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カテゴリ: Science
「世界に嗤われる日本の原発戦略」(高嶋哲夫、PHP新書)を読む。

小説家としての高嶋氏は好きだし、これまで書かれたノンフィクションも好きなのだが、こと本書に関してはキライと言わざるを得ない。福島であれだけの原発事故が起きていながら、そして脱原発モノの小説を書いていながら、原発推進のノンフィクションを書くとは、ちょっとありえないというのが第一の正直な感想。まぁ結局高嶋氏も元原子力の研究者だし、仕方ないのかもとは思うが…。福島の事故を受けて国民に「感情的」にならず「科学的」であれ、というのは無理なんじゃないかと思うし、もしそれが出来ないのなら全て専門家に任せなさいというのも、発言が二転三転する専門家たちを見てると無理って気がする。

私は小説・ノンフィクションのいずれも、気に入ったところや気になったところのページの隅を折りながら読んで、あとでここで引用させてもらったりするのだが、本書は折った箇所が多過ぎるので、全てにいちいちコメントしないが、特に気になったところを以下に挙げよう(t-crossが原発に関してはかなり感情的になっていることがおわかり頂けると思う)。

P.27。浜岡原発の停止を「愚かな行為」と言っているが、私は英断だと思う。

P.31。加速度単位の「ガル」の説明が間違えている。

P.40。一般の人に原子力や放射能の判断を求めるのは「酷」だとしているが、これは全く逆で、一般人の市井の感覚がなければ、これから原子力なんてやっていけない。

P.42。 「どうせ、原子力ムラの人が言うことだから」「でも福島では実際に事故が起きたでしょ」と返されると反論できません。  って、当たり前じゃん。

P.48。第1章の終わりまで書いておいて、 ここまで書いてきて、僕の結論は「やはりよく分からない」です。

P.98。 あとは未来の人が未来の科学技術を駆使して解決していけばいいのです。  って、無責任すぎ。例えばフロンによるオゾン層破壊の問題についても、科学者はそんな態度ではなかったのでは? 
原子力については、将来世代に負の遺産を積極的に残しても構わないという姿勢は許されるのだろうか?

P.109。ガラス「固化体」をガラス「固体化」と書いている箇所が1箇所。タイプミスとしても、これは校正担当者が直さないとダメ。

P.180。原発稼働中の40年間に大地震が起きなければいいので、「耐震設計審査指針」で活断層の定義が「13~12万年前までの活動しており、将来も活動する可能性のある断層」となっているのは厳しいとしているが、これは地震学を学んだものとしておかしいと思う。そもそも活断層の定義は13~12万年前ではなくて200万年前程度とするのが地震学の常識だし、 地質学者と地震学者に40年以内に動く可能性があるうかどうか議論してもらう  なんてことは出来ない。活断層は今日この瞬間に動くかもしれないし、200万年経っても動かないかもしれない。それを見極めることは残念ながら今の地震学では不可能。ましてやそれを原発という実応用に適用するなんてとんでもない。

あとは「です・ます」調と「だ・である」調の混在も気になったし、この手の科学ノンフィクションで一人称が「僕」なのも私はキライである。

なんか正直「高嶋観」が変わってしまった1冊。まぁ彼も元は原子力の研究者だから原子力に毒されているのは仕方ないのかなと思うが。

まぁそんなこんなで、今年41冊目読了。


世界に嗤われる日本の原発戦略/高嶋哲夫





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Last updated  2015.05.26 10:28:41


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