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カテゴリ: Science
「サイエンス・アドベンチャー(上・下)」(カール・セーガン、新潮選書)を読む。

原題が BROCA'S BRAIN: Reflection on the Romance of Science という本書が日本語に訳されたのは1986年であるからだいぶ前の本である。原題の直訳では一般人には馴染みが薄いので、本書の内容に鑑みて表題のような邦題がつけられた旨が訳者あとがきに述べられている。原題のサブタイトルからもこの訳が適切なものであると言えよう。

だいぶ前の本であるので記述内容の一部に誤りと思われる箇所があるが、それでも時を経ても色あせない宇宙、生命、科学に対するセーガンのロマンを感じさせる著作である。

なお、私が誤りだと思った箇所は、下巻P.76で産業革命の初期に上昇した地球の気温がその後低下しており、その原因を化石燃料の大量使用に求めている点である。これは現在の常識からすれば誤りなのは明らかであろう。ただ、本書執筆当時はそのようなデータが得られており、それに対する科学的考察の結果が上記の通りになったということであろう。

さて、本書を含めてセーガンが多くの著作で訴えていることに、以下の3点が挙げられるだろう。

・科学教育の充実、一般の人に対する科学知識の啓蒙の必要性
・周辺科学、似非科学、宗教、哲学と科学(自然科学)の対峙
・簡易な避妊法の開発、普及

これらはセーガンの近著でも一貫して見られる論点である。特に3番目はセーガン独自でなかなか面白いと思う。それから2番目についても「衝突する宇宙」という似非科学本の内容を科学的に精査してかなり丁寧かつ定量的に反駁しているのも印象的だ(というか、そこまでしなくても十分ではと思ってしまうほどだ)。



○アインシュタインの長男は土木学界で名をなし、カリフォルニア大学の教授になった。

○火星の峡谷の命名に際しては、ヨーロッパ以外の地域の言語から「火星」を意味する言葉を見つけてきて命名するということが行われ、日本語の「KASEI」という峡谷もある。

○同じように、水星のクレーターには作曲家や詩人や作家の名前から命名することになり「ムラサキ(紫式部のこと)」というクレーターがある。

以下は特に印象に残った箇所の引用である。



科学技術は万能薬ではなく、一つの手段、道具なのだ。

科学者は、これまで新たな証拠や論証をつきつけられた時、自説の過ちを公然と認め、潔くこれを撤回してきた。政治家がこのように進んで率直に意見の訂正を行なった例はちょっと思い出せない。

地球のあらゆる生物の中で、蝿だけが地球外から来たとする説は、どう考えても何の役にもたたない蝿に腹をたてたマルティン・ルターの、生き物はすべて神によって造られたがこいつだけは悪魔によって造られたに違いないという意見を想い起こさせて面白い。


以下、誤植と思われる箇所である。
下巻P.113 人口衛星 → 人工衛星
下巻P.168 土星の一番外側の惑星フェーベ → 土星の一番外側の衛星フェーベ

あと気になったところと言えば、訳文の一文が長過ぎることがまま見受けられて読みにくい印象を与えるというところだろうか。元の英文が一文でも訳出する時に2文に分けてしまった方が読みやすいこともあると思うのだが。これは、訳者が文系畑の人だということも関係しているのかもしれない。





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Last updated  2011.08.17 09:43:11


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