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カテゴリ: Science
「科学の価値」(ポアンカレ、岩波文庫)を読む。

「科学と仮説」、「科学の価値」、「科学と方法」、「晩年の思想」からなる、ポアンカレの「四部作」の第二集。「科学と仮説」で述べられていることの引用もあるが、より平易な言葉で説明されているので、「科学と仮説」より読みやすい。

タイトルだけ見ると、科学の社会における価値について書かれた本のようにみえるが、そうではなくて、いわば「科学のための科学」について書かれた本である。ちなみに底本は1905年刊。

「科学の客観的価値」についてホントに述べられているのは最後の部である第三部。第一部と第二部は、「数理的科学」と「物理的科学」と題して、数学、幾何学、物理、天文、化学などの歴史、当時の状況、そして未来予想が述べられている。底本が前世紀初頭のものなので、相変わらずエーテル仮説などが幅を利かせていたりするが、そういう点を差し引けば古びた本という印象はない。

ポアンカレのいう科学の価値とは、科学によって日常生活が便利になり、人間が科学をする時間が多くなることによって、より多くの真理を明らかにできる、という意味である。

以下、面白かったところを引用しつつ紹介。

絶対時間が定義できないことについて:
「二つの事件が同時であるとか、前後しているとか、二つの経過時間が等しいとかは、自然法則ができ得るかぎり簡単であるように定義しなければならない。他の言葉でいうと、これらの規則すべては、また、これらの定義すべては、無意識な便宜主義の産物にすぎないのである。」
絶対時間の定義不可能性は相対性理論の基礎なのだが、底本が出た時期がちょうど相対性理論が出始めた時期であるので、これは先見の明といって差し支えないだろう。

一見科学として以外に役に立たなさそうな天文学について:
天文学はわれわれをして自分を超えて向上せしめるから役にたつのである。また、天文学は偉大であるから役にたつのである。また、美しいから役にたつのである。これこそぜひ言っておくべきことにほかならない。


天文学や生物学の将来について:
星でさえも、おそらく、生命について、いつかは、われわれに何か教えてくれる日が来ることであろう。これは馬鹿げた夢のように見えるし、どうしたらその夢が実現するかはわたしにもまったく見当がつかない。しかし、百年前には、星の化学はやはり馬鹿げた夢のように見えたのではなかったろうか。
これは見事に予言的中である。今の天文学や生物学の成果はここで私が云々しなくても明らかであろう。

法則から原理が導かれることについて:
原理は真でもなければ偽でもない。便利なのである。
法則から帰納して原理を導けば、使いやすくなる、ということ。ポアンカレは一貫して原理主義でも絶対主義でもないことの一端が垣間見える。

科学としての科学の価値について:
…文明の目的は酒を飲むことの好きな連中にアルコールを提供することにある、ということを承認しようとしないかぎり、「幸福のための幸福」という標語も、これまた、「科学のための科学」というのと同じである。
はっは~なるほどね(笑)

ちなみに本書では、 これならまったく申し分ない、とはいい得ない とはしながらも、長岡による原子の土星モデルについても紹介されている。日本人として少し嬉しくなる。

それにしてもポアンカレ、さすがに「最後の万能学者」と称されただけのことはあるな、と思わせる1冊である。


科学の価値/アンリ・ポアンカレ





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Last updated  2012.05.17 10:06:11


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