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カテゴリ: Book Review
「捕手目線のリーダー論 ~六つの要~」(矢野燿大、講談社)を読む。


捕手目線のリーダー論 ~六つの要~/矢野燿大

私は基本的にこのような「リーダー論」的な本は読まないのだが、元阪神の矢野氏が書いた本ということで、珍しく読んでみた。読み始めた時は、「野球にはあてはまって面白いけど、実際の社会(企業)にはあてはまらないよな~」と思っていたのだが、徐々にそうでもないなと思えるようになってきて、最終的にはかなり面白く読めた。

いつもなら最後に行うダメ出しを先にすると、「です・ます」調と、「だ・である」調の文章が混在している、段落の区切りが不適切、などが見かけられた。しかし、著者はいわゆる「野球バカ」であり、プロの文筆家ではないので、その辺は容赦しよう。

内容は、矢野氏の選手時代の様々なエピソードから引き出される独自のリーダー論について語ったものである。タイトルに「六つの要」となるように、キーワードは「闘争心」「決断力」「責任感」「求心力」「反骨心」「奉仕力」である。以下で、気になったところを引用を交えて述べよう。エピソードとリーダー論がごっちゃになっている点はご容赦頂きたい。

P.25

…(中日の)山本(昌)さんでさえ、大ベテランといえる40代に入ってからも、絶対にシンカーの握りをほかの投手に見せなかったといいます。

これは技術者である私も納得。他人が持ってないモノを持っているということが、自分をユニークな存在にし、いわゆる「差別化」が図れるからである。

P.39

…努力で花開き、長年生き残っている選手たちを思い浮かべたときに、阪神の生え抜きの選手たちがなかなか浮かんでこないことを寂しく思う…

これは阪神ファンとして怖いところである。野手でいうと生え抜きレギュラーはショートの鳥谷だけ。最近漸く外野手として大和、柴田、俊介が出てきてはいるが、レギュラーとは程遠い。特に、近々外国人と金本が抜けた後どうするのだろう、と思ってしまう。

P.57

特にチームスポーツの場合、「心・技・体」の中で一番大事なものは私は心だと思っています。順番で行くと「心・体・技」となり、心は体と同じくらい重要。この2つが揃ってこそ、次の段階である「技」のことを考えることができる。


心:精神的安定性、精神を病まないこと
体:身体的安定性、身体を壊さないこと
があってはじめて
技:専門知識・技術
が成り立つ、という意味。

P.62

なかでも面白いと思ったのが、2年目の中谷正大です。身体が大きいし、球を遠くに飛ばせるスイングをしている。捕手からの転向を模索中なので外野守備はまだ不慣れですが、肩の強さは魅力です。将来は中軸を担うところまで、大きく育つ可能性を感じました。

大物の生え抜きが育つのは阪神にとって大事なことなので嬉しい。しかし、捕手から外野手への転向が早過ぎる気がする。ただでさえ、現在城島・藤井というレギュラークラスの捕手2人を欠いているのだから、こういうときにその穴を埋める形で育ってほしい。捕手から外野手への例は、浅井・狩野と既に十分いるので、これ以上有望な捕手を減らして欲しくない。(最悪、今季のどこかで浅井・狩野のスクランブルキャッチャーがあり得るかも知れないので。)

P.70

…いくつもの情報に基づき、根拠を持って考えた結論なら、間違っていたときもきちんと後で検証して次の対戦に生かすことができる。

これはどんな仕事でも大事。改めて言うほどのことではないかもしれないが、矢野氏はこれがなかなかできない人が多いのだと本書のあちこちで指摘している。

P.85

(2008年北京五輪準決勝で岩瀬と組んだことについて)即席のバッテリーだからなおさら、お互いに迷いがあるときは、それを消すために意志の疎通を図るべきでした。

これまたその通り。当たり前だが疎かになりがちなこと。



P.93

…ダルビッシュ投手も、各打席の初球の被打率は4割を超えているとのこと。いくらダルビッシュ投手といえども、初球に甘い球を狙われたときは、並みの投手にすら劣る被打率になっているのです。

これは捕手目線でないと判りにくい、矢野氏の秀逸な指摘。ダルビッシュにそんな攻略法があったとは…でもまぁ、初球から振るのは難しくて、そのことも矢野氏は指摘している。

P.96

(今でもそうだが)巨人がFA補強を繰り返して、いろいろな球団の4番を打ってきた選手ばかりをスタメンに並べていた時期がありましたね。…「塁に出したら面倒くさいな」と思わせる選手が、ほとんどいませんでした。あの手のチームに、対戦していて「いやらしさ」や「やりづらさ」は感じないのです。

やーい、巨人のバカ。こんなところでも言われてるじゃん!

P.108

(2003年の日本シリーズ第5戦の先発ピッチャーについての星野監督の発言について)「お前らがこれまでやってきて、ここまで来られたんだ。今、一番優勝したいのもお前らだ。それなら、お前らが納得いくように進めばええやないか」



P.117

(北京五輪について)…チームの勝利のためには、球拾いだろうがプルペンキャッチャーだろうが、どんなことでもやる。その覚悟で、外野手用のグラブも改めてメーカーに頼んで作ってもらい…。

外野用グラブについては知らなかった。でも正直、あのときの矢野の仕事は間違いなくブルペンキャッチャーだったと思う。だからP.85のようなことは起きてはいけなかったと思う。

P.125

捕手は常にマイナスな事態を想定して、そうならないように動くくらいでちょうどいい。

これもビジネスシーンに通用すると思う。まぁ私が改めていうほどのことではないが。

P.157

厳しさの裏にある温かさや気遣い、人間的な魅力……。それを感じたときに、人は「この人についていこう」と思うのです。

これは非常によく判るのだが、私のまわりには残念ながら、仕事はできても「人間的な魅力」のある人がいないのが悩みのタネなのだ。誰かどうにかしてくれ。

P.164

相手と信頼関係を築くためには、どんなときも相手の話を聞くこと。そして、自分の意見を言うときは頭ごなしではなく、しかしはっきりと伝えること。口にすると簡単に思えるかもしれませんが、徹底するのは意外と難しいと思うのです。

その通りだと思う。特に本書で矢野氏は、「あたりまえのことをあたりまえにやるのは意外と難しい」ということを通奏低音的に述べている。これはビジネスシーンでもスポーツでも、その他のあらゆることにも当てはまると思う。

P.175

本物の「反骨心」は、なにも若い選手だけの特権ではありません。たとえベテランになろうとも、逆境に置かれたときこそ、顔を出してくるのです。

ビジネスシーンで上司に対してならともかく、お客さんに対して反骨精神ってのは…。まぁ反骨したいイヤな客はホントに多いんだけど。

P.203

正攻法も奇襲になりうる。

実はこの後にいろいろな例が書かれているのだがちょっと省略させて頂く。野球の戦略としては大変面白いが、ビジネスではどうかな、と思うので。

P.210

裏方さんは選手とは違う立場ではありますが、当然、チームの一員として対等に接するべきです。それが裏方さんのモチベーションアップ、ひいてはレベルアップにも繋がり、目に見えない力として、強いチーム作りに貢献していくのです。

私も仕事で、年上の派遣さんをアゴで使うことがよくある。もちろんそういうときはいつも心苦しい。上記はそれに対する教訓として肝に銘じておきたい。

最後に…この手の本を読んだのは初めてなのだが、著者に馴染みがあったせいもあって楽しく読めたし、今後の仕事にも役に立ちそうだと思った。今後もたまにはこういう本を読んでみようかな、という気になった。





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Last updated  2012.04.29 09:20:08
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