクターコトー見たことないんですけど、こんな話なんですか?さてと、年末年始に読んだ本。日記で感想書いてないやつ。すべて再読ではあるんですけど。佐藤さとる「わんぱく天国」 中井英夫「幻想博物館」 北村薫「覆面作家」三部作(だから「オセロー」を読んだのもあり。「覆面作家の愛の歌」で演出されるオセローは衝撃的だけれど、同時に感傷的ですね。文字で読んだら陳腐だけれど、舞台にかければ映えるんじゃないかなあ。ちょっと見てみたい。) マンガも含めりゃ高橋陽介「夢幻外伝」ああ読んだ読んだ、楽しかった!
2007年01月04日
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天使が開けた密室龍の館の秘密東京創元社 谷原秋桜子かわいーなー、女子高生。なんて、表紙絵みて、うきうきしてお迎えしたですよ。私はかわいい女の子を見ているのがとても好きで、どうでもよいのですが最近は蒼井優ちゃんと宮崎あおいちゃんがお気に入りでございます。特に宮崎あおいちゃんのアフラックのCMが大好きで、あのCMが始まったらどこにいてもテレビの前にとってかえして、アヒルと一緒に歌っています。ぐわっ、ぐわっ、ぐわっ、ぐわっ、ぐわっ、ぐわっ アヒルのワルツ!でもこの「天使が開けた密室」を実写化するなら、宮崎あおいちゃんには美波役じゃなくて、かのこ役やって欲しい。とちくるった話はさておいて。富士見ミステリー文庫から創元推理文庫への移籍復刊ですから、もちろんのこと、ミステリです。でもってやっぱりラノベです。だから読みやすく、読んでいてすごく楽しい。女子高生三人出てきます。もちろんみんな美少女。主人公の美波ちゃんの容姿は、一人称だからいまいちわからないんだけど――物語の主人公なんて美少女に決まってるじゃないですか。(ジェイン・エア除く)言動や行動がいちいちかわいいです。意地っ張りで泣き虫。お人よしでよく笑う。うん、表紙の水彩画の美波ちゃん、イメージぴったりだと思います。ふわふわしたやさしい色でできているけど、輪郭きわだって、きちんとかわいいの。美波ちゃんの親友が二人いて、一人はちゃきちゃきの体育会系少女、「ハンサムな彼女」直海ちゃん。もう一人はおっとりお嬢様、かのこさん。自家用ヘリだって飛ばしちゃうし法務大臣に電話もかけちゃうぞ!みんないい子でかわいいのだ。リアリティがないって、本格推理なんてどこにリアルがあるんです?妙なつくりの館の中でばたばた連続殺人がおこるなんてね、ありゃしないんです。でも好きでしょう?ありでしょう?幻想的な雰囲気をつくって虚構を立たせるのも本格推理の手だと思ってたのですが、そうか、ユートピア小説かつ本格ってのもありなのか。目からうろこが落ちました。若い子がたくさんでてくるのに、せつない話じゃないとこが、またいいさね。謎とかトリックとかは、わりと単純。「天使の~」の方は同時収録の短編もあわせて、半分くらいでほどけてしまった。それでも、へたにこねくって、読後(ありえない)と首をかしげる謎よりは、なんぼか素直で読んでいて気持ちいい。ラノベとしても秀逸!ワンコのモネとニャンコのケンゾウもかわいいし。美波ちゃんとご近所の修矢くんとのやりとりもかわいいし。この修矢くんも、もちろん美形なのですよ。性格が悪い……って美波ちゃんは言うけれど、そこんとこもかわいい。賢いし。探偵役は誰もが彼が登場したとき思ったように、当然のごとく彼なのです。いやー、もう、そんなお約束な展開が最高。裏切られないの。ほんと、みんな、いい子。美波ちゃんのお母さん、超絶にお料理上手な和風美人もいい味出してます。そっかー、おそうめんを竹を割った器に氷とともに盛るのかー。オムレツにかけるソースは手作りかー。(朝食!)あこがれ!創元推理文庫に移籍したから、続刊も出るのでは、と思われる。新しい本の装丁が今から楽しみだったりします。やっぱり美波がぴんで表紙かなー。直とかのこも見たいんだけど!
