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カテゴリ: Science
「川と国土の危機-水害と社会-」(高橋裕、岩波新書)を読む。

河川を題材に、災害の様相・歴史や社会的意義などを広範に解説している。話は河川に止まらず、近年の異常気象・火山噴火や地震など、様々な原因で水害が発生すること、その様態は多様化し、被害は拡大していることなどが述べられている。また、一般の人が災害についていかに無関心であるか、それがいかに危険なことであるかということに警鐘を鳴らしている。

例えば、「空白の天気図」(柳田邦男、文春文庫)のテーマである、戦後すぐやってきた枕崎台風による被害についても述べられているし、貞観津波(869年、東日本大震災と同程度かやや小さい規模とされる)についても述べられている。特に後者については、

東京電力の担当者は、岡村の警告を無視

と手厳しい(この点について私は著者に大いに賛同)。

本書全体にわたって「川は本来氾濫したいものであり、その自由を奪いすぎている」という点と「河川に携わる者(河川工学者、官僚、流域住民など)は、川をもっと『読む』べきである」という点が強調されていて興味深い。

司馬遼太郎は1976年に 「私を絶望的にさせたのは、国民総不動産屋の代表のような人物が首相になり、列島改造論という、山林地主と土地投機業者だけをよろこばせるような政策ともいいえぬ政策をかかげ、右の傾向を極度に過熱化したことである。」 と述べているそうだ。また、寺田寅彦の「津波と人間」についても記述がある。

自然災害について難しいところとして、「確率」として評価しなければならないことが挙げられている。これはなかなか一般の人には理解しがたいところであるが、専門家が積極的に啓蒙すべきである、というのが著者の主張であろう。

私は地震の専門家として、地震による堤防の破堤に起因する洪水が発生すれば複合災害となることと、河川の専門家が「川を読む」ように、地震の専門家も「地質を読む」ことをしなければならないことを痛感した。特に私はフィールド(現場)がないIT業界にいるので、余計耳に痛い。



これで今年83冊目読了。


川と国土の危機/高橋裕


空白の天気図/柳田邦男


地震雑感・津波と人間/寺田寅彦





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Last updated  2012.12.26 20:04:32


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