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カテゴリ: Book Review
「オブ・ザ・ベースボール」(円城塔、文春文庫)を読む。

表題作「オブ・ザ・ベースボール」と、「つぎの著者につづく」の2篇の中篇からなる1冊。

「オブ・ザ・ベースボール」は、田舎町ファウルズを舞台とした作品。この町には約1年に一度、空から人が降ってくる。一見ランダムに降ってくるような人は、何となく統計的な法則にしたがっているようないないような感じで、大数の法則・中心極限定理・大偏差定理といった言葉も登場する。

そして、降ってくる人を助けるためにレスキュー・チームが組織されている。人数は9人。支給されているのはバットとユニフォーム。でも野球チームではない。実際に人が降ってくる場面に初めて遭遇した主人公がとった行動とは…という話。

「つぎの著者につづく」は、原初の言葉とは何かという問いに発する。しかし、主人公の著作がRという人物のそれにそっくりであると評されるという展開に。主人公はRの著作をひとつも読んだことがないにも関わらず。おまけに調べてみると、Rという人物は全く素性が判らないとくる。

そんな話を、古今東西の文学・哲学の直接・間接の引用やら、物理・数学の概念やらを大量に織り交ぜて展開した話。物理・数学については、鞍点・焼き鈍し法・カオスの縁など私にもお馴染みのモノが登場。

読みやすさという点では「オブ・ザ・ベースボール」に軍配が上がるが、私が気に入ったのは「つぎの著者につづく」の方。正直、何だかワケ判らんなぁという気がしなくはないが、判らないものというのは面白いモノである。例えばエヴァンゲリオンとか。

ちなみに、「オブ・ザ・ベースボール」は文學界新人賞を取ったそうであるが、これは正直、文学とはいい難いし、私見としては対抗馬がいなかったからじゃないかと邪推してしまう。

私にとって文學界新人賞のイメージは、鷺沢萠の「川べりの道」(文春文庫「帰れぬ人びと」所収)みたいな、ホントに純文学的な作品なので、この点は仕方ないと思って頂きたい。




オブ・ザ・ベースボール/円城塔





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Last updated  2012.05.18 19:26:53
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