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カテゴリ: Science
「E=mc2 世界一有名な方程式の『伝記』」(デイヴィッド・ボダニス、ハヤカワ文庫NF)を読む。

タイトル通りの1冊。アインシュタイン個人の伝記ではない。いきなり面白いエピソードから始まっている。それは、キャメロン・ディアスが、あるインタビューの最後に「E=mc2」が何を意味するかを知りたい、といったことである。

そんな話から始まって、まずはE=mc2のそれぞれの構成要素の歴史や意義について語られる。E(エネルギー)についての保存則、m(質量)についての保存則、c(光速)をどうやって測定するか、=(等号、エネルギーと質量は何故等価なのか)、指数の2(Eとmの換算係数は何故cの2乗なのか)、といった話である。

そこで、言われてみればそうだよなぁ、と思ったことについても記述がある。それは、光速が何故cという記号で表わされるのか、ということだ。その答えは、 「17世紀半ば、イタリアが科学の中心で、ラテン語が用いられていた時代に対する敬意の表れだろう。celeritasはラテン語で、「敏速」を意味する」 ということなのだそうだ。

本書は、E=mc2 に関わる多くの科学者の名前が登場する。少し挙げてみるだけでも、ニュートン、ガリレオ、ファラデー、ラヴォアジェ、カッシーニ、チコ・ブラーエ、マックスウェル、ポアンカレ(後のカオス理論の背後にある考え方を世界で最初にまとめあげた!)、マリー・キュリー、ラザフォード、ガイガー、フェルミ、パウリ、ハイゼンベルク、ボーア、オッペンハイマー、ジョン・フォン・ノイマン、フレッド・ホイル、ローレンス、チャンドラセカール…とそうそうたる名前が並ぶ。それに加えて、浅学な私の知らない多数の科学者(多くは優秀な女性と、彼女たちの成果を横取りした男性)の名前も登場し、科学者の研究面だけでなく、性格面など面白いエピソードが満載されている。

そして、この方程式を語る上で避けて通れないのが原爆である。第二次大戦中のドイツとアメリカの原発開発競争が、科学的な視点だけでなく歴史的な視点からも描かれているのが興味深い。

更に、日本への原爆の投下はしばしば正当化されるが、実はそうではない、という話も現れる。長くなるので引用はせずに要約すると、当時の日本は中国で孤立、アメリカの潜水艦による本国との連絡の遮断、北から不気味に歩み寄るソ連軍、そして既にアメリカの爆撃機によって約60の都市が焼き払われていたことから、原爆投下の必要はなかったのではないか、という話である。

もちろん、次には原発の話になる。本書の底本が書かれたのが2000年であるので、 チェルノブイリのような事故は、もはや起こらないといえる 企業の財務管理で「無限責任」ほど嫌われる言葉はないが、どの原子炉からも…使用済みの燃料が生じ、その処分には無限に近い責任をともなう。 ともある。この辺りは改めて私が云々する必要はなかろう。

また、原発以外で人間生活に関わる E=mc2 の活用例として、煙探知機、非常口の表示、PET(陽電子放射断層撮影法)やがんの放射線治療といった医療分野、放射性元素による年代測定(考古学)、GPS信号の補正などが紹介されている。

そして最後に、太陽などの恒星における元素の生成や、地球の形成過程における放射性元素の挙動の重要性など、天文学における E=mc2 の役割が述べられる。 そこにはアインシュタインの相対性理論に関する事柄も含まれる。

とまぁ、とにかく大変面白い1冊だった。それにしてもハヤカワの「数理を愉しむシリーズ」はどれも面白い本ばかりだ。

最後に、この本の本質とはちょっと逸れるかもしれないが、面白い一文をご紹介。
昔から政府というものは、間違った人選をするものと相場が決まっており…。
なるほど。


E=mc2 世界一有名な方程式の「伝記」/デイヴィッド・ボダニス





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Last updated  2012.04.22 10:51:32


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