読書地図

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2008年02月07日
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カテゴリ: 読書


 バイト先に新しい古本屋が出来たので、先日あまり期待せずひやかしに入ってみたところ、少なくともいい加減な古本屋ではなく、それなりのこだわりを持ったお店で、何冊か欲しい本が目に留まりました。その時は持ち合わせが殆どなかったので、高橋康也『ウロボロス』にするか寿岳文章『わが日わが歩み』にするか迷った挙句、寿岳さんの本を購入。寿岳さんの名前は、冨山太佳夫の『書物の未来へ』で知ったような気がしていたのですが、帰って確かめてみるとそれは勘違いで、しかも寿岳さんは英文学者であることは確かなのですが、民芸運動などにも関わっていることまで判明し(知らなかったのです)、ウィリアム・モリスと日本の民芸運動とのつながりについての文章まで書いている。そうすると、小野二郎さんの本で名前を知ったのかしらん。いずれにせよ嬉しい誤算でした。それより前にたまたまブックオフで100円で購入したばかりのW・H・ハドソン『はるかな国 とおい昔』の訳者である 寿岳しづさん が、寿岳文章さんのお連れ合いであることもWikipediaで知ってますます嬉しくなってみたり。


 で、買って返る電車の中や、家に帰って来て珈琲なぞをいれながらパラパラ読んでみたのですが、つくづく思ったのは、ああこういう本は家ではなく喫茶店で読みたい、ということでした。おそらく寿岳さんの本は学問的には殆ど「新しさ」はないのだとは思うのですが、それでも一世代前(二世代前?)の学者が書くようなふるめかしい文章で書かれた短いエッセイの数々はひどく心地よく、そしてこれは、頭をフル回転させてぐいぐいとのめり込むように読んで行く本ではなくて、頭の中に沢山の隙間を作って時々ぼんやりしながら読むような本で、それにはおそらく喫茶店が一番だろうと。

 ただ、最近は色々あってそういう時間がとれません。たしか長田弘さんの『風のある生活』という本の中にあった、一日に一回は喫茶店で本をゆっくり読むような時間があるべきだという意見は全くその通りだと思うのですが・・・・。それにしても何故喫茶店なのだろうかと考えてみると、おそらくそこが時間的にも空間的にも「切り離された」場所だからだろうと思います。自分に関わりのある全てのものから、さしあたり距離を取ることができる場所。そうすると頭の中にうまいこと隙間ができるのです。そういう場所って実はなかなか無い。マンガ喫茶もそれに近いですけど、最近はインターネットなんぞがありますので、どうしても外部の世界に「接続」してしまう(開かなければいいだけなんですが)。そうするとせっかくの隙間が本とは関係のない余計なもので埋まってしまうような気がするのです。

 後日、別の古本屋で今度はイタロ・カルヴィーノの『マルコ・ポーロの見えない都市』を購入しました。カルヴィーノは高校生のときに『木のぼり男爵』を読んで、何が面白いのかさっぱり判らずに、それ以来ご無沙汰になっていたのですが、『見えない都市』の最初の数頁を読んだだけでその面白さに愕然。そしてこれもまた、寿岳さんの本とは少し違う意味で、喫茶店で読むべき本だなあ、と思ったのでした。隙間が必要な本という意味では同じ。ただその隙間に入ってくるものの密度がすさまじい。寿岳さんの本は、文章の隙間に合わせるように自分の頭の隙間を作って、その隙間自体を楽しむような感じですが、カルヴィーノの場合は、十分な隙間を作っておかないと書いてあることが満足に自分の中に入ってこないという感じ。今度は高橋源一郎のとあるエッセイを思い出しました(書名は忘れました)。彼が作家デビュー前に肉体労働をしていた頃、時々仕事を休んで喫茶店に出かけてモーニングセットを食べながら吉田健一の本を読み、読んでいると余りに多くのことが頭の中に入ってくるので時々窓の外に目を向けてぼんやりしなくてはいけなかった・・・という。




追記:冒頭の写真は僕の家のすぐ近くにある、まさに読書にうってつけの喫茶店です。昔は週に2~3回は行ってたのになあ・・・。

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最終更新日  2008年02月07日 18時47分26秒 コメントを書く
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