t-cross Private Research Institute (tPRI)

t-cross Private Research Institute (tPRI)

PR

×

Calendar

Profile

t-cross

t-cross

Archives

2026.10
2026.09
2026.08
2026.07
2026.06
2015.08.23
XML
カテゴリ: Science
「偶然の科学」(ダンカン・ワッツ、ハヤカワ文庫NF)を読む

原題は「Everything Is Obvious Once You Know the Answer」で、こっちの名前の方が体を表しているかもしれない。

「常識」が未来を予測する上でいかにバイアスであり、その結果として未来に関する予測が往々にして当たらないことから説き起こされる。更に、歴史から学ぶことの本質的な難しさや、「成功」を個人や作品の特質から測ることの困難さが示される。われわれに出来ることは、ある特定の未来のシナリオを決定することではなく、せいぜい事象の発生する確率を知ることにとどまる。この指摘は何というかいかにも量子力学的な感じがするというのは私個人の感想だが、社会学やその応用においては非常に重要だが見落とされがちなことであるというのが筆者の主張である。

ならば実際にできることは何なのか? それは未来の予測ではなく現実の測定とそれに対する対応である。社会学における現実の測定(実験と言ってもいい)は従来困難であったが、最近のテクノロジーの革新によって、メールやSNSを利用することができるようになってきており、状況は変わってきている(ただし、それにも限界があることを忘れてはいけない)。

本書では上記のようなことに関する豊富な具体例も紹介されている。それは最新の科学研究・ビジネスから世界史的事件にまで及んでいて、社会学(特に最先端の)に馴染みのない読者にもけっこう判りやすい(とはいえ私も全て理解できたとは言わないが…)。具体例の中には、VHS対ベータの戦いの原因分析やiPodの成功理由の分析といった身近な例もあり、それも本書の主張の理解の一助になっているのではないかと思う。

以下、面白かったところの引用。




言い換えれば、われわれは結果の原因をひとりの特別な人間に求める誘惑に駆られるが、この誘惑はわれわれがそのような世界の仕組みを好むからであって、実際にそのような仕組みになっているわけではないことに留意しなければならない。

事実、予測の奇妙な点のひとつは、われわれは未来についての見解を熱心に発表したがるが、それに負けず劣らず、立てた予測に説明責任を持ちたがらないことである。

ZARA(スペインの衣料品小売業者)は客がつぎのシーズンに買うものを予測しようとはせず、むしろそんなものは見当もつかないと認めているに近い。そのかわり、いわば「測定―対応」戦略を用いている。

測定―対応戦略を容易にするウェブの力は、企業にとっても科学者にとっても政府にとっても心躍る情報だと言っていい。しかし、ほかならぬ非ウェブ企業のZARAが体現するとおり、測定と対応の原則がウェブに基づくテクノロジーに限定されないことには留意する必要がある。

しかし、だれかの能力を、その人が何ができるかからではなく社会的な成功基準、つまり賞や富、華々しい肩書きから述べるときは、それがまやかしである可能性をつねに疑ったほうがいい。別の表現をすれば、そんなに頭がいいのならなぜ金持ちになっていないのかという皮肉屋の問いは的をはずしている。物質的な富以外の報酬を気にかける賢明な人もいるという明白な理由からだけではなく、才能は才能であり成功は成功であって、後者は必ずしも前者を反映しないからである。


今年49冊目読了。


偶然の科学/ダンカン・ワッツ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2015.08.23 08:00:28


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: