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カテゴリ: Book Review
「熱砂」(高嶋哲夫、文春文庫)を読む。

かつて報道を専門としていたが今はファッション専門のカメラマンが主人公。ある日、学生時代の恋人を乗せた飛行機がアフガンに不時着、ゲリラに拘束された。かつてそのゲリラを取材したことのある主人公はアフガンへと向かう。

フィクションではあるが、9.11テロ以降のアラブ世界を取り巻く状況を酷明に描いている。いわゆる「大国」が石油利権をめぐって覇権を争い、対立する部族間に武器を供給。ソ連は撤退しているが、ソ連が残した武器もゲリラの手に渡り、長期にわたる内戦。和平は首都カブールに限られた話。そしてそんなニュースは日本ではニュースにすらならない。このあたりを読むと、今毎日目にするシリア内戦などアラブ世界で起きている問題の、報道されない裏の姿が判る気がする。その点で本書は、そんじょそこらのアラブ解説本を凌駕している。

しかし、読み始めた時は正直ちょっと失敗したかなと思った。テーマがテーマだけに、舞台が舞台だけに、なかなか頭に入ってこない難しさがある。しかしある程度読み進めると、だんだん話の先が気になりはじめ、こうなるとあとは一息で読んでしまうしかない。

ただ、「アフガン世界」と「そこに関わる主人公たち」の両方を描かざるを得ないので、若干物足りない気もする。特に後者の「人間ドラマ」の部分に関しては、だいぶ予定調和すぎというか、あまりにも上手く話が進み過ぎな感は否めない。

本書は「アフガンの風」として単行本、一次文庫が「流砂」、そして本作「熱砂」とタイトルを変えている。優劣つけ難いが『風』というキーワードはいいかも知れないと思う。

さて、最後にいつものように印象に残った箇所を引用させてもらおう。



「相変わらず小国は大国の取引の道具にすぎない。ロシアはアメリカのアフガン空爆を支持することで、チェチェン侵略の切符を手にした。アメリカは今後、ロシアがチェチェンにどのような攻撃を加えても黙認するだろう。チェチェンの同胞が数知れず犠牲になることを認めたのだ。ドイツや 日本も、これからは半ば公然と海外に軍隊を送ることが出来る 。いずれにしても、この戦争で世界はひとつの節目を迎えた」

「その武器を作り、この国に持ち込んだのは文明国と称する奴らだ。勝手に殺し合いをしろと―」


「あなた、子供はほしい?」
「想像できない。いや、自分の分身なんてことを思うとぞっとする。」
 何気なく出た言葉だった。自分の子供―考えたこともなかった。
「私も考えられない」


最後の一節は私が個人的に共鳴したので書いただけだが。

今年27冊目をクリア。



熱砂/高嶋哲夫





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Last updated  2013.05.29 19:56:08
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