2007年01月03日
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「何もおれから訊こうとするな。ごぞんじのとおり、ごぞんじのはずだ。この今を限りに、おれはもう一言も口をきかぬぞ。」この一言でイアーゴーという人となりは完成したよう思われる。ご存知、シェイクスピアのオセロー。みにくい嫉妬の物語、と呼べばいいのか。これはオセローの名を冠してはいるけれど、かの気高き将軍でも、その純白な奥様でもなく、ただ崩壊への道を言葉の力でひた走るイアーゴー、彼のための戯曲。言葉で招いた悲劇の釈明を彼はもはやなさない。「もう一言も口をきかぬぞ。」もしかしたら彼の妄想から発した過剰な悪意。到底納得しえない動機から欺きはなされ、その理由は語られない。陰謀の最中、彼の口はあんなにもなめらかに動いたのに!人に取り囲まれてもあまりにも孤独。イアーゴー、あなたにとって言葉とはなんだったのか。深い絶望はなぜあなたに根付いたのか。誰もあなたの絶望に気付かなかったのはなぜなのか、あなたの周りにいた人たちはなぜそんなにも愚かだったか!戯曲の筋自体は、私にとって、どうでもよろしい。イアーゴーの口をもう一度開かせるには、どうしたらいい?戯曲の始まる前に戻らねば、この悲劇は止められぬ。
2007年01月02日
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「たしかにそうだひどくふさいでいるので、もう二言三言何かいったら、きみの目から涙がこぼれてくるだろう――そら、もう出てきて、光りながら流れている。まつげから一滴こぼれて、板石の上に落ちた。さあ、ゆきなさい。おやすみ、ぼくの――」彼は言葉を切って、くちびるをかみしめ、いきなりわたしのそばをはなれた。おはよう、ぼくのかわいいともだち!ジェイン・エア、読み終わりました。西洋の少女小説とも家庭小説とも呼ばれる本を論ずるときに、ときおり「ジェイン・エア」もお仲間に加えられていることがなぜだか、感覚でわかった気がします。かわいそうなみなしご、子供のようにやせっぽちで、意思の強そうな顔立ちで、ちっともかわいい顔をしてない小さなジェイン!美しい大人の体格を持った女性ではないからこそ、周囲が持て余してしまうほどの理想への情熱と潔癖への執着でもって、彼女が感ずる堕落を拒絶する。私はたぶん、ジェインとは友達になれない気がします。それは彼女との心の感応をもってそう思う。私が振り回されて、手放せなくて、けれど生きにくいからしかたない、少しずつ空気に薄めてきたものを、ジェインったら正義だって振りかざして自分も周囲も傷つけるのだもの。ねえ、私はあなたを、ちっともうらやましいとは思わないよ。だからあなたに私を軽蔑されるのは、がまんならないよ。ハイ、これを人は「同類嫌悪」と申します。けれど西洋の古典というのは極端から極端に筋をふりますねえ。外国のものはあんまり読んだことがないので、その大きな振幅が新鮮で楽しかったです。冒頭に引いた恋の場面では本気でどきどきいたしました。物語途中の、ジェインが無一文のまま見知らぬ村で行き倒れた過酷な飢えの描写もたいへん容赦がなかったです。読み返せないほど悲惨です。佐々木丸美のゴシック感が好きな人は、ジェイン・エア好きだと思います。言い回しも似ているし。「崖の館」が創元文庫で復刊してましたけど、若竹七海が解説だったか鑑賞だったか書いてましたけど、七海さんが私よりも一世代上なのがよくわかるというか……あの少女小説的愛の表現は古典として楽しんじゃえばそれもまた一つの虚構として成り立つんだけどなあ、って小さな反論を持ちました。真っ正面から受け止めるから、(少女趣味?)って首を傾げなければならなくなるんだよ。そんなこと言っていたら、丸美さんの「忘れな草」も「花嫁人形」もとても読んでいられなくなるぢゃないか。そんなの、ひとつの損ぢゃあないか。首をかしげる前に、自分の中におきなおせばよい。それでも合わねば、本を置けばよい。小説なんて、どんな風にでも、読んでしまえばよいんだよ。そんなこと言ってはいても、七海さんも佐々木丸美を楽しんでくれたようで、それはちゃんと伝わってきたので、よい解説だと私は結論づけてます。男性諸氏に丸美さんを読んでいただこうと思ったら、若竹七海の解説がきっかけとして適任でしょう。七海さんの小説も「女流」だからと区別する人には、丸美さんの小説は「難解」だろうと思います。(男の人って損ですね。)感覚だけじゃあ、少女小説、読めないなんて。言い訳がないと、なかなか、手にとりにくいよねえ。ブロンテ姉妹といえば、ワタクシ、「嵐が丘」も未読だったり。「ガラスの仮面」のおかげで筋だけは知ってるんですけど。来年のお正月には、挑戦してみようかな。(鬼が笑いまーす。)
2007年01月02日
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あけましておめでとうございます。今年の年越しは、「ジェイン・エア」とともに。まだ読み終わってはおりません。学生の頃、古本屋で100円で購入した千趣会の世界文学全集の端本です。まるまる一冊、ジェイン・エア。読んでいると、古い本のにおいがします。除夜の鐘を聞きながら眠って、目がさめたら、お正月でした。枕もとのジェイン・エアを開きなおす前に、まずは家族にご挨拶。ご近所の氏神さまに詣でました。毎年、一度しか通らなくなった道なのですが、毎年同じように驚く自分がいます。この坂は、こんなにゆるやかだったっけ?この道は、こんなに狭い道だったっけ?この柚子の木は、こんなに大きかったけ?「この辺は小道が入り組んでいたから、かくれんぼするのがおもしろかったのに。」「ああ。新しい家が建ったからね。」母が言います。(こんな大きな通りができるまえ、小道のはしっこには柿の木のある家があって、)秋の夕方には七輪を出して、炭を炊いて、おばあさんが、サンマを焼いていたんだよ。もうその頃から、すでになつかしい景色だったから、私はびっくりして自転車を止めたっけ。おばあさんはちょっとはにかんで、私を見て笑ったっけ。黙ったまんまで、思い出しました。もう誰もいない。おばあさんも、小さな私も。いつの間にか自分よりも歩くのが遅くなった母、その飛び回るおしゃべりにただうなずいて。「家内安全」を自分が願うようになるなんて、子供のころには思わなかったな。昔どんぐり拾った遊んだ境内にゆっくりと手を合わせながら、静かに頭をたれるのでした。今年もよろしくお願いします。良い年に、なりますように。
2007年01月01日
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