23年前のことです(また、これ古い!)。
10月に入っていたと思います。
秋とは言っても、夏のように暑い一日でした。
その時は息子がお腹の中にいまして散歩の途中
その日の暑さも手伝いとても喉がかわきました。
お腹が大きいこともあってゆったりした席にかけたい
と、一人喫茶店に入っていったんです。
座るときは全然、意識しなかったのですが、私が座った席は
ピンク電話(ご存知ないかたもいらっしゃるかな?)のスグそば。
頼んだ飲み物を待っている間にそのピンク電話で電話をかけている方の後姿と
雑誌のようなものに書き込みをしているのが見えました。
そして、聞くとはなしに、その話し声も。
「ええっ、そうです。経験もあります」
と、求人誌をみて、電話をかけている様子。
普通に見られる風景で、何も変わったことはなく
その方の声の調子も特になんということもなく。
それからしばし沈黙が続いて、その男性は
思い切ったように
「おやっさん、実は、ちょっと前にムショからでたばかりです。
やり方もムショの中で教えてもらいました」と。
それから、また少しの間をおいて
「そうっすか。わかりました」と電話を切っているのが見えました。
何だか衝撃的でした。正直なところ(えっ?!)って思いました。
何となく心がザワザワして所在がなくなり
お水を飲んで一息つけたから、飲み物はきてないけど
彼が振り向く前に帰ろうかな、って。
そうこう迷っているうちに、彼はまた求人誌をめくり始めて
受話器をとりあげました。
そして、同じことが2~3回続いていました。
ここまで、長い時間ではありません。
振り向いて目があったら怖いから、後ろ姿も見ないようにしていた
最初の心のザワザワ感もすっかりなくなり
ダメで断られても、また頑張る彼の後ろ姿を祈るような気持ちで見つめていました。
(凝視?!)
何だか、彼の何回かのその絞り出すような声が
(言いたくはないけど、今言わなきゃいけないことなんだ。
今、変わらなくちゃいけないんだ)の叫びにも聞こえたから。
私の頼んだ飲み物がもうすっかり無くなる頃です。
何回か同じことをやっていたその方の声の語調が変わった瞬間がありました。
「えっ?!面接?明日?はい、もちろん行けます!!」って。
心の中でその方の後姿に(やったね!やったね!!)とつぶやいていたら
何だか涙がポロポロと出てきて、その方のはずんだ後姿に
目礼して、その店をでてきました。
その日一日、とてもあったかい気持ちにさせていただいたのを今でも覚えています。