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高尾すみれ

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緑と清流 神秘家の庵さん
2010.05.23
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カテゴリ: 戦国武将と城
バラ



その城を目指して将軍秀忠の行列は進んでいた。
家康の七回忌のために、日光東照宮への旅の途中で、宇都宮城を宿とする予定だった。
ところが、早馬の使者が書状を持って、行列をとらえた。
書状には、宇都宮城主の本多正純に謀叛の動きがあると書かれていた。
城内には、将軍暗殺のために吊り天井が仕掛けられ、その下を通る秀忠は落ちてくる天井の下敷きになって圧死するというので、秀忠は震え上がった。
しかも正純は、その秘密を守るために、仕掛けを作った大工や同心百名以上を殺戮したという。
秘密が漏れ出したのは、与五郎という若い大工が、一目恋人に会いたいばかりに、警戒の目を掻い潜って抜け出し、恋人に会って、その際吊り天井の秘密を恋人に話していたからだった。
与五郎は、何のための仕掛けなのかは知らなかったが、恋人になかなか会いに来られない言い訳に、吊り天井の仕掛けを作るのが大変だからと、一部始終を話したのだった。
しかし与五郎は、その日の内に惨殺されてしまった。
恋人は、与五郎に聞いた話を遺書に認めて、首をくくって死んでしまった。
娘に死なれた父親は、遺書に書いてある恐ろしい秘密を知って、家康の娘である加納殿にそれが伝わるように手配した。
加納殿は、将軍の身に一大事じゃと色めきたち、早馬で使者をおくったのだった。
ところが、吊り天井の話は正純を失脚させるための作り話だった。
将軍職を引退した後の家康は、徳川家最高の権力者で、正純はその家康の子飼いの家臣で絶大な権勢を振るっていた。
二代目の秀忠にとって、正純は目の上のたんこぶ的存在だった。
江戸に戻った秀忠は、宇都宮城を家宅捜索したが、何も見つからなかった。
それでも秀忠は、正純を江戸から遠ざけたい一心で、正純を左遷し、移封してしまった。
冤罪を蒙った正純は、必死で反論したが、秀忠に難癖をつけられ、上げ足をとられて、完全に失脚してしまった。
宇都宮城は、その後も幕府の要人が城主になり、幕末には戸田氏が治めていた。
幕末になって、勤王派についた宇都宮城は、幕府軍の猛攻撃を受け、名城と言われた城郭は跡形もなく崩れ去ってしまった。
その砲弾による火災で焼け落ちた城址に、立ちつくしている人影があった。
「あれはきっと、正純様の亡霊だろう」
城下の人々はそんな噂をし合っていた。








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Last updated  2010.05.24 06:14:06
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